記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/25
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
国の指定難病に定められている「シャイ・ドレーガー症候群」。一度もこの病名を聞いたことがないという方もきっと多いかと思います。以降で、詳しい症状や治療法などを解説していきます。
シャイ・ドレーガー症候群とは、脳と脊髄の自律神経系を中心に神経が変性する疾患です。脳の細胞に同じ物質(アルファ シヌクレイン)がたまるという点では、小脳症状が目立つオリーブ橋小脳萎縮症や、パーキンソン症状が目立つ線条体黒質変性症と同一であり、それらと共に多系統委縮症(小脳や脳幹などが萎縮する原因不明の疾患)に含まれる病気です。
シャイ・ドレーガー症候群の割合は多系統萎縮症の約16%といわれており、患者数は11733人(平成24年度医療受給者証保持者数)とまれな病気です。発病年齢は50歳台の方に多く、男性の発症率は女性の約3倍といわれています。今のところ原因不明ですが、遺伝性はないとされます。
最初の症状は、立った時に血圧が低下して立ちくらみや失神を引き起こす起立性低血圧、排尿、排便、発汗障害といった自律神経障害などです。男性では勃起不全も起こることがあります。
その後2、3年経つと、両手の筋肉がこわばり、動きにくくなって震えたりするパーキンソン症状や、足がふらついたり手がうまく使えなくなる小脳症状が出てきます。
また、睡眠時の喉から出るような激しいいびきも特徴です。これは、声帯を動かす迷走神経に障害が起こり、声帯がうまく開かなくなるために起きる症状です。進行すると、10数秒~1,2分程度、呼吸が中断する睡眠時無呼吸が出てくるため注意が必要です。
シャイ・ドレーガー症候群の病気の進行を止める、発病を予防するといった根治的治療法は未だ確立しておらず、対症療法がおもな治療となります。起立性低血圧、排尿障害、パーキンソニズムといった諸症状についてはいろいろな薬が開発されています。例えば起立性低血圧にはアメジニウム、ミドドリン、ドロキシドパ、パーキンソン症状にはL-ドーパ、ブロモクリプチン、小脳症状にはヒルトニンといった薬がそれぞれ有効です。適切に用いることで症状を抑え、生活の質の向上が図られます。
日常生活をおくる上で、立ちくらみによる失神や転倒の起きやすい状況に注意することも大切です。また排尿障害、特に尿失禁は、社会生活をおくるうえで大きな課題となります。排尿障害の薬が効かない場合は、時間を定めてカテーテルで自己導尿することもあります。排尿管理については泌尿器科医師も含めて専門医の助言を得ることが大切です。また、身体機能を維持する上では適度な運動も欠かせないものなので、定期的に体を動かすようにしましょう。
シャイ・ドレーガー症候群に対する根本的な治療法はまだ確立されていないものの、適宜対症療法を行うことによって、ほぼ問題なく日常生活を送ることは可能になってきています。担当医の指示に従い、適切な治療を続けましょう。