関節リウマチではどんな治療が行われる?リハビリで大切なことは?

2017/10/18 記事改定日: 2018/6/14
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

関節リウマチとは、関節の炎症が続いて破壊が進行し、関節が機能障害を起こしてしまう全身性の病気です。
この記事では、関節リウマチの治療法について詳しくまとめました。関節リウマチの症状を管理するためにも、きちんと理解しておきましょう。

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関節リウマチってどんな病気?何が原因なの?

関節リウマチは関節炎をきっかけとして生じる全身性の病気です。
炎症が進行して関節の変形・損傷が起こり、関節以外にも微熱、食欲不振、体重減少などの全身症状を引き起こします。

特徴的な症状は関節の痛みや腫れで、手首や手足の指の関節に出ることが多いです。また、症状は左右両側の関節に対称にあらわれる傾向があります。

原因は免疫?

根本的な原因は明らかになっていませんが、特定の遺伝子の配列を持つ人に、喫煙、ウイルス感染、ストレスなどの要因が加わった結果、免疫異常となることで発症するのではないかと考えられています。

ヒトには細菌やウイルスなどの害悪から体を守ってくれる免疫機能が備わっていますが、この免疫システムが異常になることを「自己免疫疾患」といい、自己抗体を作り出して健康な細胞や組織にも攻撃をしてしまいます。

関節リウマチも自己免疫疾患のひとつで、異常な免疫反応によって関節での炎症が続くと、関節内にある滑膜(かつまく)の血液や細胞が増えて滑膜が厚く腫れます。腫れあがった滑膜は骨の軟骨部分や靱帯(じんたい)を破壊し、進行すれば骨にまでダメージを与えます。
これが、関節の痛みや腫れの原因と考えられています。

関節リウマチの症状の特徴は?早期発見のためにどうすればいい?

関節リウマチは30~40歳代で発症することが多く、特に女性は男性に比べて発症率が高いです。
症状の進行には個人差がありますが、大まかに3つのタイプに分かれます。以下で、それぞれの特徴を見ていきましょう。

軽症のまま経過するタイプ
関節リウマチ患者の7割ほどがこのタイプで、関節が損傷するスピードが穏やかなために大きな機能障害がないまま経過することが多いです。
手や足の指などの小さな関節には変形や障害がみられるものの、膝や股関節などの大きな関節には問題がないことが多く、手術をしなくても発症以前とさほど変わらない日常生活を送れる傾向があります。
残りの3割は、「 ゆっくりと進行するタイプ」と「急激に進行するタイプ」といわれています。
ゆっくりと進行するタイプ
長年にわたって症状が悪化して全身の関節が徐々に破壊されていくタイプです。
急激に進行するタイプ
関節の損傷が急激に進行するタイプです。

いずれの種類も適切な時期に関節の手術をして痛みを抑え、日常生活を送るのに必要な運動機能を残しておくことと、早期発見と早めに治療をはじめることが重要です。

関節リウマチの治療法は?

以前は「関節リウマチ=寝たきりになる」という印象を持つ人も多かったですが、医療技術の発展に伴う効果的で適切な投薬によって、痛みをとるだけではなく健康な状態に近い生活を送るための治療を受けられるようになりました。

現在は「病気の進行を抑える・痛みをとる・関節の損傷を防ぐ」という目的のもと、それぞれに応じて薬物療法、手術療法、リハビリを組み合わせた治療を行うのが一般的です。

薬物療法

関節リウマチでは、症状や病気の進行度合いによって様々な薬が使用されます。現在、主に使用される薬は次のものです。

① 消炎鎮痛剤

ロキソニン®やアスピリンなどの一般的な非ステロイド系の鎮痛薬です。炎症を引き起こすプロスタグランジンの産生を軽減させ、痛みを元からブロックする効果があるため、関節リウマチによる痛みにも有効です。
しかし、胃の粘膜に障害を起こしやすく、長く服用すると胃炎や胃潰瘍の原因となるため、長期間の漫然とした服用は避け、服用の際には一緒に胃酸を抑えるタイプの胃薬を服用することがすすめられています。

② ステロイド薬

副腎皮質ホルモンを製剤化したもので、非常に強い抗炎症作用があります。このため、強い炎症が生じる疾患に広く使用されますが、関節リウマチによる関節の炎症にも効果が期待できます。また、自己免疫作用を抑制する効果もあるため、病気の進行を抑える効果もあると考えられています。
しかし、ステロイド薬は副作用が強く、免疫力が極端に低下することによる易感染性、糖尿病、肥満、骨粗鬆場、抑うつ状態など様々な症状が引き起こされる可能性があります。

③ 抗リウマチ薬

かつてはストロイド薬が第一選択として使用されていましたが、副作用が多いという欠点があり、より副作用が少なく高い効果が期待できる抗リウマチ薬が開発されました。メトトレキサートを代表とするもので、消炎鎮痛剤やステロイド薬との併用も可能です。特に症状が重度な関節リウマチに効果が高く、進行を抑えることが可能です。
副作用としては、間質性肺炎が生じることがあり、特に高齢者では慎重な投与が必要となります。

④ 抗TNF製剤

生物学的製剤の一種であり、関節リウマチによって産生されるTNFαと呼ばれる物質を抑制することで炎症を止めることができ、非常に高い効果が期待できます。また、軽度な関節内破壊であれば、抗TNF製剤の投与によって修復されることもわかっています。
副作用として、アレルギー反応としての湿疹や発熱が生じますが徐々に回復していくことが多いです。また、肝機能障害を生じることが多く、肝炎ウイルスの感染者には慎重な投与が必要です。

⑤ JAK阻害剤薬

最も新しいタイプの治療薬であり、炎症を引き起こすサイトカインというが作用する際に必要なJAKという酵素を阻害して、サイトカインの刺激をブロックする作用を持ちます。このため、強い抗炎症作用が期待でき、これまでの治療薬で効果がなかった患者に広く使用されています。
しかし、感染症になりやすく、肝機能障害や胃潰瘍、貧血などの副作用が生じやすく、がんを誘発することがあるとの報告があるので、投与の際には全身状態の確認が必要となります。

手術療法

関節リウマチによる関節症状が強い場合には手術が行われることがあります。
これは、痛みを和らげる効果が期待できると共に、関節のこわばりや変形などで日常生活の動作への支障を軽減するために行われます。
関節部位が高度に破壊されているケースでは人工関節への置換術が行われ、頸椎に変形が生じているケースでは頸椎の関節を固定するための手術が行われます。
また、手や足の症状に合わせて、腱の再建や炎症の強い滑膜切除などが行われることもあります。

リハビリ

関節リウマチのリハビリでは、関節のこわばりによる拘縮を防ぐために関節を積極的に動かく訓練やマッサージや温熱療法などの理学療法が行われます。
しかし、無理に訓練を行うことで、関節の炎症が悪化したり、場合によっては破壊された関節の脱臼が生じることもあるので、病気の進行や症状の程度を加味して自身に合ったリハビリを行うことが大切です。

おわりに:体調管理に気をつけつつ、医師の指示をきちんと守って治療しよう

関節リウマチの治療は薬や病院で行う処置だけでなく、適度な運動、充分な睡眠、関節の負担を軽減するなど・・・患者さん自身が積極的に療養に取り組む必要があります。
治療の際は体調管理に注意するとともに、医師からの指示を守るようにしましょう。

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