健康診断の結果から肝機能のチェックをしたい。どこを見ればよい?

2017/10/18

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

飲み会が続いていたり、晩酌での飲酒量が多くなっていたりする方にとって心配な肝機能。会社の健康診断の結果から、肝機能のチェックをするには、どこに注目すればいいのでしょうか?

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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肝臓の働きとは


肝臓の主な役割としてあげられるものは、代謝作用・解毒作用・胆汁の生成や分泌です。

まず代謝機能とは、食事でとった栄養分を必要な時に使えるように貯蔵をしておく役割の事です。そして解毒作用は、身体にとって有害と思われる物質(アルコールや薬物など)に対して、分解をする事で体内に悪影響を出さないようにする作用の事です。最後の胆汁の生成ですが、私たちは胆汁があるおかげで肝臓から老廃物を流す事ができるようになります。胆汁は老廃物を胆管から胆のうへ流すだけでなく、その他にも脂肪に対する消化吸収を助けるという重要な役割も担っています。

健康診断結果の中で、肝機能の働きを示す数値は


健康診断で肝機能の状態を把握するために行うのが、血液検査です。血液検査で肝機能の状態を確認するには、ALT(GPT)をはじめAST(GOT)やγ-GTPの数値を確認することが基本になります。肝臓は、肝細胞や胆管細胞といった血管と接している箇所があるので、肝機能に異常があると肝臓内から血管に異常物質が漏れるようになっており、これらの数値の異常で肝機能異常に気づくことができるのです。

まずALT(GPT)は、細胞内にある酵素です。普段は肝細胞にありますが、異常があると肝細胞が破壊されていることで血液中に漏れるようになります。次にAST(GOT)は、基本的にはALTと同様に細胞内にある酵素です。ただ、肝臓だけでなく心臓や腎臓にもあるので、この数値だけが高くなる場合は、肝臓以外の疾患が疑われます。そしてγ-GTPは、肝細胞や胆管細胞にある酵素です。γ-GTPの量は飲酒や肥満が原因で多くなるため、血液に漏れることで異常が発見できます。

肝機能の数値に異常がみられた場合に考えられる病気は


健康診断の肝機能の数値が異常値だと、肝臓に何かしらの疾患がある事が疑われます。血液検査だけで確定診断ができる訳ではありませんが、ある程度の目安にはなっています。

ALTやASTの数値が高い時には、飲酒をされる方であれば、アルコール性肝炎が疑われますし、肥満があるようでしたら脂肪肝の疑いが高くなります。更にγ-GTPに異常があれば、アルコール性肝炎以外にも、胆石や胆道閉塞などの疾患の可能性も考えられます。

ほかにALP数値が高い場合は、薬物による肝炎や胆道閉塞の可能性が考えられるので、他の数値を比較しながら別の検査でより正確な診断を行う事になります。なお、総たんぱくが異常値の場合は、肝硬変や肝がんをはじめネフローゼ症候群などの重篤な疾患の疑いもあるので、血小板やLDなどの数値からも合わせて診断材料に使用します。

検査結果で「再検査」や「要精密検査」と出たら


健康診断で再検査や要精密検査となった場合は、肝機能に関わらず身体のどこかの機能が低下していたり、本来の働きが出来なくなっている場所がある可能性が考えられます。

特に疾患のある臓器が肝臓や腎臓などだと、初期の段階では自覚症状がないことから放置してしまい、気づいた時には手の施しようがないほどに悪化してしまっているケースもあります。

健康診断で行える検査内容は、完全な検査とは言い切れませんが、再検査や要精密検査となっている場合は、医療機関を受診してしっかりと精密検査を受ける事が望ましいです。どのような疾患であっても早期段階で発見できれば、予後も良い事が多くなりますし、進行も大きく遅らせることができます。

おわりに:ALT(GPT)やAST(GOT)、γ-GTPの数値に注目!

健康診断で行う血液検査の結果表にある、ALT(GPT)やAST(GOT)、γ-GTPの数値に注目することで、おおまかに肝機能をチェックすることができます。今年の健康診断の際には、ぜひ参考にしてみてください。

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