記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/11/7 記事改定日: 2018/3/20
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊娠初期の妊婦さんがよく経験する症状のひとつに、「頻尿」があります。ただ、そもそもなぜ妊娠初期になると頻尿になるのでしょうか?対処法と併せてお伝えしていきます。
妊娠初期に頻尿になる要素として、膀胱の圧迫があります。子宮は膀胱の裏にあるため、段々と子宮が大きくなることで物理的に膀胱が圧迫され、頻尿が起こるとされています。妊娠中期に入ると、子宮の位置が上がるために圧迫が終わり、頻尿も徐々に解消されていきます。
また、妊娠初期の段階では、ホルモンの分泌による影響もあります。特に黄体ホルモンは膀胱を緩める働きがあり、それが妊娠初期の頻尿につながります。他には腎機能の活性化も頻尿の原因として挙げられます。血流が増すことにより、それだけ腎機能の働きも高まり、それで尿量が増すのです。これらが複合的に絡み合うことで、結果として頻尿を引き起こすこととなります。
頻尿とは、朝起きてから夜寝るまでに8回以上尿意を感じてトイレに行くことです。しかし、頻尿を明確に定義する回数はなく、8回以下であっても本人が尿の回数が多くて日常生活で困ったことがある状態は頻尿であるといえます。
頻尿の方は水分の摂取を控えて、できるだけトイレに行かないようにするあまりに脱水症状になりやすく、何かとバランスを崩しかねないため注意が必要です。
また、尿意に敏感になるあまり、トイレが気になって外出が億劫になることもあり、精神的にも大きなダメージを及ぼすことがあります。
妊娠中の頻尿の現れ方には個人差がありますが、一般的には妊娠初期に始まり、5か月以降の中期には一旦治まり、8か月以降の後期に再び頻尿になるケースが多いです。
膀胱は伸縮性のある臓器であり、尿が溜まることで膨らみますが、ある一定量の尿が溜まって膨らむと私たちは尿意を感じて排尿を行います。尿意を感じるためには膀胱が膨らむことの他に、膀胱が圧迫されることによっても尿意をもよおすことがあります。
子宮は膀胱と非常に近い位置にあるので、妊娠によって大きくなった子宮は膀胱を圧迫することがあります。特に妊娠初期から妊娠4か月頃までは、子宮の位置は低く、膀胱を圧迫しやすくなります。妊娠5か月頃から8か月の間は一旦子宮の位置が上に持ち上げられ、膀胱への圧迫がなくなりますから頻尿を感じなくなる人もいるでしょう。
その後、妊娠8か月頃になると出産に備えて子宮が下がり再び膀胱を圧迫するため、頻尿が再開する人が多くなるといわれています。
カフェインの入っている飲み物をできるだけ避けることをおすすめします。カフェインには利尿作用があります。そのため、コーヒーなどを飲むとそれだけトイレに行きやすくなってしまいます。近年、カフェインの入っていないコーヒーなどもありますが、そちらもできるだけ避けるようにしてください。そして、冷えを感じると尿意を感じることもあるため、冷やさないようにしましょう。
また、妊娠初期に頻尿になったら、我慢せずにトイレに行って用を足すようにしてください。人によっては、何度もトイレに行くのは嫌だからと行くのを我慢する人もいますが、それにより膀胱炎などの症状を誘発するおそれがあります。それを避けるためにも、面倒であったとしてもトイレに行くことを徹底するようにしましょう。
妊娠中は夜間頻尿に悩まされる人が多いものです。横になった状態では、大きくなった子宮が膀胱を圧迫しやすく、寝る前に多量の水分を飲んだわけではないのに数時間おきにトイレに起きるという人もいます。
しかし、このような夜間頻尿は妊娠による体の変化が原因であり、うまく付き合っていくしかない症状です。特に妊娠後期は胎動も激しくなり、夜間頻尿も加わって寝不足に悩まされることも多くなるでしょう。おススメの対処法としては、夜に利尿作用があるカフェインが多く含まれたコーヒーや緑茶を控えることが挙げられます。また、寝不足でだるい時は日中でも寝られるときに寝ておくのもよい対処法です。
妊娠中の頻尿は多くの人が経験するものです。しかし、中には膀胱炎や尿路結石などによって尿の回数が増えている場合があるので注意しましょう。
特に、排尿後一時間以内で生じる尿意や残尿感、排尿時の腹痛などは膀胱炎の可能性が考えられます。また、妊娠中は脱水になりやすく、尿路結石ができやすい時期でもあります。
尿路結石は血尿や激しい背中とお腹の痛みが突然襲ってくることが特徴です。結石が尿と一緒に排出されれば症状が治まりますが、尿路に感染が生じると腎盂腎炎などの敗血症にもなりうる重篤な状態となることがありますのですぐに病院へ行きましょう。
頻尿は妊娠初期の人にはよく見られる症状と思っている人も多いため放置されることも少なくありませんが、5分おきに行くような状態は異常と考えるべきでしょう。このような場合は膀胱炎や尿路結石が疑われるため、すぐに病院で診察を受けることをおすすめします。
妊娠初期の頻尿は、子宮の拡大やホルモンバランスの変化によって引き起こされる一時的な現象なので、基本的には心配はいりません。ただし、尿のにごりや排尿痛などの異変がみられた場合、別の疾患の可能性がありますので、早めに病院を受診してください。