糖尿病のインスリン注射で正しく血糖コントロールする方法とは!?

2017/11/2 記事改定日: 2018/3/15
記事改定回数:1回

記事監修医師

日本赤十字社医療センター、糖尿病内分泌科

高屋 和彦 先生

糖尿病の治療の基本は生活習慣の改善による血糖コントロールです。しかし、血糖値の上昇が抑えられなくなると血糖を抑える飲み薬やインスリン注射が必要になる場合があります。ここでは、インスリン注射の種類と効果、血糖コントロールについて詳しく解説します。

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インスリンの作用について

体内のインスリンは、膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島にあるβ細胞で作られています。

インスリンには筋肉や脂肪の細胞がブドウ糖を取り込むことを助ける作用があり、取り込んだ糖をエネルギーとして利用したり、使わなかったエネルギーを貯蓄することで血糖値を下げる役割を担っています。

インスリンが十分に分泌され、正しく作用している間は正常な血糖値が保たれますが、何らかの原因でインスリンの分泌量が不足してしまったり、インスリンの働きが弱くなってしまったりすると、血糖が高い状態が続き、やがて糖尿病を発症します。

なぜインスリン注射が必要になるの?

糖尿病は、インスリンが不足していたり、インスリンが効きにくくなっている状態のため、血液中のブドウ糖をうまくエネルギー源として取り込むことができず、体中の細胞はエネルギー不足に陥ります。そのため糖尿病になった人は、疲れやすかったり、倦怠感が現れるようになります。

また、血糖値が高い状態が続くことは血管にもダメージを与えます。血糖は血管の柔らかい内膜を傷つけ、そこにコレステロールが溜まることで動脈硬化を引き起こします。動脈硬化が進行すると、手足が痺れたりする神経症状や目が霞んだりといった網膜の症状が現れます。また、さらに糖尿病が悪化すると腎機能障害になったり、足が壊死することもあります。日本人の失明、人工透析導入の原因の第一位は糖尿病です。

このような重篤な症状が現れる前に治療を始めることが大切ですが、糖尿病は初期のうちははっきりとした症状が現れないことも多いです。食事療法や運動療法、さらには経口薬治療で血糖コントロールができなくなるほど症状が進んでしまった場合は、インスリン治療が必要になります。

インスリン治療中の運動について

血糖値を下げるには適度な運動が推奨されています。しかし、インスリン注射が必要なほど重症な糖尿病の人は、腎機能が悪い人も多く、このような人は運動を制限されることがあります。
多くの糖尿病患者にとって適度な運動は糖尿病の悪化予防に必要とされていますが、運動療法を行う場合には必ず医師と相談してからにしましょう。

また、過度な運動は低血糖を引き起こすことがあります。低血糖に陥ると意識を失うことがありますから非常に危険です。

インスリン治療中の食事の注意点

インスリン注射は血糖降下作用が強い治療方法ですが、インスリン注射を行っている場合にも食事には気を付けましょう。せっかくインスリンで治療をしていても甘いものや炭水化物が豊富なものを食べ続けていては十分な効果を得ることはできません。特に腎機能に異常がある人は低炭水化物の食事がすすめられています。

インスリン注射の種類と効果

体内で不足しているインスリンを注射することで血糖値を下げることができます。注射で使われるインスリンの種類には、超速効型、速効型、中間型、持効型、混合型があります。

超速効型

食事の直前に注射するタイプの薬です。10分から20分で効果が現れ、1時間から3時間後に効果のピークを迎え、3時間から5時間ほど持続するといわれています。

速効型

食事をする20分から30分前に注射します。効果が現れるまで30分、1時間から3時間が効果のピーク、効果は8時間程度続きます。

中間型

効果発現までに90分、効果のピークを迎えるのは注射してから4時間から12時間後で、24時間ほど効果が持続するといわれています。

持効型

効果のピークはなく、一定の効果を保つ特徴があり、24時間効果が持続するといわれています。また、同じ持効型でも、製剤によって効果の出方が多少違います。

混合型

持効型と同様、製剤によって効果の出方が異なります。速効型と中間型、超速効型と中間型というように、混合する薬のタイプが違ったり、混合の割合に違いがあるため、効果の出方も様々です。

インスリン注射で血糖値が下がらないことがあるって本当?

インスリンは皮下に自分で注射をすることで体内に注入しますが、同じ部位に長期間注射を続けると、皮下結節ができてしまいインスリンが血中に到達しなくなることがあります、ですから、注射は同じ場所に続けて行わず、少しずつ場所を変えて行うようにしましょう。
また、インスリン注射を続けることで、体内にインスリンに対する抗体ができることがあります。インスリンの抗体ができてしまうと十分な量のインスリンを投与したとしても多くのインスリンが抗体と結合してしまい、体内で正常に働くインスリンが減少してしまうのです。

その他にも、インスリン注射が効きづらくなる原因として、極度な肥満や炎症、ステロイド剤の使用、肝硬変や心不全、がんなどの病気が挙げられます。

インスリンは医師の指示を守って注射しよう

インスリンは血糖値を下げる効果がありますが下がりすぎても良くありません。血中のブドウ糖が極端に少なくなると脳に糖分が行き渡らなくなり、意識を失ったりすることがあります。

そのため、インスリン注射は、症状にあわせて適切な間隔で適切な薬を打つことが重要です。適切に血糖コントロールするために、注射を打つ時間やタイミングについては、必ず医師の指示を守ってください。

また、血糖値が上がってしまったからと、自己判断でインスリンの量を増やすようなことは通常はしてはいけません。

おわりに:血糖値が上がる原因を理解し、きちんとコントロールしよう!

糖尿病の治療の中心は、適度な運動と健康的な食事による血糖コントロールが基本です。早期の治療開始と徹底した食事管理に努めましょう。また、経口薬やインスリン注射を使い始めたあとも、血糖コントロールのためには健康的な生活習慣を続ける必要があります。医師と相談しながら、自分にあった治療計画を立ててください。

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