記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2017/10/18
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
「角膜潰瘍」という病名を聞いたことはありますか?角膜が傷ついたり、細菌に感染したりすることで発症する病気で、失明につながる恐れもあります。以降で詳しく解説していきます。
角膜とは、眼球を覆っている一番外に面した膜のことですが、角膜潰瘍とは、その角膜の上皮組織より深くに欠損が起こり、薄くなり、欠けていってしまう病気です。角膜の上皮が捲れる角膜びらんに対し、上皮だけでなくその奥にまで傷が進行し、障害が出ている状態が角膜潰瘍となります。
角膜潰瘍の原因は外傷や細菌、真菌、アメーバによる感染が主で、角膜の表面が健康であれば感染することはありません。発症した場合は、目の異物感や痛み、目やになどの症状が見られ、抗菌薬や炎症を抑える目薬などによる早めの治療が必須となります。
角膜潰瘍は角膜の病気の中では非常に重度のもので、完治した後も角膜に濁った瘢痕が残り、視力障害が残ることがあります。最悪の場合は角膜に孔があき(角膜穿孔)、失明してしまうケースもあります。
角膜潰瘍の原因には細菌性と非細菌性の2種類があります。
まず細菌性角膜潰瘍は、目を鋭利なもので突いたなどの外傷のほか、消毒が不十分なコンタクトレンズを装用した、コンタクトレンズをつけたまま眠ったなどのコンタクトレンズの不衛生な使用により、角膜の抵抗力が落ち、細菌感染を起こすことで生じます。原因菌や原因物質には、ブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌、緑膿菌といった細菌や、カビなどの真菌、原虫であるアカントアメーバなどがあり、中でも緑膿菌に感染すると、失明に至るような重症例が多いと言われています。
一方の非細菌性角膜潰瘍は、抗菌薬などによるブドウ球菌アレルギー、糖尿病などの自己免疫疾患、ストレス、重度のドライアイなどが原因で発症します。
角膜が傷ついた状態で数日が経つと、灰白色の潰瘍ができ、目の痛みや異物感、充血、目やに、流涙といった自覚症状が見られるようになります。また症状が進むと角膜が次第に大きくなり、歪みや暗さを感じるようになるほか、色覚異常を起こすケースもあります。黒目近くに潰瘍ができると、視野の中央部が見えづらくなり、徐々に視力が低下していきます。時には潰瘍が角膜全体に広がったり、角膜の裏側に膿がたまる場合もあります。
潰瘍が深くなればなるほど、症状はもちろん、深部への感染症や眼窩内の組織の破壊といった合併症を引き起こす可能性も高まります。角膜潰瘍は片目のみに発症することが多く、軽度の場合は気付かず加齢によるものと見過ごしてしまいがちなので、注意が必要です。
細菌性角膜潰瘍の場合は、大きな潰瘍の表面をこすりとって微生物を培養し、感染症を引き起こしている原因となる細菌、真菌、ウイルスを特定した上で、その原因となる菌に対する抗菌薬や抗真菌薬の内服、点眼、眼軟膏、結膜下注射などで治療を行います。
非細菌性角膜潰瘍の場合は、抗炎症薬か眼軟膏を使用します。なお、糖尿病や自己免疫疾患がある場合は、その治療も併せて行います。視力矯正のためにコンタクトレンズが必要な場合は、医師の診察のもと、治療用コンタクトレンズを使うこともあります。
これらの治療をもってしても改善しない場合や角膜に孔があいた場合は、失明の恐れがあるため、角膜移植手術を行う必要があります。
角膜潰瘍は、コンタクトレンズの不衛生な使用によっても引き起こされる可能性がある病気です。目の痛みや異物感、灰白色の潰瘍など疑わしい症状がみられたら、すぐに眼科を受診しましょう。