排卵が起こりにくい多嚢胞性卵巣症候群の原因とは

2017/10/26

前田 裕斗 先生

記事監修医師

国立成育医療研究センター フェロー

前田 裕斗 先生

卵胞がうまく発育しないために、排卵が起こりにくくなってしまう「多嚢胞性卵巣症候群」。妊活中の女性を悩ませることもある病気ですが、なにが原因で発症するのでしょうか?対策や治療法と併せて解説していきます。

多嚢胞性卵巣症候群はなぜ起こるのか

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の原因は、明確にはわかっていないというのが現状です。ただ、いまのところは内分泌異常や糖代謝異常によって引き起こされるという説が有力視されています。

内分泌異常

女性の体内では通常、脳下垂体からの指令を受けて分泌された「黄体化ホルモン」と「卵胞刺激ホルモン」という2つのホルモンが、卵巣に作用して卵胞の発育を促します。しかし、多嚢胞性卵巣症候群の女性の場合は黄体化ホルモンが過剰に分泌されるため、ホルモンバランスが崩れ、卵胞がうまく育たなくなってしまうのです。これにより排卵が阻害されると考えられています。

糖代謝異常

糖代謝異常も、多嚢胞性卵巣症候群の原因と考えられています。もっと正確にいえば、糖代謝異常からくる男性ホルモンの増加こそが、多嚢胞性卵巣症候群を引き起こすといわれています。

まず、多嚢胞性卵巣症候群の患者さんの多くは、遺伝や生活習慣などの原因でインスリン(血糖値を下げるホルモン)が効きにくくなっており、インスリンが過剰に分泌されています。通常、女性の体内では男性ホルモンが産出されても、性ホルモン結合グロブリンと結合することで活性力を抑えていますが、インスリンは性ホルモン結合グロブリンの数を減らす働きがあるので、患者さんの卵巣内では男性ホルモンが増えてしまうのです。

ストレスや肥満、食生活が原因になることもある

多嚢胞性卵巣症候群には、生活習慣が関連しているといわれています。「糖代謝異常」の項でインスリンの過剰分泌の話をしましたが、これには肥満や食生活の乱れが大きく関わっていると考えられています。事実、多嚢胞性卵巣症候群の患者さんには一定程度肥満傾向の方がみられます。

また、ストレスも多嚢胞性卵巣症候群の要因のひとつと考えられています。ストレスはホルモンバランスを乱す原因としても知られており、また過度のストレスは男性ホルモンの過剰分泌を促す恐れがあるからです。

症状を改善するための対策とは

多嚢胞性卵巣症候群の発症要因として、食生活の乱れやストレスが挙げられることから、まずは生活習慣を改善させることが第一の対策でしょう。糖分や脂肪分のとりすぎは控え、栄養バランスのいい食事を心がけてください。定期的に運動を行うのもおすすめです。なお、多嚢胞性卵巣症候群で肥満の患者さんについては、体重を減らすことで排卵しやすくなったとの報告もあるので、徐々に減量していくことが症状の改善につながるでしょう。

病院での治療

病院では排卵を促す治療が行われることになりますが、主な治療法には、「経口薬の処方」「注射」「手術」があります。すぐの妊娠希望がない場合はまず低用量ピルで人工的に月経周期を作ってホルモン分泌を整えていきます。一方すぐの妊娠希望がある場合はクロミフェンという排卵誘発剤を処方し、排卵を促します。反応が得られないときは漢方薬や、時に糖尿病薬も併用しながら治療を行っていきます。これらの薬で効果が得られないなら、HMG製剤などの排卵誘発剤の注射や、卵巣に複数の穴をあけて排卵を促す腹腔鏡手術を実施するのが一般的です。

おわりに:原因はわかっていないが、生活習慣から起こることも。バランスの取れた生活を過ごすようにしよう!

多嚢胞性卵巣症候群の原因は、現段階でははっきりとはわかっていません。体質や遺伝によるという説もあるようですが、一方で生活習慣の乱れもひとつの要因として考えられています。少しでも症状改善に近づくよう、食事療法や運動療法などできることから始めていきましょう。

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