くる病とはどんな病気?骨軟化症と何が違うの?

2017/10/18 記事改定日: 2018/8/22
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

国の指定難病にも定められている「くる病」。背骨が曲がったり、O脚になったりといった骨変形を引き起こす病気ですが、いったい何が原因で引き起こされるのでしょうか?具体的な症状と併せてお伝えしていきます。

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くる病と骨軟化症

くる病は、生後3カ月から6歳にかけての骨の成長期に、ビタミンDが不足すると発症するリスクが上がる病気です。特に生後生まれたばかりの赤ちゃんを完全母乳で育てようとすると、母乳にはビタミンDの含有量が少ないために発症する確率が上がります。

子供のくる病の場合、脚のO脚や背中の湾曲といった骨の発育不足が起き、脚の骨が曲がったまま変形が進むと、最悪の場合は歩行困難になってしまいます。なお、大人の場合はくる病ではなく骨軟化症と呼ばれます。

くる病は原因によってさまざまな種類に分けられていますが、中でも遺伝子異常のリン不足によるものを家族性低リン血性くる病といい、別名で原発性低リン血症性くる病、ビタミンD抵抗性くる病ともいいます。

くる病と骨軟化症の違い

くる病と骨軟化症は根本的な病態は同じですが、発症の時期が異なります。
くる病や骨軟化症は、ビタミンDが不足することによって骨の石灰化が正常に行われず、骨の変形や痛みなどの症状が引き起こされる病気です。

このうち、小児期に発症するものを「くる病」、大人になって発症するものを「骨軟化症」と呼びます。
また、症状の現れ方も異なり、くる病の場合には骨の変形によってO脚やX脚、脊柱の弯曲、頭蓋骨の癒合障害などが生じ、関節が腫れて痛みを伴うことがあります。一方、骨軟化症では、筋力の低下や骨の痛みが主な症状となります。

くる病の発症の原因

くる病の原因は主に栄養不足、遺伝、日光不足の3つです。

栄養不足というのは特にビタミンD、カルシウム、リンの不足を指します。人間の骨は常に新しく作りかえられていますが、その材料としてリンやカルシウムは必須です。リンとカルシウムは骨を強くするために大事な役割を担っており、これを身体にしっかりと吸着させるためにビタミンDが必要となります。つまり、これら3つの栄養素がきちんと揃うことが重要なのです。

ビタミンDに関しては食事から補えるものですが、さらに日光に当たり紫外線を浴びることでも生成されるので、日光不足が原因でもくる病が引き起こされてしまうことがあります。

なお、骨軟化症の場合はこれらに加えて、腎疾患や内分泌疾患によっても発症します。また、ビタミンD抵抗性くる病は、遺伝子の異常によりリンが過剰に尿中に出てしまった結果、血液中のリンが不足してしまうために起きると考えられています。

どのような症状が起こるか

くる病の症状は、骨に関連したものが多いのが特徴です。骨が正常に作られずに軟らかくなってしまうことが原因で、さまざまな症状を引き起こします。最も一般的に知られている症状としては、足の変形が起きてそのまま曲がって成長し、重度のO脚やX脚になってしまうことです。また肋骨の一部分がこぶのように膨らむ胸骨念誦が起きたり、頭蓋骨が手で押すとへこんでしまうくらい柔らかくなってしまう頭蓋ろうが起きたりします。

なお、くる病の子供は成長期であっても筋力低下が起きるために低身長になり、体重の増加も見られます、身体が大きくなりません。さらには、カルシウムが足りないために虫歯になりやすい、痙攣や筋肉痛が起きやすいことが症状として挙げられます。

くる病の赤ちゃんの特徴をチェックしよう

くる病は早期から治療を行わないと、骨変形などの重篤な障害を残すことがあります。以下のような項目が多くあてはまる場合は、くる病の可能性があるのでかかりつけの小児科で相談してみて下さい。

  • 母乳のみで育てている
  • ほぼ一日中室内にいる
  • 両方のかかとをくっ付けると、膝の間が開く
  • 身長が伸びない
  • 頭蓋骨に柔らかい部位がある
  • 脚や腕がだらっとしていることが多い

くる病は治療できる?

くる病と診断された場合、基本的な治療法は食事療法と日光浴になります。食事療法では主にビタミンD、カルシウム、リンの摂取を心掛けること、日光浴では適度な紫外線を浴びることが重要になり、この2つの方法によって自然治癒することを目指します。薬物療法も必要であれば行いますが、ビタミンDの過剰摂取は他の病気を引き起こすこともあるので注意が必要です。

一方、遺伝性であるビタミンD抵抗性くる病の場合は治療法が異なり、主にリン製剤と活性型ビタミンDの投与で治療します。低身長の場合は成長ホルモンの投与を行ったり、骨の変形が進行すると手術といった外科的措置が必要になってくるので、早期発見と早期治療が大事になります。

おわりに:種類や重症度に応じて「くる病」の治療法は異なる

骨軟化症やビタミンD抵抗性くる病などさまざまな種類に分類される「くる病」。種類や重症度によって治療法は異なってくるので、専門医の指示に従いながら、適切な治療を続けていきましょう。

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