記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/31 記事改定日: 2019/11/19
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
椎骨脳底動脈循環不全とは、何らかの原因で椎骨動脈・脳底動脈の血流が阻害され脳に血液が行き渡らなくなることで発症する病気です。悪化すると失神などの深刻な発作が起こることがあります。
この記事では椎骨脳底動脈循環不全についての基礎知識を紹介しています。
椎骨脳底動脈循環不全とは、首の後ろ側を通っている脳に血液を送る椎骨動脈・脳底動脈が狭窄することで、脳に十分な血液が運ばれなくなる病気です。
脳には、無数の血管があり、血流に乗って酸素と必要な栄養素を運んでいます。
この循環が正しく行われないと、脳幹や後頭葉、小脳などに酸素が運ばれなくなり、機能障害が出てしまいます。
脳のこれらの部分は、意識や協調運動、視覚など日常生活において重要な役割を果たしているので、血液循環に異常が起こると意識や視覚に問題が起こるようになります。
椎骨脳底動脈循環不全は、椎骨脳底動脈循環障害や、後方循環虚血、椎骨脳底動脈虚血などとも呼ばれており、これらの総称を椎骨脳底動脈循環不全と呼ぶこともあります。
椎骨脳底動脈循環不全にはさまざまな原因がありますが、おもな原因は動脈硬化であり、50代以上に多く見られることから、加齢が関係していると考えられます。なお、糖尿病や脂質異常症、高血圧症などによって動脈硬化が進んでいると、椎骨脳底動脈循環不全を発症しやすいとされています。
ほかにも、椎骨動脈が事故などで損傷する、加齢によって姿勢が悪くなることで頸椎が変形してしまうことが原因になっている場合もあり、脳卒中などを発症によって椎骨脳底動脈循環不全を併発するケースもみられます。
生まれつき椎骨動脈が細く、血液を十分に運べない場合は、上記の条件が揃うと余計に椎骨脳底動脈循環不全を引き起こしやすくなるとされ、さらに年齢に関係なく、怪我や身体的な外傷を負っていることなどが発症の要因になることもあります。
椎骨脳底動脈循環不全を発症することで影響を受ける脳の部分も人それぞれであり、症状の出方や重度は人によって違います。
まず、一般的な症状として、めまいや視界がぼやけ、二重に見えたりすることが挙げられます。
激しい眠気に襲われたり、身体が動かしづらいなどの自覚症状が現れることもあり、初期の頃は数分間しか起こらなかった症状も、悪化するにつれ1日中悩まされるようになっていきます。
ひどくなると、何もないところで突然転倒してしまったり、ろれつが回らず会話が成立しなくなってしまうこともあり、手足に違和感を覚えるようになったり、しびれやチクチクと刺される感覚を覚えることもあります。
さらに重症化すると、失神して意識消失してしまうこともあります。
椎骨脳底動脈は、主に小脳や脳幹、後頭葉の一部などに血流を提供しています。このため、この部位の循環不全が生じて血流が低下すると以下のような症状が現れます。思い当たる症状がある場合は、なるべく早く病院を受診するようにしましょう。
椎骨脳底動脈循環不全の治療のためにはまず正しい診断を下すことが大切です。
上で述べたように様々症状を引き起こされるため、一般的な耳鼻科での検査、CTやMRIなどの画像検査、ドップラーなど血管内の血流を評価する検査などを行い慎重な診断が行われます。
治療としては、目立った症状が現れている急性期にはめまいを改善する薬、脳の循環を改善する薬、脳を保護する薬などによる薬物療法が行われ、症状が強い場合には脳梗塞へ移行することも考えられるため、血液をサラサラにする抗血小板薬や抗凝固薬が使用されることもあります。
一方、症状が落ち着いている慢性期には症状の再発を防ぐための治療が行われます。急性期と同様に脳の循環を改善する薬やめまいを予防する薬などが使用されますが、椎骨脳底動脈循環不全の根本的な原因である糖尿病や高血圧がある場合にはそれらに対する治療も進めていくこととなります。
椎骨脳底動脈循環不全の原因はまだはっきりとわかっていませんが、加齢や糖尿病、高血圧などの生活習慣病が関係していると考えられています。
症状の出方は人によって違うので、初期の頃は軽い症状しか出ない人も少なくありません。
しかし悪化すると失神などを起こすこともあるため危険です。疑わしい症状があるときは、必ず病院で検査してもらいましょう。また、脳の血管の障害を予防するためにも、健康な食事と規則正しい生活習慣を過ごすように心がけてください。
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