慢性硬膜下血腫の症状と治療法について

2017/10/18

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

慢性硬膜下血腫は、脳の表面に血の塊ができることで頭痛や物忘れなどの症状が起こる病気です。はっきりした症状が出ないこともあるため、ちょっとしたサインに気づけるかが治療の鍵になってきます。この記事では、慢性硬膜下血腫の症状と治療について解説しています。

慢性硬膜下血腫の症状とは


慢性硬膜下血腫とは、症状がなく忘れてしまうような軽い頭部外傷の後、数週間~数か月かけて、脳の表面に血の塊(血腫)が溜まる病気です。

年間発生額度は人口10万人に対して1~2人とされ、60歳以上の高齢の男性に多く見られるといわれています。なお頭部外傷でなくても、酔っ払っていたり、少し呆けていて外傷があったかどうかわからない場合の発症が約3割存在するとされているため注意が必要です。

症状の特徴

血腫は左右どちらか片側にできることが多いものの、約10%は両側のものが見られます。

血腫が脳を圧迫することによって、頭痛、嘔吐、麻痺や痙攣、物忘れや失語症などの精神症状、失禁、半身に力が入らないなど、さまざまな症状が現れます。

上記のようなはっきりした症状が現れず呆けだけを発症するケースもあるため、最近ボーっとすることが多くなったり、意欲がなくなっているような変化に気づいた場合は、早めに病院で検査することをおすすめします。

また急激な意識障害や片麻痺を発症することもあり、脳ヘルニアに至るような深刻なケースでは脳卒中に似た症状を現すこともあります。

慢性硬膜下血腫の外科治療


ごくまれに自然治癒する例もありますが、基本的には外科的治療を行います。

極端な重症や特殊例以外は、穿頭ドレナージ術という比較的短時間で終了する手術を実施します。

局所麻酔をかけて頭皮を5cm程度切開し、小さな穴(1cm径)を頭蓋骨に開け、細いゴムのチューブを血腫腔内に滑り込ませて洗い流します。そのままチューブを脳の表面に残して一旦手術を終え、チューブから残った血液を流す処置を病棟で1日程度行います。
手術後、麻痺や認知症症状、頭痛などの症状は徐々に改善していく事がほとんどですが、術後の再発が約10%に見られるといわれています。再発した場合は、状態により再手術もしくは経過観察のどちらかが検討されることなります。

呼吸障害がある場合などは、全身麻酔が必要となるケースもあり、石灰化したものや難治性・再発性の場合は、皮膜ごと摘出する大開頭術が行われることもあります。

手術以外の治療法について


前述したように手術による治療が原則ですが、血腫が小さい場合や症状が限定的な場合は、血腫内容液に対して浸透圧利尿剤を用いた薬物療法を行う事があります。
しかしいずれも長期間の連用が必要で、入院期間の長期化が懸念されるうえ、とくに高齢者においては電解質異常などの合併症の問題もあるため、治療の選択は慎重になる必要があるでしょう。

手術の合併症と予後について


慢性硬膜下血腫は、正しく診断がなされタイミングを逸することなく治療が行われれば完治する病気です。ただし前述したように、術後の再発が約10%にみられます。
無菌手術を心がけていても、手術の際に細菌の侵入を 100%防ぐことは困難なため、手術後に創部感染、髄膜炎、脳炎などを起こす可能性があります。

また、全身合併症のリスクも伴い、糖尿病、高血圧、心疾患、肺気腫、内分泌疾患、精神疾患など、これまで隠れていた病気が手術をきっかけに発症することがあります。
その他、手術に際して使用する局所麻酔薬や消毒薬が体に合わず、じんましん、呼吸困難、口唇や舌のしびれ感、めまい、ふらつき、頭痛、視覚・聴覚異常、多弁、痙攣などの症状がでることがあります。

おわりに:高齢者に多い慢性硬膜下血腫。完治を目指すためにも家族は症状に早く気づけるようにしよう

慢性硬膜下血腫は60歳以降の高齢者に多く見られる病気です。再発の可能性はあるものの、適切なタイミングで適切な治療を行うことである程度症状の回復が見込めるといわれています。慢性硬膜下血腫は、はっきりした症状が出ないこともあるので家族や周囲の人がちょっとした変化に敏感に気づいてあげることが重要になってきます。普段からよく触れ合うようにして、サインを見逃さないように気をつけましょう。

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