若年性認知症の症状の特徴とは?どうすれば早く発見できる?

2017/10/3 記事改定日: 2019/2/6
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

認知症は高齢者だけがなるものだと思っていませんか?実は、 若い世代でも発症する認知症もあるのです。
この記事では、若い世代がなる若年性認知症についてまとめました。

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若年性認知症とは

若年性認知症とは、40歳から64歳に発症した初老期認知症と、18歳から39歳までに発症した若年期認知症とを合併した若い世代の認知症の総称です。

認知症を発症年齢で分けたものなので、原因も疾患もいろいろなものを含んでいます。高齢者の認知症とは、違った問題もあらわれます。

症状は、高齢者のものと変わりません。
物忘れがひどく、仕事や生活が難しい状態でも、高齢でないことから認知症とは思われず、医師に、うつ病や更年期障害などと誤診されることもあります。
その結果、診断までに時間がかかり、認知症が進行してしまう人もいます。

若年性認知症の原因となる病気

若年性認知症には、脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症が圧倒的に多く、2つの疾患で全体のおよそ6割といわれています。
高齢者に比べ、脳血管性認知症が多いことが特徴です。ほかにも、アルコール性認知症の比率が高いことも挙げられます。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、進行性のもので、今の段階では、治癒が難しい病気です。ほとんどの人が、亡くなるまで症状が続きます。

記憶力と、考えて決定する能力が徐々におかされ、最後には単純作業もできなくなります。
アルツハイマー型認知症の症状は、脳の障害によりあらわれる中核症状と、中核症状からくる二次的な行動・精神症状である周辺症状の2つがあり、本人は自分が認知症であるという認識はありません。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳の血管の障害により、脳梗塞や脳出血が発症し、認知症になったものです。認知症全体の約20%を占め、男性に多くみられます。

脳血管性認知症の主な症状は、日常生活がうまくいかなくなるほどの記憶障害と認知機能障害(言語、動作、計画立てて物事を行う能力などの障害)で、ほかの認知症とほぼかわりません。
症状の出方が特徴的で、突然症状があらわれたり、落ち着いていると思うと急に悪化したり、予測がつきません。また、ある分野のことはできても、他のことは何もできないので、「まだら認知」と呼ばれています。

ほかの症状として、歩行障害、手足の麻痺、呂律が回らない、転びやすい、排尿障害(頻尿、尿失禁など)、抑うつ、感情コントロールが難しいなどが、早くからあらわれます。

アルコール性認知症

アルコール性認知症は、アルコールの多飲によって脳血管性認知症の原因である脳卒中を発症したり、ビタミンなどの栄養素が不足することによって引き起こされる認知症です。
認知症は高齢者の病気と考えられがちですが、アルコール性認知症は、アルコール摂取量が多い人であれば若年者でも発症する可能性があります。

アルコール性認知症では、物忘れや見当識障害の他に、忘れてしまったエピソードの辻褄を合わせるために「作話」を生じるのが特徴で、手の震えや歩行困難、易怒性などの性格変化などアルコール依存症に類似した症状も同時に引き起こされます。

前頭側頭型認知症

前頭側頭葉型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉の萎縮が特に強まって発症する認知症です。
物事の理性的な思考や判断を司る前頭葉、言語の理解や聴覚を司る側頭葉の機能が低下することで、常識を逸脱した行動を繰り返す、怒りっぽく攻撃的になるなど人格の変化や言語障害が目立つようになります。

一方で、認知症の代表的な症状である「物忘れ」は起こりにくいとされており、認知症と気づかれないまま、家族や周囲の人が患者の非常識な言動に振り回されるケースも少なくありません。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、脳内にレビー小体と呼ばれる物質が沈着することによって生じる認知症です。レビー小体が沈着する部位によって症状が異なり、大脳の広く沈着する場合は、物忘れが強くなり、脳幹部や延髄などに沈着する場合は、震えや歩行困難、めまいなどの症状が目立つようになります。また、幻視や睡眠障害などが現れるのも特徴です。

早く気づくには、どんな症状、サインに注意すればいいの?

若年性認知症では、現役の人が多く、認知がうまくいかないことで、仕事で大きな失敗をして、気づかれることもあります。

しかし、本人も周囲もその理由が認知症とは思いもしません。疲れや、更年期障害、うつ病など、他の病気を疑って医療機関を受診し、誤った診断を受けて時間が過ぎてしまいます。認知症の症状が目立つようになり、やっと診断される例も少なくありません。若い人にも認知症があることを知っておきましょう。

注意すべきサイン

若年性認知症を発見するには、日常生活で、行動や話すことがいつもと違っていることに気づくことが必要です。

具体的には、下記に挙げたポイントに注意しましょう。

  • 同じことを何度も聞き返してくる
  • 伝言を頼んでも、うまく伝えてもらえない
  • 電車やバスなどの公共機関で乗る駅や降りる駅がわからなくなる
  • 帰り道などのよく知っている道でも迷ってしまう
  • 通帳、印鑑、財布などをよく失す。家族が盗んだと疑う
  • いつも同じ服を着て、着替えたがらない
  • 簡単な家電製品の使い方がわからなくなる
  • テレビや新聞を見なくなる、関心がなくなる
  • 風呂に入りたがらない
  • 好きだった趣昧の活動をしなくなる
  • 鍋を焦がしたり、ガスの火を消し忘れることが増える。水道の水を出しっぱなしにすることも多い
  • 外出したがらない

若年性認知症は、治療はできる?

診断が遅れてしまわないように、早くに気づくことが大切です。
早期の治療は、その後の介護負担を減らすことになります。
早いうちであれば、理解力や判断力が残っているので、本人と一緒に今後の人生を考えられます。認知症が予防できれば、医療費や介護費を減らすことにもなります。

認知症かもしれないと思ったら、「神経内科」「精神科(心療内科、神経科など)」を受診しましょう。最近では「もの忘れ外来」という名前のところもあります。

治療薬

アルツハイマー型認知症には、病気の進行を緩やかにする薬があります。根本的な治療ではありませんが、症状があまり出ないうちに治療をすることで、少しでも進行を遅らせることができます。

予防はできる?

残念ながら確実な予防方法はありません。しかし、最近になって、認知症になりにくくなる方法がわかってきました。

認知症予防対策は、大きく分けて2種類あります。
認知症になりにくい生活習慣を行う方法と、認知症になると弱くなる能力を鍛える方法です。この2つの方法で、認知症の発症時期を遅らせることができるといわれています。

おわりに:若い人でも認知症になる可能性がある。少しでもおかしいと思ったら検査しよう

今までみてきたように、認知症は高齢者だけのものではありません。若くても発症する可能性はたくさんあります。少しでもおかしいと気づいたら、すぐに病院に行きましょう。

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