貧血だけじゃない! 健康診断の血液検査からわかること

2017/10/25

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

毎年健康診断で血液検査を行うと思いますが、実はこの血液検査を通じてわかることは、案外たくさんあります。具体的にどんなことがわかるのか、どの数値に着目すればいいのかについて、わかりやすく解説していきます。

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血液はどんな成分でできている?

血液は、約45%の血球と約55%の血漿からできています。

さらにくわしく解説すると、この血球のうち約96%が赤血球、約3%が白血球、約1%が血小板からできています。赤血球はヘモグロビンという赤い色素を持っており、このヘモグロビンには酸素を組織に届ける働きがあります。白血球は体内に侵入してきた細菌やウイルスを攻撃して感染予防をする働きがあります。そして血小板は、破れた血管の穴を防ぐ働きをします。

一方、血漿の約91%は水でできており、水以外の部分の約9%は血液凝固因子やアルブミン、グロブリンなどで構成されています。血漿は栄養成分を各組織に運び、代謝老廃物を腎臓から排出したり、血圧を一定に保ったりする働きがあります。

健康診断の血液検査で調べることは?

一般的な健康診断で実施される血液検査でわかることは、貧血、肝機能異常や脂質異常、血糖値異常などです。貧血かどうかはRBC(赤血球)、WBC(白血球)、Hb(ヘモグロビン)、Ht(ヘマトクリット)、PLT(血小板)、肝機能はAST、ALT、γ-GTP、脂質はHDLコレステロールとLDLコレステロール、TG(中性脂肪)、血糖はFBG(血糖値)とHbA1Cの数値からそれぞれ確認することができます。

血液検査の結果、数値が異常だった場合に疑われる病気は?

上述の数値が基準値を超えていた場合、考えられる病気については以下のとおりです。

RBC(赤血球)の数値異常

赤血球には、肺で取り入れた酸素を全身に運び、不要な二酸化炭素を肺へ送るという役割があります。男性の場合は400~539 104/μL、女性の場合は360~489 104/μLが基準範囲で、これより多ければ多血症、少なければ貧血が疑われます。

WBC(白血球)の数値異常

白血球は、細菌などから体を守る役割があります。3.2~8.5 103/μLであれば基準範囲ですが、これより低いと再生不良性貧血の可能性があります。なお、これより高い場合は細菌感染症の疑いがあります。

Hb(ヘモグロビン)の数値異常

最初の項でお伝えしたように、酸素を各組織に届ける役割があります。Hbが基準値より少ない場合、鉄欠乏性貧血などが疑われます。

Ht(ヘマトクリット)の数値異常

ヘマトクリットとは、血中全体の赤血球の割合のことです。基準値より低ければ鉄欠乏性貧血などが、高ければ多血症などがそれぞれ疑われます。

PLT(血小板)の数値異常

血小板には、出血部分の出血を止める役割があります。基準範囲は13.0~34.9 104/μLで、これより高ければ鉄欠乏性貧血や血小板血症などが、低ければ再生不良性貧血などがそれぞれ考えられます。

ASTとALTの数値異常

ASTは、心臓や肝臓、筋肉に多く存在する酵素、ALTは肝臓に多く存在する酵素です。いずれも30U/L以下が基準範囲で、それより高い場合は急性肝炎や慢性肝炎、脂肪肝、アルコール性肝炎、肝臓癌などの病気が疑われます。なお、ASTだけが高数値の場合は筋肉疾患や心筋梗塞の可能性があります。

γ-GTPの数値異常

γ-GTPは、肝臓や胆道の異常を示す数値です。50U/L以下であれば基準範囲ですが、それより高い場合は、慢性肝炎やアルコール性肝障害、胆汁うっ滞、薬物性肝障害の疑いがあります。

HDLコレステロールの数値異常

HDLコレステロールとは、いわゆる善玉コレステロールです。血中の悪玉コレステロールを回収する作用があります。基準範囲は40~119mg/dLで、これより低い場合は動脈硬化や脂質代謝異常の疑いがあります。

LDLコレステロールの数値異常

LDLコレステロールは、いわゆる悪玉コレステロールです。基準範囲は60~119mg/dLで、これより高い場合は動脈硬化の進行や脳梗塞、心筋梗塞のリスクが高いことを示します。

TG(中性脂肪)の数値異常

基準範囲は30~149mg/dLで、これより高ければ動脈硬化の進行が、低ければ低栄養などの疑いがあります。

FBG(血糖値)の数値異常

血中のブドウ糖が、エネルギー源として変換されているかどうかの基準となる数値です。基準範囲は99mg/dL以下で、これより高い場合は糖尿病やホルモン異常、あるいは膵臓癌の疑いがあります。

HbA1Cの数値異常

HbA1Cは直近2ヵ月あまりの血糖の平均値を示す数値です。基準範囲は5.5%以下ですが、HbA1Cが6.5%以上かつ空腹時血糖(FBG)が126mg/dLの場合は糖尿病と診断されます。

検査結果で「再検査」や「要精密検査」と出たら

検査結果で「再検査」や「要精密検査」と出たら、病院で詳しい検査をする必要があります。たまたま一時的に悪い数値が出てしまっただけの可能性もありますが、何らかの病気が潜んでいる可能性があるため、確認の意味でも早期に病院を受診することが望ましいです。

おわりに:血液検査では身体のさまざまな情報がわかる

いかがでしょうか。血液検査で得られる数値には、肝機能の状態や血糖値などたくさんの情報が詰まっています。いずれかの数値で異常が出たり、「再検査」と出たりした場合は、念のため病院を受診することをおすすめします。

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