演技性人格障害とは ― 過大な自己顕示欲が原因?

2017/10/25

山本 康博 先生

記事監修医師

東大医学部卒、独立行政法人国立病院機構東京医療センター

山本 康博 先生

周囲から注目を集めるために芝居がかった行動をとったり、嘘をついたりしてしまう人格障害の一種・「演技性人格障害」。この演技性人格障害を発症する原因は何なのでしょうか?治療するにはどうすればいいのでしょうか?

演技性人格障害とはどんな人格障害か?


演技性人格障害とは、他人の関心を集めたり注目を浴びたりする事に過剰な関心を抱く人格障害です。それが高じて、自分の立場を損なったり、世間の信用をなくしてしまったりすることもあります。うつ病や不安障害を併発するケースが多く、明るく魅力的な外観や行動と対照的に、突然ふさぎ込んだり、虚無感に襲われたりする場合があります。

自己愛性人格障害が「常に人から見られている」「嫉妬されている」と思い込んで神経質になるのと対照的に、演技性人格障害の場合、常に不特定多数の誰かから注目されている状態を欲します。原因として、孤独への不安や抑圧された性欲などが挙げられます。

この病気の発生割合は人口の2~3%で、女性の方が割合が高いとされます。特に10代から20代にかけての発症が顕著です。

どんな症状が現れる?


演技性人格障害の患者は、自らの容姿や性的魅力が他人の目にどう映るかを非常に気にするのと同時に、それが自分の本来の価値だと思い込みます。自分への注目を集めるために、華美なメイクや派手な服装といった身体的外見を好みます。病名どおり、芝居がかった行動を取ったり、すぐに興奮したり、物事に過剰反応したりする症状が特徴的です。

また、もう一つの特徴は虚言癖です。これは、他人を自分にひきつけておくために嘘が不可欠となるからです。

演技的な振る舞いや周囲からの関心を集めたがる行為自体が問題とは言い切れませんが、本人もしくは周囲が困っているかどうか、そして上述した特徴が常時認められるものかどうか、が演技性人格障害の診断のポイントとなります。

また病気の判断基準として、次の3点が重要です。まず「内面の空虚さに本人が強い苦痛を感じていること」、「うつ、不眠、物質依存などを招いていること」、「本人の行動により対人関係をはじめとしたトラブルがおきていること」です。

治療方法


演技性人格障害の治療は、精神療法や薬物療法が中心となります。

精神療法では、原因となっている孤独への不安や隠れた性欲を自覚させ、自ら克服できるように導いていきます。患者本人が自分の心の中を整理できていないケースが多いため、内在している自分の本心を浮かび上がらせることが、症状を軽減させる上での重要な要素となります。なお、ご家族など周囲の方には、演技性人格障害が芝居ではなく病気であり、患者本人が困難な状況に置かれていることをよく理解するとともに、治療に忍耐強く協力することが求められます。

一方の薬物療法が必要か否かは、個人個人の症状によります。たとえば気分の落ち込みが目立つ場合は抗うつ薬、強い不安感に対しては抗不安薬、また錯覚や現実喪失感が見られるときには抗精神病薬など、状況に応じて治療薬が選択されます。

接するときの注意点


演技性人格障害の人と接するときは、次の4点が大事です。

まずは「気づかないふりをすること」です。演技だとわかっても、それを暴きたてることは本人の人格否定となるため、あえて看過することです。

次に大事なのは、「演技に巻き込まれないこと」です。一定の距離を置き、プライベートには踏み込まず、相手に同調しすぎない冷静さが大切です。

また、「傍観すること」も重要です。自分が振り回されないよう、理性を保ちましょう。

さらに「内面を褒めること」も意味を持ちます。外見やファッション、性的な魅力が目に留まりやすいことから、多くの称賛はそこに集まります。しかし外面ではなく、人としての美点、たとえば、親切や思いやり、感性や教養といった、「人として尊敬できる」長所を認めてあげることは効果的です。演技性人格障害とは、基本的に自信のない内面を覆い隠すための演技なので、それをカバーするような発言が本人の認識を改めさせ、演技の必要を薄れさせるからです。

おわりに:症状改善は自身で症状に気づくことが重要。周囲は振り回されないように冷静な対処を

演技性人格障害は、自分の真の感情に気付いていないケースが大半なので、その感情を明らかにし、演技や虚言癖を治療していくことが重要です。周囲は患者の言動に振り回されたり力づくで修正したりせず、根気よく治療の過程を見守ることが求められます。

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