下垂体腫瘍の症状とは?どんな変化が出たときに病院へ行くべき?

2017/10/2 記事改定日: 2019/3/7
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

腫瘍は人体のさまざまなところにできます。頭の中にある、ホルモンをつかさどる下垂体というところに腫瘍ができると、良性の腫瘍でも、体に悪い影響が出ることもあります。この記事では、下垂体腫瘍についてまとめました。

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下垂体腫瘍ってどんな病気?

下垂体は脳のほぼ中央にある1cmくらいの小さな器官です。
鼻のつけねの奥にあるトルコ鞍(頭蓋骨のポケット状のもの)に入っていて、頭蓋骨の中の最も深いところにあります。下垂体は全身のホルモンのコントロールを行うために、身体中の様々な機能の調節に関係するホルモンを分泌しています。

下垂体腫瘍は下垂体の中で、異常な細胞が成長し、増殖するもので、下垂体腫瘍は3種類に分類されます。

良性下垂体腺腫
増殖のスピードが緩やかであり、下垂体から他の部位へ広がることはありません。
浸潤性下垂体腺腫
良性腫瘍ですが、頭蓋骨や下垂体より下にある洞まで拡がることがあります。
下垂体がん
とても稀ですが、下垂体がんという悪性腫瘍である場合があります。中枢神経系(脳と脊髄)のほかの部分や中枢神経系の外側まで広がっていくこともあります。

また、下垂体腫瘍はホルモン量の変化により非機能性腫瘍と機能性腫瘍に分類されます。

非機能性下垂体腫瘍
この腫瘍ではホルモンがつくられることはありません。
機能性下垂体腫瘍
この腫瘍では1種類以上のホルモンが正常の分量以上にたくさんつくられます。下垂体腫瘍のほとんどは機能性腫瘍であり、ホルモンが過剰に分泌されることでさまざまな症状があらわれる場合があります。

下垂体腫瘍になると、どんな症状がみられる?

下垂体腫瘍の他の一般的な症状・徴候には下記のようなものがあります。

  • 悪心
  • 嘔吐
  • 錯乱
  • めまい
  • てんかん発作
  • 鼻水や鼻漏(脳や脊髄周囲にある脳脊髄液が鼻腔へ漏れる)

ホルモンの分泌量が不足したときの症状

下垂体腫瘍ができると、下垂体が圧迫されたりこわれたりします。そうすると下垂体が本来分泌しているホルモンの分泌が抑制されてしまいます。
ホルモンが極度に足りなくなると、ホルモンを制御する腺や器官がうまく働かないことがあります。
そうすると、以下のような症状がみられます。

  • 頭痛
  • 多少の視力低下
  • 体毛の減少
  • 女性では、月経頻度が少なくなるか無月経となり、乳汁分泌がなくなる
  • 男性では、顔ひげがなくなり、乳房組織が成長し、インポテンツとなる
  • 女性、男性とも性欲が低下する
  • 小児では、成長や性的発達が遅延する

ホルモンの分泌量が過剰なときの症状

分泌されるホルモンの増加により、いろいろな症状が現れますが、症状があらわれないこともあります。機能性下垂体腫瘍が過剰なホルモンをつくる場合、症状は増加したホルモンの種類によって異なります。

プロラクチンが過剰になったときに現れる症状

  • 頭痛
  • 多少の視力低下
  • 月経頻度の減少、無月経または非常に出血量の少ない月経
  • 妊娠困難、不妊
  • 男性ではED
  • 性欲低下
  • 妊娠していない女性や授乳中の女性における乳汁漏出。

副腎皮質刺激ホルモンが過剰になったときに現れる症状

  • 頭痛
  • 多少の視力低下
  • 身体の顔面、頸部、体躯の重量が増加し、腕や脚が細くなる
  • 首の後ろに脂肪の塊ができる
  • 胸や腹部上の皮膚が薄くなり、紫色またはピンク色の皮膚線条がみられる
  • あざができやすい
  • 妊顔面や上背、腕のうぶ毛が伸びる
  • 骨折しやすい
  • 不安、短気、憂うつとなる

成長ホルモンが過剰になったときに現れる症状

  • 頭痛
  • 多少の視力低下
  • 成人では、末端肥大症(顔、手足の成長)、小児では、標準よりも身長が高く、体格が大きくなる
  • 手や指のしびれとうずくような痛み
  • 睡眠中のいびきや無呼吸
  • 関節痛
  • 通常よりも多い発汗

甲状腺刺激ホルモンが過剰になったときに現れる症状

  • 不整脈
  • 戦慄
  • 体重減少
  • 睡眠障害
  • 頻繁な排便
  • 発汗

どんなときに、どんな病院を受診すればいい?

下垂体腫瘍を発症すると、以下のような症状や身体の変化が見られるようになります。

  • 視力が低下した
  • 視野が狭くなった
  • 目の奥に痛みが生じる
  • 授乳期でないのに乳汁が分泌される
  • 生理不順や不妊に悩んでいる
  • 原因がないのに体がだるく、疲れやすい
  • 長く使用している靴や指輪が入らなくなった
  • 腹部を中心に急激に太った

当てはまる項目が多い人は、看過せずに早めに脳神経外科や神経内科、内分泌内科などの専門医療機関に相談して、検査を受けるようにしましょう。

おわりに:目の奥の痛みや月経異常などがみられたら、念のため病院で検査を

下垂体腫瘍はホルモン分泌に大きく関わっているためさまざまな症状が現れます。視力の低下や目の奥の痛み、生理(月経)の異常などが長く続く場合は、念のため病院を受診しましょう。

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