記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
めまいや難聴、耳閉感などが起こるメニエール病は、初期のうちに治療を始めれば、ある程度回復が見込める病気です。ただ、どのような検査をするのだろう・・・と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、メニエール病の検査でどのようなことをするかを解説します。病院の検査に対する不安解消に活用していただければと思います。
メニエール病は、内耳からくるめまいや耳鳴り、難聴、吐き気といった症状を引き起こす病気です。
私たちの耳の奥には、カタツムリのような形をした「三半規管」という器官があります。この三半規管の中にはリンパ液が入っており、この液体のおかげで私たちは平衡感覚を保つことができます。
しかし、内耳の中にある三半規管の中に液体(リンパ液)が増え、内耳圧が上がると、平衡感覚を保つことができなくなります(この状態を「内リンパ水腫」と呼んでいます)。内リンパ水腫によって三半規管が水ぶくれになった状態になることで内耳の内圧が上がり、吐き気やめまいの発作というメニエール病の症状を引き起こします。
内耳圧が上がる原因はまだ明らかになっていませんが、リンパ液が過剰に作られてしまう説や、リンパ液を吸収する場所(内リンパ嚢)がつまってしまうためではないかという説、もしくはその両方が関係しているのではないかなど、さまざまな説があります。
メニエール病発症のメカニズムはまだ解明されていませんが、先進国に多く、働き盛りの30~50代に多い病気であることから、ストレスが関係しているのではないかと考えられています。そのほかにも、ホルモンバランスや過労、アレルギーや睡眠不足が起因しているのではないかと考えられており、もともと内耳が弱い人がこれらの要因と重なることで起こるという説も有力です。
メニエール病の検査や治療は、主として耳鼻科で行います。ただ、めまいを引き起こす病気は、メニエール病以外にもさまざまあるため、メニエール病と確定するまでに脳神経科や神経内科、内科などで何度か検査を受けることがあるかもしれません。
検査では、平衡感覚と聴力を重点的に調べます。
平衡機能検査は、目を閉じて字を書いたり、目を閉じてたまま足踏みを行ったり、片足立ちで立ったりて平衡感覚を調べます。また、メニエール病の初期症状に「低音域の音が聞き取りづらくなる」という症状があるため、メニエール病に特有の難聴がみられるかどうかの確認も行われます。
そのほか、メニエール病による難聴にはグリセロールという薬が有効であることがわかっているため、グリセロールを内服して難聴が改善するかどうかの検査(グリセロールテスト)を行うこともあります。
また、メニエール病を発症すると黒目が小刻みに震える症状(眼振)がみられます。眼振の有無を確認するために、フレンチェル眼鏡という機材を使って黒目の振動を調べる検査(眼振検査)が行われることもあります。もし、耳鳴りがひどい状態が続いている場合、聴神経腫瘍といった別の病気の可能性もあるため、MRI検査を行うこともあります。
メニエール病の症状は、初期、活動期、間歇期[かんけつき]、慢性期に分けることができます。
初期は耳の閉塞感や低音性難聴、耳鳴りから始まります。常にこの症状があるわけではなく、突発的にこれらの症状が起こり、しばらくすると治ります。このため、そのまま放置してしまう人が多いです。ただ、初期の段階でも急に激しいめまいを起こすこともあるため、注意が必要です。
その後、めまいなどの発作を起こす時期(活動期)と、何も起こらない時期(間歇期)が交互にやってくるようになります。発作は毎日ある人、月に1回の人など個人差がありますが、数か月から一年ほどこの状態が続き、その後は季節の変わり目など数か月に一度発作が起こるようになります。
活動期と間歇期(症状が無い時期)を繰り返しながら、めまいの発作は軽減していく一方で、難聴や耳鳴りが悪化してしまう慢性期に入っていきます。
このように、メニエール病の症状は耳鳴りや耳の閉そく感から始まり、やがてひどいめまいを引き起こします。初期の頃は、症状が治まっても元の状態に戻ることが多いため、放置する人も多少なくありませんが、早期のうちに治療をすることが症状を改善するためには重要です。耳鳴りや難聴、めまいといったサインを見逃さないようにしましょう。
メニエール病を治すためには、耳鳴りや耳の閉そく感といった初期症状を見逃さないことが大切です。もし、こうした症状が出たときは、すぐに病院を受診しましょう。また、初期の頃はしばらくすると発作が治まることも少なくありませんが、メニエール病の進行が止まったわけではありません。たとえ症状が落ち着いていたとしても、念のため病院で検査してもらいましょう。