パーキンソン病の姿勢反射障害の原因とは?どうやって改善する?

2017/10/24 記事改定日: 2018/7/9
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

姿勢反射障害とはパーキンソン病の典型的な4症状のひとつであり、歩き出すと止まれなくなったり、方向転換ができなくなるなどの症状が現れることです。パーキンソン病の症状や原因について、姿勢反射障害を中心にお話していきます。

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姿勢反射障害とは ― パーキンソン病の4つの典型的症状

全国で12万人~15万人いるといわれるパーキンソン病には、4つの典型的な症状(ふるえ、こわばり、動作の緩慢、姿勢反射障害)があります。この中の姿勢反射障害とは、体を前方や後方に押された際に姿勢を立て直すことができなくなり、前方や後方に突進したり転倒したりする症状です。歩き出すと止まれない、方向転換できない、前かがみになるなど、歩行自体にも大きな影響が生じます。

言い換えれば、人は通常、体が傾くと重心を移動してバランスを取り(姿勢反射)、それでも耐えきれないときは、足を踏み出して転倒を防ぎます(立ち直り反射)。この機能が働かず転倒しやすくなった状態が姿勢反射障害です。

パーキンソン病の原因と発症年齢

なおパーキンソン病を発症しやすい年齢は50~70歳位で、原因は不明ですが、加齢、細胞の酸化、遺伝子、環境因子などが総合的に作用すると考えられています。姿勢反射障害はパーキンソン病にかかってすぐ現れるわけではありません。他の症状に比べて遅れて現れることが特徴であり、個人差はありますが発症後数年以上してから症状が現れることもあります。

姿勢反射障害になると歩行時にどんな状態になる?

パーキンソン病が進行すると、立っているとき背中を丸めた前かがみの姿勢になります。
これは背中の筋肉が強くお腹の筋肉が弱くなりバランスが悪くなることで、膝を少し曲げた状態で前かがみの姿勢になって崩れたバランスを修正しなければ立てなくなってしまうからです。

姿勢反射障害になると姿勢のバランスが取りづらくなり、少し何かにぶつかったり押されたりしただけで、よろけてしまうようになります。その他、小股で摺り足をしながら歩くようになる、なかなか足が前に出ない、よく転ぶといった症状も見られます。

普段の生活でもひざを曲げて身体が反射的にバランスを保とうとしたり、足元がおぼつかない状態になりやすくなります。これにより何もないところでつまずいたり、転倒したりということが多くなります。

座位(座っているとき)はどうなる?

姿勢反射障害が生じた場合には、骨盤が後ろに傾いて、座っている状態でも前のめりや猫背の体勢になります。このため、介助や補助がないと座った状態をキープすることができず、前のめりに椅子からの転落や転倒することが多くなります。

姿勢反射障害の原因は?どこに問題があるの?

パーキンソン病は、黒質細胞が分泌するドーパミンが極端に減少することで神経細胞のバランスが崩れ、脳からの運動信号の伝達に異常をきたすことが原因と判明しています。

黒質とは、中脳の一部を占める神経核であり、ドーパミンやアセチルコリンなどの神経物質を分泌する器官です。この黒質で異常が生じ、ドーパミン作動性神経物質が減少すると、黒質からの情報伝達経路がうまく機能せず、体全体のバランスが保てなくなります。その結果、動作の遅延や、姿勢・歩行障害が起こってしまうのです。

ドーパミンや黒質細胞が減少する理由は未解明ですが、生活環境、食生活、遺伝、活性酸素による酸化的ストレス、ミトコンドリア障害などが要因と考えられています。

検査と治療について

神経内科が専門科となります。
病院では、患者に軽く足を開いて立ってもらい「足を出さず踏みこたえるよう、無理なら足を出して踏みとどまるように」と説明したうえで、後方(前方、側方)に体を押すなどの検査が行われるでしょう。踏みこたえられるか、1、2歩踏み出す程度で踏みとどまることができれば正常であり、押された方向に小走りになり倒れそうになったり、足を一歩も出せず棒のようになって倒れる場合に姿勢反射障害があると判断されます。

なお姿勢反射障害は、パーキンソン病の一症状であるため、基本的にパーキンソン病の治療法に基づくことになりますが、この病気の治療法は未だ確立していません。基本的にはレボドパ製剤などの薬物療法が中心であり、医師と相談しながら症状にあわせた治療が行われます。また、全身の機能を維持するためにもリハビリ治療が大切です。

姿勢反射障害のリハビリ方法とは?

パーキンソン病では、骨盤が後ろに傾いて体の重心が後ろ側にズレることで、前傾姿勢になりやすくなります。
このため、姿勢反射障害の発症・悪化を予防するためには腹筋や背中、骨盤回りの筋肉を鍛えたり、股関節周りの柔軟性を維持するためのストレッチなどが必要となります。

姿勢反射障害が生じていない人や軽度な人では、転倒に周囲しながら大股でのウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。また、転倒の恐れのある人は、介助を得ながら起き上がりや立ち上がりの訓練をしたり、ストレッチなどのリハビリを行うことが一般的です。

おわりに:パーキンソン病は根治できない病気。リハビリを続け運動機能を維持しよう

パーキンソン病と診断されたら、病気の初期から軽い運動を習慣づけることです。リハビリテーション科などで専門家から指導を受けるのも良い方法でしょう。パーキンソン病は徐々に進行をたどる病気ですが、症状をコントロールしつつ前向きにリハビリを続け運動機能を維持することが大切です。医師の指導を守り、根気よく治療・リハビリを続けましょう。

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