妄想性人格障害はどんなパーソナリティ障害?周囲ができるサポートは?

2017/10/31 記事改定日: 2019/12/24
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

妄想性人格障害とは、猜疑心が強く、他人が裏切っているような妄想を抱く特徴があります。妄想を抱く特徴から統合失調症と混同されることがありますが、この2つはどのように違うのでしょうか?
この記事では妄想性人格障害の特徴や治療、周囲の人ができることなどについて解説しています。

妄想性人格障害とは

妄想性人格障害はパーソナリティ障害の一種です。
パーソナリティ障害は、WHOの精神疾患の診断基準やアメリカ精神医学会の診断基準によれば、「その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った内的体験および行動の持続的パターンであり、ほかの精神障害に由来しないもの」と定義されています。

つまり、「社会生活を営むことに支障が出るレベルで行動や考え方に偏りが見られる状態」であり、妄想性人格障害はそのなかでも「奇妙で風変わりなタイプ」と称される「A群」に属し、強い猜疑心を持つという特徴があります。

原因

妄想性人格障害と遺伝との関係性が指摘されていますが、原因に関してはまだはっきりしていないことも多いです。
家族との信頼関係がうまく築けなかったり、近しい人が裏切りにあうのを目の当たりにしたりなど、「成長期のつらく苦しい体験」が関係している可能性があるとも考えられています。

妄想性人格障害の特徴的な症状は?

妄想性人格障害の特徴には、他人の言動を悪意のあるもの捉える傾向があり、非常に疑り深いことが挙げられます。

  • 他人は自分をだまそうとしたり利用したりしようとしていると思い込み、信頼できない
  • 家族や友人であっても信じられず、好意が受け入れられない
  • 他人に対して批判的
  • 他人の言動を攻撃と捉え、突然怒り出す
  • 少しでも悪意を感じると根に持ち続け、恨む
  • 嫉妬深く、パートナーを束縛する
  • 他人からの指摘や批判に過敏に反応し、受け入れられない

以上のような特徴から、周囲の人との関係が破たんすることも多く、家族や友人、職場の人など「周りの人」を常に疑い続けているため、うつや不眠などの症状が現れることも少なくありません。

妄想性人格障害と統合失調症の違いは?

同じ「妄想」という症状が見られることから、妄想性人格障害はしばしば統合失調症と混同されることがあります。

統合失調症とは、幻覚や幻聴、妄想に加え、思考の貧困や感情のまひ、意欲の減退といった症状が現れる病気です。かつては「精神分裂病」と呼ばれていましたが、誤ったイメージを与えるために名称が変更されました。

妄想性人格障害と統合失調症の決定的な違いは、妄想の種類や度合いにあります。
妄想性人格障害の場合、基本的に「自分をだまそうとしている」「パートナーが浮気をしている」といった、実際に起こりうる現実的な妄想です。

一方で、統合失調症の妄想は「監視されている」「盗聴されている」など、実際には簡単に起こり得ない非現実的なものという特徴があり、妄想性人格性障害とは妄想の性質が全く異なります。

妄想性人格障害の治療方法は?

妄想性人格障害の治療では、認知行動療法などの精神療法やカウンセリング、薬物療法が行われます。
ただし、薬物療法は脳の神経伝達物質に作用する抗うつ薬や感情調整薬、抗不安薬などで二次的な症状を抑えることが目的となり、、妄想性人格障害自体を根本にアプローチするものではありません。

妄想性人格障害の治療で重要なのは、カウンセリングなどによって考え方の偏りを意識し、人との付き合い方でトラブルが起こらないようにするための訓練をしていくことです。粘り強く向き合うことや家族の協力も必要になります。

妄想性人格障害の周囲の人ができることは?

妄想性人格障害のさまざまな被虐的妄想は、周囲の人とのトラブルを引き起こす原因になります。このため、学校や職場などで円滑な人間関係を築くことができずに孤立し、引きこもりになるなど社会生活に支障を来すケースも少なくありません。

そのため、生活していく上で周囲からの様々なサポートを受けていく必要があり、とくに家族からのサポートは非常に重要です。
家族に妄想性人格障害の方がいるときは次のような点に注意しながらサポートをしていきましょう。

  • 妄想を頭ごなしに否定せず、一緒に考えて事実に導くようにする
  • 学校や職場での悩みを丁寧に聞く
  • 行動や様子の変化をよく観察し、変わった点があれば話を聞く
  • 妄想にとらわれているときは、その原因から離れて気分転換を促す
  • 学校や職場に病気のことを相談し、適切な対応を求める
  • 症状がひどいときは病院受診を促す

おわりに:人を疑ってしまう人格障害。周囲の人は専門家に相談しながら関わっていこう

妄想性人格障害は統合失調症と似ていますが、現実に起こり得る妄想をするという特徴があります。早期に治療したほうがいいのですが、家族などが受診を促すと症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。

専門家に相談しながら慎重に接するように心がけ、疑われても否定したり同意したりしないようにしましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

統合失調症(9) パーソナリティ障害(8) 妄想性人格障害(1)