記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/18 記事改定日: 2019/1/29
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
体がうまく動かせないために、トイレに行きたくても行けずに失禁してしまったり、排尿への認識が薄いために失禁してしまったり――そんな「機能性尿失禁」に悩まされる高齢者の方やご家族の方は少なくありません。ここでは、機能性尿失禁についての全般的な情報をご紹介します。
何らかの原因で、トイレではないところで排尿してしまうことを尿失禁といいます。尿失禁の種類のひとつに、機能性尿失禁があります。
機能性尿失禁の症状の特徴は、排尿機能自体には問題がないにもかかわらず、体が思うように動かなかったり、排尿への意識が薄くなることで尿が漏れてしまうことです。たとえば、以下のような状況で失禁することがあります。
機能性尿失禁は、以下のような原因で起こると考えられます。
認知症になると、トイレの場所がわからなくなるだけでなく、排尿すること自体を忘れてしまうこともあります。また、厚着をしていて脱ぐのに手間取っている間に排尿することを忘れ、無意識のうちに漏らしてしまうこともあります。
そのほか、トイレの環境も原因になります。あまりに遠いところにあれば、トイレまでいくのに時間がかかりますし、道のりを覚えるのも大変になります。また、トイレが狭すぎたり、使いにくかったりすることも原因になります。
機能性尿失禁は、こうしたさまざまな要因が重なり合って起こります。ただ、環境を整えることで、ある程度改善できるものもあります。
機能性尿失禁を発症した人のケアを考えるとき、まずは個人個人の排尿行動をよく観察することが大切です。その人自身にどのような症状があるのかによって、ケアの仕方が違ってきます。
たとえば、排尿場所までの移動が大変な場合には、以下のような対処法が有効です。
また、運動障害がある場合は着替えにも時間がかかるので、排尿行動がとりやすい形状の服を用意するのがおすすめです。
排尿への認識がなくなってしまっている場合には、時間を見て排尿を促すような声掛けを行うことが大切です。本人はトイレに行きたくないと言っても、トイレに行くと排尿することがあります。上手くコミュニケーションをとってトイレに行けるよう促しましょう。
排尿は毎日何度も行うことなので、生活の様子を見て、様子に応じてケアの方法を変えていく必要があります。個人に合った方法を探し続けていく姿勢が大切です。
機能性尿失禁の人にオムツを使用するのは、思わぬ場所での排尿による衣類、寝具などの汚染を防止することができるため、介護者の精神的・身体的負担を軽減することにつながります。しかし、患者の中にはオムツに抵抗がある人もいます。また、オムツをすると「トイレへ行こう」という意欲や行動が失われるため、更なる筋力・認知機能の低下を引き起こしてしまうことも少なくありません。
機能性の尿失禁の場合には、外出時など特に失禁しては困るような場面でない限り、できるだけオムツを使用しなくいいようなケアや対策を行うことが大切です。使用する場合でも、患者のプライドが傷つかないような配慮を心がけるようにしましょう。
機能性尿失禁を引き起こす原因は人によって違います。原因にあわせて失禁しないような環境を整えていくことが大切です。できることからで構わないので、本人の自尊心にも配慮した対策をとっていきましょう。