失神の基礎知識まとめ ~放っておくと危険って本当?~

2017/10/24

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

突然意識を失って倒れる「失神」。たまに経験する、という方もいらっしゃるかもしれませんが、失神はなぜ起こるのでしょうか?危険なタイプの失神とはどういうものでしょうか?失神の基礎知識をお伝えしていきます。

失神とは?


失神とは、大脳皮質の全体または脳幹の血流が瞬間的に遮断されることにより引き起こされる、一過性の瞬間的な意識消失発作のことです。気絶と呼ぶこともあります。

失神が起こる前兆として、目の前が真っ暗になる、めまい、気持ち悪さなどがあります。その後で顔面蒼白となり、意識をなくすというのが失神の状態です。失神を起こすと、寝ているような状態になって倒れます。

失神時の血流の遮断は一過性のものであり、しばらくすると意識が回復することが多く、何度も繰り返すことはほとんどありません。また、後遺症もないことがほとんどですが、倒れたときに打撲するなどで外傷を伴うこともあるため、決して楽観視できるものではありません。

失神は何が原因で起きるの?


失神の原因としてまず考えられるのが、起立性低血圧によるものです。失神は、基本的には脳に血流がうまく送られておらず不足しているときに起こります。そのため、空腹や貧血などでめまいを訴えてから意識を失うというケースが多いです。

ほかには、交通事故での頭の強打による失神、自律神経がうまく機能せずに起こる失神もありますが、最も注意が必要なのは心原性失神です。心臓の病気が原因で引き起こされるタイプの失神で、意識消失によって命に関わるケースもあります。

失神の検査は何をするの?


失神の検査ではまずは問診を行い、気を失ったときの状況や前駆症状によって危険度を把握します。具体的な前駆症状として、心原性失神の場合は胸痛が起きやすく、自律神経性を介する反射失神では腹部症状・吐き気・冷や汗などが症状として現れます。なお、失神前の行動や失神の頻度も診断内容に含みます。

その後、心電図をはかり、心疾患・不整脈の有無を確認していきます。自律神経の乱れが原因と思われる場合は、ヘッドアップティルト試験によって失神が起きやすいかどうかを再現する検査も行うこともあります。これらの検査の後、症状の度合いに応じた治療を行っていきます。

失神を治療するには?


起立性低血圧による失神の場合は、生活療法による治療が多いです。食生活の指導を行うことで、改善を図ります。

自律神経性の失神の場合には、生活指導のほか、前駆症状出現時の回避方法の指導も行います。ただ、気を失う回数が多い場合はペースメーカーを付けることもあります。

心原性失神の場合は、原因である心臓病を治すことを重視した治療を受けます。徐脈性不整脈が原因となっている場合に対してはペースメーカー治療、頻脈性不整脈に対してはカテーテルアブレーションや植え込み型除細動器の植え込み、といった治療法が行われます。内服治療も選択の一つとなります。

原因不明の場合は、生活指導や起立調節訓練を行うなどをして改善を図ります。

おわりに:失神の原因に応じて治療法は異なる。失神時の症状をよく覚えておこう

一言で「失神」といってもその原因はさまざまで、起立性低血圧から起きることもあれば、心疾患が原因で引き起こされることもあります。また、その原因によって治療法も変わってくるので、まずは原因特定のために、失神したときの症状をよく把握しておくことが大切です。

 

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