演技性人格障害の人の特徴と接し方や治し方のコツとは?

2017/10/25 記事改定日: 2019/10/9
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

周囲から注目を集めるために芝居がかった行動をとったり、嘘をついたりしてしまう人格障害の一種・「演技性人格障害」。この演技性人格障害を発症する原因は何なのでしょうか?改善するにはどうすればいいのでしょうか?

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演技性人格障害の人って、どんな特徴があるの?

演技性人格障害とは、他人の関心を集めたり、注目を浴びたりすることに過剰な関心を抱く人格障害です。
それが高じて、自分の立場を損なったり、世間の信用をなくしてしまったりすることもあります。

うつ病や不安障害を併発するケースが多く、明るく魅力的な外観や行動と対照的に、突然ふさぎ込んだり、虚無感に襲われたりする場合があります。

自己愛性人格障害が「常に人から見られている」「嫉妬されている」と思い込んで神経質になるのとは対照的に、演技性人格障害の場合、常に不特定多数の誰かから注目されている状態を求めます。
これらの原因となるのは、孤独への不安や抑圧された性欲などです。

この病気の発生割合は人口の2~3%で女性の方が割合が高いとされ、とくに10代から20代にかけての発症が多いといわれています。

特徴・症状

演技性人格障害の人は、自らの容姿や性的魅力が他人の目にどう映るかを非常に気にし、その評価が自分の本来の価値だと思い込んでいます。

自分への注目を集めるために華やかなメイクや派手な服装を好み、病名どおり「芝居がかった行動」を取ったり、すぐに興奮したり、物事に過剰反応したりすることが特徴的といえるでしょう。

また、もうひとつの特徴は虚言癖です。これは、他人を自分にひきつけておくために嘘が欠かせないためです。

どんな人が演技性人格障害とされる?

演技的な振る舞いや周囲からの関心を集めたがる行為自体が問題とは言い切れませんが、本人や周囲が困っていて、上記で紹介した「特徴的な症状や行動」が常に認められるかが、演技性人格障害の診断のポイントとなります。

また病気の判断基準として、次の3点が重要です。

  • 内面の空虚さに本人が強い苦痛を感じている
  • うつ、不眠、物質依存などを招いている
  • 本人の行動により対人関係をはじめとしたトラブルがおきている

演技性人格障害の治療方法は?

演技性人格障害の治療は、精神療法や薬物療法が中心となります。

精神療法

原因となっている孤独への不安や隠れた性欲を自覚させ、自ら克服できるように導いていきます。患者本人が自分の心の中を整理できていないケースが多いため、内在している自分の本心を浮かび上がらせることが、症状を軽減させるうえでの重要な要素となります。

なお、ご家族など周囲の方には、演技性人格障害が芝居ではなく病気であり、本人が困難な状況に置かれていることをよく理解するとともに、治療に忍耐強く協力することが求められます。

薬物療法

薬物療法が必要かどうかは、症状によって異なります。
たとえば気分の落ち込みが目立つ場合は抗うつ薬、強い不安感に対しては抗不安薬、また錯覚や現実喪失感が見られるときには抗精神病薬など、症状にあわせた治療薬が選択されます。

演技性人格障害の人と接するときの注意点

演技性人格障害の人と接するときは、次の4点が大事です。

気づかないふりをすること
演技だとわかっても、それを暴きたてることは本人の人格否定となるため、あえて看過することです。
演技に巻き込まれないこと
一定の距離を置き、プライベートには踏み込まず、相手に同調しすぎない冷静さが大切です。
傍観すること
自分が振り回されないよう、理性を保ちましょう。
内面をほめること
外見やファッション、性的な魅力は目に留まりやすいため、多くの称賛はこれらに集まります。しかし外面ではなく、人としての美点、たとえば、親切や思いやり、感性や教養といった「人として尊敬できる」長所を認めてあげることは効果的です。
演技性人格障害とは、基本的に自信のない内面を覆い隠すための演技なので、それをカバーするような発言が本人の認識を改めさせ、演技の必要を薄れさせるからです。

本人ができる対処法はある?

演技性人格障害の人は自身の病気や感情・行動の異常に気付いていないことが多く、なぜか幼少時から対人関係を上手く築くことができず悩みを抱えている人も多いです。

自分ではっきり原因が分からないものの、社会生活がうまくいかないという自覚があるようなら、臨床心理士などのカウンセリングを受けて原因を探るのも一つの方法です。
また、気分の落ち込みや不眠などの症状を伴う時は、放っておかず心療内科や精神科で適切な診察・治療を受けるようにしましょう。

病気とはっきり分かっている人は、日頃から「他人の目を気にしない」よう心がけることが大切です。また、周囲の人に必要以上関心を持たず、ある程度の距離を持って接するようにしましょう。もし注目を集められなくてイライラしたときなどは、その場を離れて気分転換するのもよい方法といえるでしょう。

おわりに:演技性人格障害の改善に大切なのは、本人の自覚の冷静な対処

演技性人格障害は、自分の真の感情に気付いていないケースが大半なので、その感情を明らかにし、演技や虚言癖を治療していくことが重要です。周囲は患者の言動に振り回されたり力づくで修正したりせず、根気よく治療の過程を見守ることが求められます。

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