破傷風はどうやって治療していくの?

2017/10/25 記事改定日: 2019/6/3
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

1950年、日本で1500名を超える死亡者を出したこともある「破傷風」。致死率の高い感染症として知られていますが、発症するとどんな症状が出るのでしょうか?もし発症してしまった場合、どのように治療をしていくのでしょうか?

破傷風とは

破傷風とは、破傷風菌の神経毒素が体内に侵入することによって発症する病気です。破傷風菌は、世界中の土壌の中に存在しており、特に動物の糞便で汚染されている土の中に多いと言われています。この土の中にある神経毒素が、怪我をしている部分などを通じて体内に侵入することで発症するので、人から人への感染は起こりません。

1950年時点の日本では、破傷風の報告患者数は1,915人、そのうち死亡者数は1,558人と死亡率の高い感染症でしたが、ワクチン普及後、患者数は激減しています。ただし、ワクチンを定期接種する新生児や若年層の発症は極めてまれなものの、接種の非対象者である30歳以降の成人が発症するケースはみられるうえ、いまだに死亡率は20~50%と高いため今後も注意が必要です。

症状

破傷風は感染後、3~21日程度の潜伏期間を経て、「第一期」「第二期」「第三期」「第四期」の4段階ごとにさまざまな局所症状や全身症状を生じます。

まず第一期では、口を開けにくくなる症状があらわれ、食事が困難になります。首筋が張り、寝汗や歯ぎしりといった症状もでます。第二期に突入すると、さらに口が開かなくなり、顔の筋緊張が強くなります。額にしわが出たり、口が横に開いてまるで苦笑してみえるようになります。

そして第三期になると、頚部や背筋の硬着が起こり始め、発作的な強直性痙攣がみられるようになります。この第三期は腱反射などもみられ、死亡率の高い要注意の時期でもあります。その後第四期になると、全身に起こる痙攣はみられなくなりますが、筋の硬直や腱反射などの一部の反応は残ったままの状態になります。症状は次第に回復していきます。

破傷風は、どうやって治療するの?

破傷風の治療では、まず抗破傷風ヒト免疫グロブリン(TIG)と抗生物質の投与が行われます。TIGは破傷風毒素に対する特異的な治療薬で、まだ組織に結合していない毒素を中和することができますが、すでに結合している毒素は中和できないので、できるだけ早くこの治療を開始することでが重要です。早期の治療開始が、重症化を防ぎます。

上記の治療とともに対症療法も同時に行われます。
痙攣のある人に対しては、抗痙攣剤を投与し、呼吸不全がみられたら呼吸や血圧を管理できる集中治療室で入院治療をしていきます。

なお、破傷風は発症・回復しても十分免疫を獲得できるわけではありません。
回復した後も再感染や再発症の予防のために破傷風の予防接種をすることが大切です。

予防接種

現在、破傷風の定期予防接種は若齢者を対象にして行われています。生後3カ月~90カ月未満の子供にはDTPワクチンを4回、11歳~13 歳未満の子供に対してはDTワクチンの接種が推奨されています。

定期予防接種の非対象者については、沈降破傷風トキソイドの初回接種を4~8週間隔で2回、その6~18カ月に追加接種を1 回の計3回行うことが推奨されています。

なお、これら破傷風ワクチンの効力は約10年とされており、12歳の頃接種したのであれば、20代前半まで免疫を維持することができます。ただ、それ以降は抗体がなくなっていくので、海外渡航のご予定がある方は10年ごとに再び接種をすることをおすすめします。

予後と後遺症について

破傷風の予後は創部汚染の程度によって異なり、一般的には創部の汚染が強いほど予後は悪く、死亡率が高いと考えられています。日本では一年間に約40人の患者が発生し、その30%が死に至るとされています。また、新生児は特に致死率が高く、60~90%は発症後10日以内に命を落とします。

一方、破傷風は救命できたとしても、運動麻痺などの神経障害や筋肉の拘縮などの後遺症を残すことがあります。また、発症時に呼吸困難となり、気管切開となった場合には治癒後も呼吸管理が必要となるケースも少なくあります。

おわりに:現代でも死亡の可能性がある破傷風。予防接種こそが最大の対策

破傷風は強直性痙攣を特徴とし、最悪の場合は呼吸困難の状態に陥って窒息死することもあります。発症しても早期にTIGによる治療を行うことで重症化を最小限に留めることはできますが、破傷風はいまだに致死率の高い感染症のため、発症しないよう事前の予防接種が望まれます。

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