盲腸(急性虫垂炎)の症状 早期発見のために覚えておこう

2017/10/25

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

突然お腹に激痛が走ることで知られる「盲腸(急性虫垂炎)」。ただの腹痛と混同しないためには、初期症状や特徴を正確に知っておくことが大切です。以降で症状について詳しく解説していきます。

盲腸(急性虫垂炎)とは


盲腸と虫垂は混同されることがありますが、解剖学的には異なる臓器です。盲腸とは結腸と直腸を含めた、いわゆる大腸の入口にあたる臓器のことを言います。場所的には右下腹部で小腸に接続しており、大腸の一部として水分の吸収などの役割をになっています。

これに対して、虫垂は盲腸の下側より突き出た紐状の臓器で、胃腸の免疫機能維持に関係していると見られています。虫垂はとても小さな臓器なので、わずかな異物が詰まるだけでも炎症を発症しやすい傾向があります。この虫垂に異物や糞石などが詰まり、虫垂内の閉塞が生じて二次的に細菌感染が起こった化膿性の炎症のことを「盲腸」(急性虫垂炎)といいます。

初期症状と症状の変化


盲腸を起こすと、初期症状として腹痛が起こります。腹痛は上腹部やおへそ周辺で突然始まり、時間経過に従って右下の腹部(回盲部)に移っていきます。典型的な症状としては胃のあたりに痛みが初発し、次第に右下腹部に移動していくケースが多く見られます。

なお、強い腹痛を感じるのが一般的ですが。子供や高齢者では痛みが軽い場合があります。ほかにも、腹痛とともに嘔吐や吐き気、ガス、便秘などの便通異常、あるいは発熱がみられることもあります。このように患者によって症状が異なったり、腹痛以外の症状を伴ったりすることがあるので注意が必要です。

腹膜炎に注意!


盲腸を未治療のまま放置すると、炎症が悪化し、大量の膿が患部に溜め込まれた状態になることがあります。これを膿瘍といいます。

盲腸は細菌感染によって発症する病気のため、放置すると細菌は増殖の一途を辿ります。するとそれに伴い膿も増加し、その後は虫垂の内壁が破綻して穴があき、腹腔内に細菌で汚染された膿が撒き散らされることになります。その結果、腸や肝臓を包む腹膜に広汎な炎症が発生し、腹部全体に強い痛みや発熱などの症状が見られるようになります。これが急性腹膜炎です。

なお、急性腹膜炎になると細菌の感染範囲が広範囲になり、敗血症になる危険性も出てきます。そうすると命を失う可能性があるので、盲腸はわかり次第すぐ治療を行うことが大切です。

治療方法は?


盲腸の治療では、絶食と抗菌薬による保存的治療と、炎症の原因である虫垂組織自体を切除する手術療法とがあります。ごく初期の虫垂炎の場合は保存的治療で改善することもありますが、炎症が強く、腹膜炎のリスクが懸念される場合には手術が選択されます。

手術には腹腔鏡手術と開腹手術があります。腹腔鏡手術は傷が目立たないので整容的に優れており、傷の痛みが少ないために回復も早く、入院期間も4~5日と短いというメリットがあります。これに対し、開腹手術は傷が大きく痛みも強いため、入院期間が長くなる傾向にありますが、組織の炎症が強く腹膜炎の可能性があるときや穿孔のリスクが高いときは、この開腹手術が必要になります。

そのほか重症例では、お腹の中にたまった膿を抜くドレーンという管を留置し、排膿を促す処置をとられることがあります。

おわりに:重篤な症状につながるリスクもある盲腸。右下腹部へ移動する腹痛に要注意!

激しい痛みを伴う腹痛だけでなく、腹痛が右下の腹部へ移動していくようであれば、盲腸の可能性があります。盲腸は放置すると腹膜炎に発展し、敗血症などの重篤な症状を招く危険性のある病気です。「もしかして?」と思ったらすぐに病院を受診しましょう。

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