記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/23 記事改定日: 2019/6/3
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「急性灰白髄炎(ポリオ)」という病気をご存知ですか?かつて日本で流行したことのある感染症で、まれに下半身麻痺が残ってしまう恐れもある病気です。
この記事では、ポリオの全般的な症状と予防接種について解説していきます。
急性灰白髄炎(ポリオ)というのは中枢神経組織にポリオウイルスが感染することによって起きる病気で、小児麻痺という名前でもよく知られています。
ポリオウイルスには1型、2型、3型の3種類があり、口から入り込んだポリオウイルスは腸管の中で増殖して便と共に体外へと排出されます。その便を触った人にうつり、他の人に次々と感染してしまいます。
1960年代に流行した急性灰白髄炎(ポリオ)は、日本国内ではワクチンを接種することによって流行もストップし、1988年頃にはWHOによって世界ポリオ根絶計画が提唱されたことで世界的にも感染者の数は劇的に減りました。
ちなみに現在でも急性灰白髄炎の感染者が存在し、流行しているのは、インド、パキスタン、アフガニスタンの3か国のみとなっており、2000年頃にはまだ流行国とされていたナイジェリアでも、2015年に流行は終わったということがWHOによって発表されています。
ポリオに感染した時の症状は潜伏期間が3~21日と幅広く、感染したとしても90~95%ほどは症状がほとんど出ることがありません。
そのため、無自覚のまま他の人にうつしてしまうことが多いです。
なお、残りの5%の人には風邪と似たような症状(発熱や頭痛、咽頭痛、嘔吐や悪心、倦怠感など)が現れることがあり、ほかにも下半身に痛みを感じたり、首の部分が硬直してしまうことがあります。
ポリオに感染した人のうち200人に1人は下半身に麻痺があらわれ、さらにそのうちの約10%が呼吸筋麻痺によって死亡してしまいます。下半身麻痺があらわれてしまった場合は、一生にわたってその麻痺とつきあっていかなければいけない恐れもあります。
急性灰白髄炎は体内に入り込んでから腸管で増殖するということはわかっていますが、これといった特効薬は現段階では開発されていません。
頭痛や嘔吐といった症状があらわれたら点滴をするなどの、対症療法が一般的です。呼吸筋麻痺の場合、人工呼吸器を利用することになります。
なお、下半身の麻痺が起きたら、しばらく安静にし症状が落ち着いてきた頃に筋肉が硬くならないようにマッサージをしたり、装具をつけて歩行練習をしたりします。
体内にウイルスが入ってから症状が出るまでは潜伏期間があるため、症状が出た頃には対症療法を行うことになります。
ポリオは非常に重篤な神経障害などを引き起こす病気ですが、根本的な治療法は確立されていません。このため、感染を防ぐ必要があり、ほぼ確実な予防効果のある予防接種を確実に接種することが大切です。
ポリオワクチンは、乳児期の定期接種に指定されている「4種混合ワクチン」に含まれているため、若年者は高い割合で予防接種を行っていますが、成人ではワクチンを接種していないケースもめずらしくありません。もし接種していないようであれば、成人であってもワクチン接種が推奨されます。特に、ポリオが流行している地域に渡航する予定がある人は必ず医師に相談して接種を検討するようにしましょう。
ポリオワクチンには経口接種による生ワクチンと注射による不活性化ワクチンがあります。
生ワクチンは免疫を定着させる作用が強いと考えられていますが、ポリオを発症する危険もあるため。現在では主に不活性化ワクチンが使用されており、基本的には一回の接種のみで効果があるとされていますが、免疫力が低下しやすい病気に罹患している人などは4~8週後、6~12か月後と3回に渡る接種が必要な場合があります。
日本ではほぼかかることのない「急性灰白髄炎(ポリオ)」ですが、インドなどの流行国への海外旅行の際には、感染してしまう恐れがあります。流行国へ渡航予定がある方は、事前のワクチン接種を必ず行いましょう。
なお、ポリオの免疫が弱い世代がありますので、海外に行く行かないに関係なくできるだけ受けておくことをおすすめします。