妄想性人格障害 ― 疑り深く猜疑心が強いパーソナリティ障害

2017/10/31

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

妄想性人格障害とは、猜疑心が強く、他人が裏切っているような妄想を抱く特徴があります。妄想を抱く特徴から統合失調症と混同されることがありますが、この2つはどのように違うのでしょうか?この記事では妄想性人格障害について解説しています。

妄想性人格障害とは

妄想性人格障害はパーソナリティ障害の一種です。パーソナリティ障害は、WHOの精神疾患の診断基準やアメリカ精神医学会の診断基準によれば、「その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った内的体験および行動の持続的パターンであり、ほかの精神障害に由来しないもの」と定義されています。
つまり、「社会生活を営むことに支障が出るレベルで行動や考え方に偏りが見られる状態」であり、妄想性人格障害はその中でも「奇妙で風変わりなタイプ」と称される「A群」に属し、強い猜疑心を持つことが特徴です。

妄想性人格障害の原因はまだはっきりしていないことも多いですが、要因のひとつに遺伝が考えられます。また、家族との信頼関係がうまく築けなかったり、近しい人が裏切りにあうのを目の当たりにしたりと、成長期のつらく苦しい体験が関係しているのではないかとも指摘されています。

特徴的な症状

妄想性人格障害の特徴には、他人の言動を悪意のあるもの捉える傾向があり、非常に疑り深いことが挙げられます。

・他人は自分をだまそうとしたり利用したりしようとしていると思い込み、信頼できない
・家族や友人であっても信じられず、好意が受け入れられない
・他人に対して批判的
・他人の言動を攻撃と捉え、突然怒り出す
・少しでも悪意を感じると根に持ち続け、恨む
・嫉妬深く、パートナーを束縛する
・他人からの指摘や批判に過敏に反応し、受け入れられない

以上のような特徴から、周囲の人との関係が破たんすることは珍しくありません。また、常に家族や友人、職場の人など周りの人を疑い続けているため、うつや不眠などの症状が現れることもあります。

統合失調症との違い

同じ「妄想」という症状が見られることから、妄想性人格障害はしばしば統合失調症と混同されることがあります。統合失調症とは、幻覚や幻聴、妄想に加え、思考の貧困や感情のまひ、意欲の減退といった症状が現れる病気です。かつては「精神分裂病」と呼ばれていましたが、誤ったイメージを与えるために名称が変更されました。

妄想性人格障害と統合失調症の決定的な違いは、妄想の種類や度合いにあります。妄想性人格障害の場合、基本的に「自分をだまそうとしている」「パートナーが浮気をしている」といった、実際に起こりうる現実的な妄想です。一方で、統合失調症の場合は「監視されている」「盗聴されている」など、実際には簡単に起こり得ない非現実的な妄想であり、妄想性人格性障害とは妄想の性質が全く異なります。

治療方法

妄想性人格障害の治療では、認知行動療法などの精神療法やカウンセリング、薬物療法が行われます。薬物療法においては脳の神経伝達物質に作用する抗うつ薬や感情調整薬、抗不安薬などが使用されますが、症状を根本的に改善させるものではありません。

妄想性人格障害の治療で重要なのは、カウンセリングなどによって考え方の偏りを意識し、人との付き合い方でトラブルが起こらないようにするための訓練をしていくことです。粘り強く向き合うことや家族の協力も必要になります。

また、家族などが「受診して」などと促すと症状を悪化させることになりかねないため、接し方には気を付けなければなりません。妄想性人格障害の人を支える家族は、冷静さを忘れずに、適度な距離を置くこと、疑いに対して否定や同意をしないことを心がけることが望ましいとされています。

おわりに:人を疑ってしまう人格障害。周囲の人は専門家に相談しながら関わっていこう

妄想性人格障害は統合失調症と似ていますが、現実に起こり得る妄想をするという特徴があります。早期に治療したほうがいいのですが、家族などが受診を促すと症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。専門家に相談しながら慎重に接するように心がけ、疑われても否定したり同意したりしないようにしましょう。

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