二分脊椎の原因と症状って?どうやって治療するの?

2017/10/31 記事改定日: 2019/4/3
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

二分脊椎とは胎児に見られる先天性の奇形です。脊椎に形成に異常が起こるため、下半身を中心にした神経障害を発症することがあります。
二分脊椎の原因と症状、治療方法についてまとめているので、これから妊娠・出産を予定している人は参考にしてください。

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二分脊椎は何が原因なの?

二分脊椎とは、脊髄の形成に異常が生じる先天性の奇形です。

二分脊椎は、胎児の「神経管」(中枢神経の基になる部分)に、妊娠初期の段階で異常が発生することによって起こります。
その結果、脊椎の一部が開いたままになり、本来は脊椎の管の中で守られるべき脊髄が外に露出します。この脊髄が癒着や損傷を起こしてしまうと、脳からの指令が体の各部位に伝達されなくなり下半身を中心に様々な神経障害が現れます。

原因としては

  • 母体の葉酸摂取不足
  • 遺伝
  • 環境
  • 糖尿病
  • 肥満
  • 抗てんかん薬の利用
  • ビタミンAの過剰摂取

など、さまざまな要素があります。

発生確率は分娩1万件に対して5.0~6.0件となっており、患者の10~20%で遺伝することがわかっています。
二分脊椎は脊椎の状況によって「顕在性」「潜在性」に2分され、下肢の運動・知覚麻痺及び変形、膀胱直腸障害という症状は共通しています。

顕在性二分脊椎の症状って?脊髄がどんな状態になっているの?

顕在性二分脊椎の特徴は、脊椎の一部が形成されず、脊髄などが背中に飛び出している症状であり、難病指定対象となっています。

背中側の腰から大きなこぶ(脊髄髄膜瘤)のように飛び出ていたり、背中に亀裂(脊髄披裂)が走り、穴が開いているように見えたりします。
発症している場合は、髄液感染を予防するため出生後48時間以内に閉鎖手術を行います。

進行性の水頭症が生後2~3カ月以内に発生したり、痙攣するなどの合併症を併発することが多く、キアリ奇形も多く見られます。キアリ奇形とは、脳の中にある小脳扁桃や延髄が「キアリ奇形」という異常な位置と形をとることであり、呼吸の問題や、飲み込みの障害などが起こることがあります。その他、軽度から中程度の知能障害を起こすことがあります。

潜在性二分脊椎症の特徴と症状

背中のこぶや亀裂はないものの、皮膚に血管腫、母班(色素班)、皮膚表面の小さな穴、たばこによる火傷のように見えるような瘢痕(はんこん)、おしりの左右差や臀裂(おしりの割れ目)の歪みなどを生じることがあります。

幼児期の症状は顕著ではありませんが、成長期の急速な成長に伴い脊髄係留症候群(下肢の運動・神経障害)が生じることがあります。
いったん神経症状が現れると手術によって治りにくいので、早期手術が推奨されています。

二分脊椎症の治療はどうやって行われるの?

下肢の麻痺に対しては、車イスや歩行のための装具や杖をうまく使えるようになるためのリハビリ訓練が必要です。ときには、麻痺に伴う下肢の変形や褥瘡に手術で対処しなければならないこともあります。

また排尿障害に対して適切に対処しなければ、腎臓の機能の低下を来たす危険性があります。先天奇形の疾病ですが、成人でも症状が悪化する場合があるため、最低でも年1回の脳神経外科の診察と検査をすることがすすめられています。

二分脊椎による運動機能障害は多岐にわたるため、脳神経外科、小児外科、泌尿器科、整形外科、リハビリテーション科を中心に眼科、皮膚科、内科等を含め、トータルなケアが必要となります。また、様々な障害の程度があるため、各々に合わせた適切な医療、教育、就職、結婚の問題までケースワークが求められます。

二分脊椎症の手術

二分脊椎は顕在性、潜在性によって手術の方法や行われる時期などが異なります。それぞれの特徴は以下の通りです。

顕在性二分脊椎症

脊髄が体外に露出しているため感染症などのリスクが高く、出生後48時間以内に皮膚から突出した脊髄の一部を切除して正常な脊髄の形に戻す手術が行われます。また、顕在性二分脊椎症では水頭症が見られることが多く、脳室の拡大が認められる場合には、過剰な髄液を排出するためのチューブを脳室内に挿入する「脳室ドレナージ術」が行われることがあります。
また、なかには水頭症が継続するケースもあり、過剰な髄液を腹腔内に流し込む経路を形成する「脳室腹腔シャント手術」が必要になることがあります。

潜在性二分脊椎症

脊髄が体外に直接露出しているわけではないため、早急な治療は必要ではありません。しかし、脊髄脂肪腫などが原因で脊髄係留症候群などの障害を来たす可能性がある場合は手術が行われることがあります。手術では原因となる脂肪腫や周辺組織の切除が行われ、正常な脊髄の形状に整えられて上で硬膜の縫合が行われます。

おわりに:妊娠中から葉酸を摂り、発症を防ごう

二分脊椎の最大のリスク因子は葉酸の摂取不足であるとも指摘されています。神経管の形成時期は妊娠3週頃なので、葉酸情報が掲載されている母子手帳をもらってからでは手遅れと懸念されています。
一方、妊娠前から葉酸サプリメントを充分に内服すると、二分脊椎の発生リスクは70~80%低減できるとされています。これから妊娠出産を考えている方は葉酸をしっかりとるとともにバランス良い食生活を心がけるようにしましょう。

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