関節の異変「拘縮(こうしゅく)」の予防や改善方法とリハビリの種類とは?

2017/10/19 記事改定日: 2020/6/10
記事改定回数:3回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

拘縮とは関節の可動域が狭くなり、自由に動かすことができなくなる症状です。日常生活に支障をきたすこともありますが、適切なリハビリで症状を改善することができます。この記事では、拘縮の症状と原因とリハビリの方法、リハビリ時の注意点を解説します。

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拘縮(こうしゅく)ってどんな状態なの?

拘縮とは、皮膚や筋肉、靭帯などが何らかの原因により伸縮性が損なわれた結果、関節が動かず固まってしまう「関節可動域制限」の状態のことです。
拘縮は高齢者だけでなく、ケガや病気を契機として若い人にも起こり、次のような症状が引き起こされます。

主な症状
関節の曲げ伸ばしができなくなる、日常生活の動作が難しくなる
症状の部位
肩、ひじ、手、指、股関節、膝、足

拘縮が進行すると日常生活の動作が難しくなり、自立した生活が徐々に困難になります。結果、介護が必要となったり寝たきりになり、QOL(Quality of Life)の低下につながります。そのため、拘縮は早めの予防とリハビリが重要です。

強直と拘縮の違い

拘縮と似たような症状で、「強直(きょうちょく)」があります。拘縮がリハビリ等により改善する可能性があるのに対し、強直は手術等の外科的手段でなければ改善がほとんど見込めません。

拘縮の原因は?5つの分類

拘縮が発生する原因は大きく5つに分けられます(Hoffaによる分類)。

皮膚性拘縮
火傷やけがを原因とし、皮膚に生じるケロイドや瘢痕(はんこん)により皮膚がひきつれ、関節の曲げ伸ばしが困難になる
結合組織性拘縮
皮下組織の腱や腱膜が損傷し、回復する際に起こる拘縮。損傷部分に瘢痕ができて関節の可動域が制限される
筋性拘縮
筋肉を理由とし、関節の可動域が制限される拘縮。筋炎による筋線維の変化、寝たきりやギプスの固定による筋肉の機能が低下、血行不良による筋肉の機能が低下、などの原因で発症する
神経性拘縮
麻痺や痛みに対する反射で筋肉の緊張が長時間起こり、関節の屈伸が困難になるもの。脳血管障害や脊髄疾患から起こることがある
関節性拘縮
関節部分の組織、関節包や靭帯などの損傷・回復の際、組織が癒着や結合することで関節の可動域を制限する

拘縮の治療方法の種類

拘縮は進行すると完全に元の状態に戻すことは困難となります。そのため、上で述べたような拘縮を引き起こすようなケガや炎症などが生じたときは、早い段階からリハビリを行っていくことが大切です。

拘縮が生じた場合、症状の改善や進行の予防のために次のような治療が行われます。

温熱療法

ホットパックなどを関節に当てることによって血行を改善し、固くなった組織をほぐす効果が期待できます。

超音波療法

関節に超音波をあてて刺激を加え、血行を改善したり組織を柔らかくする効果が期待できます。

ROM訓練

ROM訓練とは「関節可動域訓練」とも呼ばれる、関節の拘縮や変形を予防するために行う訓練のことです。麻痺などが起こり、自らの力で関節を動かせなくなったとしてもそのままにしておくと関節を構成する筋肉などは固くなっていきます。
一定の方向に関節が固まってしまうと、衣類の着脱や入浴の際に骨折や脱臼などの思わぬ外傷を起こしやすくなるため、関節が動く範囲をキープする訓練が必要となるのです。

この訓練は毎日継続して行うことが大切であり、自分で関節を十分に動かすことができない場合は理学療法士や看護師などの介助者が関節の曲げ伸ばしを行います。

手術

火傷やケガによる皮膚性拘縮や結合組織性拘縮、筋肉性拘縮などではダメージを受けて硬くなった組織があります。そういった組織を取り除く手術や、別の部位から取った組織を移植する手術が行われることもあります。

拘縮を予防するには?

拘縮は進行すれば治療やリハビリによる改善が困難になるため、予防に重点が置かれています。予防のためには、次のポイントを意識することが大切です。

拘縮予防のポイント
  • 日常的に意識して体を動かす
  • 血流の改善
  • 筋肉萎縮の防止
  • 関節機能の正常化を図る

また、前述の運動療法は予防としても非常に効果的とされていますが、知識のない人がROM訓練を行うと、返って関節や筋肉を傷め、拘縮を進行させる可能性があります。専門の作業療法士、理学療法士から方法を学んだうえで実践しましょう。
拘縮予防で取り入れたい対策を紹介します。

ポジショニング

ROM訓練より手軽にできる予防法として、ポジショニングがあります。ポジショニングとは、障害や、寝たきり、手術後など、自分で自由に体を動かせない人の拘縮や床ずれの防止のために行なわるものです。
枕やクッションを利用して、目的に沿った姿勢を保って正しいポジショニングを行えば、圧を分散させたり通気性を確保したりできます。

症状によりポジショニングの形は異なるので、歪みがないか、無理のない姿勢か、自分で動かせる部分を邪魔していないかをきちんと確認し、寝ている状態なら2時間おき、座っている状態なら30分おきに体位変換をしましょう。

他動運動のリハビリ

他動運動は、関節を他者や器具で動かすことです。関節拘縮だけなく、筋力と筋肉や皮膚の柔軟性を維持する効果が期待できます。他動運動中は背中やお尻などに体重がかかった状態となりますので、運動後は体位交換を行って褥瘡を予防しましょう。

他動運動の方法は以下の通りです。

肩から肘

肩から肘の他動運動では、肩関節が脱臼していないことを確認したうえで、以下の動作を行います。

  • 肩関節の上腕骨骨頭部を片手で押さえながら、反対側の手で二の腕を持って円を描くように回す
  • 腕を肩に垂直になるように持ち上げる
  • 肘関節を円を描くように回したり、曲げ伸ばしたりする

このとき、関節にひっかかりがある場合には無理に腕を持ち上げると脱臼することがあるので注意しましょう。

手は拘縮すると指が曲がって「グー」の状態になります。手の他動運動では、小指側から手の平を揉みほぐすようにしながら指を開いていき、第二関節から少しずつ指を伸ばしていきます。

このとき、骨粗鬆症がある人は無理に指の伸展を行うと骨折することがあります。無理のない範囲で行うのがポイントです。

膝の他動運動では、膝を持って太ももを持ち上げ、股関節を伸ばすようにし、膝の曲げ伸ばしを行います。筋力を高めるために、膝の後の腱に抵抗が生じるところまでしっかり伸ばし、30秒ほどキープする運動を併用することがあります。

おわりに:拘縮は予防が重要!リハビリや血流改善を取り入れましょう

拘縮は、ケガや加齢を原因として誰でもかかりうる症状です。日頃から体を動かしたり血流改善を意識し、関節の可動域の確保に努めることが大切です。体を動かせない人に対しては、周囲の人が協力してリハビリを手伝いましょう。ただし、リハビリは医師や専門の作業療法士・理学療法士の指導のもとで行うようにしてください。

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