胃潰瘍の原因は食生活とピロリ菌?予防のためにも知っておこう!

2017/10/4 記事改定日: 2018/9/20
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

胃潰瘍は、胃から分泌される胃酸と、胃酸から胃壁を守る粘液の分泌のバランスが崩れ、胃酸によって胃壁が傷つき、痛みを感じたり出血を起こす病気のことです。
今回は、胃潰瘍の原因と治療法について解説します。根本治癒のために役立ててください。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

胃潰瘍の原因とは

胃潰瘍は、胃酸と粘液の分泌のバランスが崩れることが原因とされています。このバランスが崩れる原因として、以下のことが考えられます。

  • ヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori: ピロリ菌)
  • 喫煙
  • 飲酒
  • ストレス
  • 食生活の乱れ
  • 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)

喫煙は、胃酸の分泌を多くするため粘膜に対する攻撃因子となり、同時にニコチンが粘膜の血流を妨げるため防御因子を低下させるという二重に悪影響を与えるとされています。
また、胃潰瘍の発症原因として、ヘリコバクター・ピロリの感染が大きく関わっているとされており、喫煙により、ピロリ菌の感染率が高くなるため、禁煙することが推奨されています。

食生活の乱れで胃潰瘍になるのは何故?

食生活の乱れや不規則な食事のとり方は胃潰瘍の原因となることがあります。
胃潰瘍は、胃酸が過度に分泌されることが主な原因です。脂肪分が多い食事や食べすぎなどは消化に時間がかかるため、胃の内容物の消化を促そうとより多くの胃酸が分泌されるようになります。その結果、過剰に分泌された胃酸が胃の粘膜を傷つけて胃潰瘍の原因となるのです。

また、食事の回数を極端に減らしたり、多くしたりすると、胃酸の分泌量が増えたり、内容物がない胃の中で胃酸が直接粘膜に触れる機会が多くなることで胃潰瘍を発症しやすくなります。
さらに、塩分や香辛料の多い食事、アルコールの多飲も胃の粘膜にダメージを与えることがあるので注意しましょう。
胃潰瘍を予防するには野菜や和食を中心とした規則正しい食生活を心がけることが大切です。

ピロリ菌が胃潰瘍を引き起こすメカニズムとは!?

ピロリ菌は胃内に感染すると、体内の尿素と反応して、アンモニアを発生させます。アンモニアは胃の粘膜に直接ダメージを与える作用があります。

また、ピロリ菌は毒性のあるたんぱく質の産生も行い、ピロリ菌を攻撃するために免疫細胞の一種である白血球が多量に集まることで胃の粘膜に炎症を引き起こします。
この結果、ピロリ菌は様々なメカニズムから胃の粘膜を傷害して胃潰瘍を引き起こすことがあるのです。
ピロリ菌は投薬治療で除菌することができますので、感染していることがわかったら除菌治療を受けるようにしましょう。

胃潰瘍の症状

胃潰瘍の主な症状は以下のとおりです。

  • 空腹時、および食後の腹痛や胃痛
  • 胸焼け
  • げっぷ
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 貧血
  • 下血
  • 黒いタール状の便
  • 吐血

胃潰瘍の検査と治療

胃潰瘍の検査と治療法を以下に解説します。

検査

検査方法には、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)とそれ以外の検査があります。
内視鏡検査では、口または鼻から内視鏡を挿入し、内部を観察します。内視鏡検査により、以下のことが確認できます。

  • 胃を直接見ることができ、潰瘍の有無がはっきりわかる
  • 潰瘍の進行具合がわかる
  • 隠れた胃癌を発見できる
  • 組織を採取することでピロリ菌の有無を確認できる

ただし、ピロリ菌の有無は、採取した部位にたまたまピロリ菌がいなかった場合、発見できないため、以下の内視鏡を使用しない検査と併用することが推奨されます。

  • ヘリコバクター・ピロリ菌抗体測定
  • 尿素呼気試験法
  • 糞便中抗原測定

治療法

胃潰瘍の治療法を以下に解説します。

薬物治療

出血のない胃潰瘍であれば薬物治療で改善されるといわれています。
過度な胃の粘膜に対する胃酸を抑制するために、プロトン・ポンプ・インヒビター(PPI)やH2ブロッカーと呼ばれる胃薬を服用します。

他にも、胃の粘膜を保護する働きのある胃薬を服用することもあります。
胃薬を服用する場合は、痛みなどの症状が治まっても、途中で服用を中止せず、医師の指示に従って服用することが重要です。

ピロリ菌の除菌

胃潰瘍の原因がピロリ菌の場合は、ピロリ菌を除菌する必要があります。その場合、プロトンポンプ阻害薬と2種類の抗菌薬を、1週間服用します。ピロリ菌を除菌することでほとんどの場合、症状と再発のリスクを抑えることができますが、副作用が起こることもあるため、除菌可能な施設で診療を受けるようにしてください。

内視鏡的止血術

出血を伴う胃潰瘍の場合、内視鏡を使用して止血剤を注射、またはレーザー治療により止血する方法が採用されます。止血処置により、出血によるショックの予防と再出血のリスクを抑えます。その後薬物治療により治療を行います。

胃潰瘍を予防するための生活習慣

胃潰瘍を予防するためには、規則正しい生活習慣が重要といわれています。以下に生活習慣の改善法をご紹介します。

食生活を改善する

食生活を見直すことは、胃潰瘍を予防するための重要なポイントです。以下の点に気をつけましょう。

  • 早食い、暴飲暴食をしない
  • 1日3食、規則正しく食べる
  • 極端に熱い食べ物、冷たい食べ物、辛い食べ物を避ける
  • 過度な飲酒をしない

ストレスを溜め込まない

過度なストレスは胃潰瘍の原因となるため、なるべくストレスを溜め込まないように心がけることが大切です。自分なりのストレス解消法を見つけ、うまくストレス発散することが大切です。

禁煙する

喫煙者の場合、非喫煙者よりも胃潰瘍になりやすいといわれています。胃潰瘍の予防には、禁煙することが推奨されています。

おわりに:生活習慣の見直しとピロリ菌の検査をしておこう

胃潰瘍を予防するためには、今回ご紹介したように、生活習慣を見直すことが重要です。また、ピロリ菌も胃潰瘍の原因となるため、定期的にピロリ菌検査を行うようにしましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

ストレス(363) 胃潰瘍(53) ピロリ菌(44)