腱鞘炎を発症するのはなぜ? 再発を防ぐために何ができる?

2017/10/31

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

腱と腱鞘との間に炎症が起こり、指や手首などに強い痛みが走る「腱鞘炎」。痛みのあまり、仕事もままならなくなる厄介な症状ですが、この腱鞘炎は何が原因で引き起こされるのでしょうか?再発を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

腱鞘炎とは

腱鞘炎を発症すると、主に利き手の親指や人差し指の付け根といった、日常よく使う部位に慢性的な強い痛みを感じるようになります。そのため症状が進行して常に痛みが生じてしまうと、食事の折に箸を使うことすらも困難になることもあります。具体的には、人差し指と親指に力を入れて行うガスの元栓の開け閉めやペットボトルのキャップを回す折に激痛が走るなど、特に物を掴んで捻るといった動作全般が、強い痛みによってスムーズにできなくなるのです。

腱鞘炎を発症すると、何より手指を使う職業に携わっている人は、仕事を休むことを余儀なくされます。完全休養が難しい人の場合、無理をして手指を酷使し続けることで慢性化を招いてしまう恐れもあり、手指をよく使う人にとっては、厄介な職業病の一つと言えます。

腱鞘炎を発症する原因

腱鞘炎は、手指の同じ個所で同じ動作を繰り返し行うことが原因で発症します。ペンを使って同じ方向に手を何度も動かして細かい斜線を多く描き込むなど、細密な絵を描く漫画家やイラストレーター、パソコン等の同じキーを何度も連打するタイプの作業などでも起こりやすくなります。

書き物をする人は主に利き手の親指と人差し指の付け根から手首にかけて痛みが出やすく、楽器の演奏家の場合は、鍵盤を連打したり、弦を強く抑えたりするときに使う小指や薬指に激痛が生じるようになることがあります。手指は日常よく使うものですが、同じ動作、同じ作業を繰り返すということが引き金になって激痛が走るようになり、手指に蓄積している疲労によって治りが悪くなり、慢性的な痛みとして定着しやすくなってしまいます。

腱鞘炎はどうやって治療するのか

腱鞘炎になってしまったら、痛みの出ている箇所をなるべく動かさないようにして、安静を心掛けることが最も重要となります。痛みをこらえて原因となった作業を繰り返すことで症状が悪化し、慢性化する恐れがあるからです。いったん慢性化してしまうと、一時的に良くなっても再発しやすくなってしまいます。

治療では、患部を固定するテーピングや、手指に巻いて動きを制限するコルセットによって悪化を防ぎ、マッサージ等を行って血行を促します。血流やリンパの流れを助けることで治癒を早めるタイプのテーピング法もありますが、専門家の手で正しい位置に貼ってもらうことが重要となります。いずれにしても、痛みが強い場合は自己判断でなく、医療機関を受診することが大切です。

腱鞘炎の再発を予防するためにできること

腱鞘炎は、意外にも就寝中に悪化することが少なくありません。眠っている間に無意識に手指を動かしたり、寝返りを打った時に身体の下に敷いてしまったりして、起床時に最も痛みが強くなっていることもあります。それを防ぐためにも、就寝時にも付けられるサポーターや、貼ってしばらくは入浴時などにもそのまま付けていられるテーピングで固定しておくほうが安心です。

痛みが治まった後も、どうしても同じ作業を繰り返す必要がある職業の人は、特に忙しい時にはあらかじめサポーターをしておくことで再発を防ぐことができます。血行不良も原因の一つですので、日頃固まりがちな筋肉をほぐすためにも、作業の合間に適度なストレッチを行うことも重要です。痛みが出てしまっている時は、とにかく安静第一です。

おわりに:職種によっては再発しやすい腱鞘炎。患部の負担を減らすセルフケアを

指や手首の酷使によって発症する腱鞘炎。職種によっては、再発しやすくなってしまうこともあります。日頃から患部にサポーターをしておくなど、予防に努めましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

治療(464) 原因(608) 症状(556) 腱鞘炎(11)