橈骨神経麻痺の症状の特徴とは?何が原因で発症するの?

2017/11/1 記事改定日: 2019/3/26
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

橈骨神経とは前腕にある橈骨に沿って走行する神経であり、何らかの原因で障害が起こり麻痺が起こることを橈骨神経麻痺といいます。どのようなことが原因で、どんな治療があるのでしょうか?この記事では橈骨神経麻痺の基礎知識を紹介しています。

橈骨神経麻痺(とうこつしんけいまひ)とは

橈骨とは、2本ある前腕(肘から先の腕)の骨のうち、手の甲を上に向けたときに内側にある骨を指します。その橈骨を動かす筋肉につながる神経が橈骨神経です。

橈骨神経は、肩から下、腕の付け根あたりから腕の骨に沿って走っていて、枝分かれしながら指先までつながっています。上腕や前腕の筋肉の収縮は、すべてこの橈骨神経を通して行われています。

橈骨神経麻痺とは、何らかの原因で橈骨神経に異常が起こり、手首を反らせなくなったり、指を伸ばせなくなったり、親指側の手の甲にしびれが生じたりする病気です。

症状

橈骨神経麻痺では以下のような症状が見られます。

  • 手の甲を中心としたしびれ
  • 手の感覚が低下する
  • 指を伸ばせなくなる
  • 手首が下垂し、反らすことができなくなる

ただし、これらの症状は橈骨神経の障害が生じた部位によって現れ方が異なります。
二の腕付近でダメージを受けた場合には、しびれや感覚低下などの感覚障害、手首を反らすことができないなどの症状(下垂手)が見られます。

一方、肘関節付近で障害された場合、感覚障害は伴わないのが特徴です。また、手首を反らすことは可能ですが指の付け根を伸ばすことができなくなります(下垂指)。

橈骨神経麻痺の原因

橈骨神経は腕の広範囲に伸びている神経のため、圧迫されたり刺激を受けたりしやすいです。
橈骨神経の損傷の原因は、以下のようなものがあります。

  • 開放創(切り傷などの皮膚に裂傷が見られるような状態)
  • 上腕骨骨折
  • 上腕骨骨幹部骨折
  • 注射(静脈注射や採血など)
  • 神経炎
  • 回外筋症候群
  • 腫瘍
  • モンテジア骨折(尺骨を骨折し、橈骨頭を脱臼している状態)

また、腕(二の腕の裏側あたり)への長時間の圧迫もしばしば橈骨神経麻痺を引き起こし、主に以下のような行動が引き金になります。

  • 無理に長い時間腕枕をする(男性が女性に腕枕をすることが多いため、「腕枕症候群」や「ハネムーン症候群」とも呼ばれる)
  • 腕を頭の下にしたまま長時間眠る(お酒に酔ったままぐっすり寝ているときなどは、しびれても目を覚ましにくい)
  • 松葉杖をつくときに、わきの下に長時間あて続ける

橈骨神経麻痺はどうやって治療するの?

橈骨神経麻痺の治療は、保存的療法と手術療法の2つに分けられます。保存的療法においては、主に以下のような治療が行われます。

薬の処方
ステロイド薬、ビタミン剤などが処方されます。
装具の使用
手が下垂したままで固まらないようにするためのコックアップ装具などが用いられます。
運動療法(リハビリ)
症状に合わせ、時間をかけて少しずつ筋肉を動かす訓練を行います。

手術が行われるのは、骨折や脱臼、腫瘍などによって神経が圧迫され、麻痺が起こっている場合や、神経自体に損傷が見られる場合で、神経に問題があるケースでは神経の縫合や移植が行われます。
手術後は、装具を使用したりリハビリをしたりするなどのケアも必要になり、回復には時間が掛かります。

おわりに:まれに手術が必要なケースも。異常を感じたときは早めに整形外科へ

橈骨神経麻痺は様々な原因があるため発症する可能性が高く、症状が進行すると「下垂手」になり日常生活に支障をきたすこともあります。
場合によっては手術が必要になることもあり、手術をした場合は治癒までに期間が必要になるケースも少なくありません。早期に治療を始められるように、少しでも違和感があると思った段階で整形外科を受診するようにしましょう。

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