失語症ってどんな病気なの? うまく言葉が出てこない原因は?

2017/11/1

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

これまで一度は「失語症」という病名を耳にしたことがあるかと思います。ただ、病名は知っていても、具体的にどんな症状が出るのかまではご存知ない方が大半ではないでしょうか。以降で特徴的な症状や原因、治療法などを幅広く解説していきます。

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失語症は、どのような状態なの?

失語症というのは、脳の損傷によって起こる高次脳機能障害の一種です。高次脳機能障害というのは記憶・思考・理解・計算・言語・判断・情緒など様々な認知機能において障害があらわれる状態のことで、失語症では言語や理解に関する機能に問題が生じ、他者との円滑なコミュニケーションが難しくなってしまいます。

実は失語症という病気には主に2つのタイプがあり、それぞれ特徴が違います。まずウェルニッケ失語ですが、これは自分はスムーズに言葉を発することができたとしても、相手が何を言っているのかが理解できないため会話にならないというものです。また流暢に言葉を発していても本人はその内容を理解できていないので、意味不明な言葉を話してしまっていることに気づけないこともあります。言語を理解する働きのウェルニッケ野が原因となっています。

もう1つはブローカ失語といい、これは人が話している内容を理解できるのですが、自分が思っていることをうまく文章に組み立てることができないので、言葉を発することもできないというものです。言葉を発するブローカ野が原因となっています。

失語症の原因とは?

失語症は、脳の言語中枢の損傷が原因で起こります。そして、この損傷の原因となる約9割が脳卒中です。事実、失語症は脳卒中患者の多くに見られる病気です。また脳卒中以外にも、交通事故などによる頭部外傷や脳腫瘍なども失語症の原因としてあげられます。

脳は体の機能すべてに対する司令塔のようなものです。行動に対する指令はもちろんのこと、外から入ってくる情報を処理したり、自分の中にある情報を整理して外に発信したりなど、すべての大元は脳にあると言っても過言ではありません。そして、この脳の一部である言語を司る部分が損傷を受ける事で失語症という病気は起こるのです。失語症は、失声症(ストレスなどの心的外傷によって発声が難しくなる病気)と混同されやすいのですが、発声が困難になる点では同じでも原因も症状も大きく異なります。

先述のとおり、失語症は脳卒中によって引き起こされることが多いため、比較的中高年世代によく見られる病気ですが、現代では若者でも脳卒中になることがあるため必ずしも若者には無関係な病気だとは言えません。

どんな治療法があるの?

一言に失語症と言っても、その病状や程度は人それぞれ異なります。それに合わせた治療を行っていくことが、症状の改善につながります。

まず程度がかなり重い場合には、コミュニケーション力の回復をはかります。例えば患者さんの趣味の話や昔話など、様々な方面からコミュニケーションがとりやすい方法を探っていきます。言葉だけではなく写真や動画なども使いながらだとより効果的です。そうしていくうちに脳の状態が落ち着いてくると、言語治療を行えるようになっていきます。

次に発音動作に障害がある場合です。麻痺が見られないのに発音動作がおかしいという場合には言語聴覚士の口の動きを見せたり、鏡で自分の口の動きを見てもらったりしながら言葉を発する練習をします。中には発音がきれいなのにどこかたどたどしいという人もいますが、そういった人は1文字ずつの単語から少しずつ長い単語にのばしていって練習をします。

言いたい単語と別の単語を間違えてしまう人や単語の音順が入れ替わってしまう人には、文字が書かれたカードを使って文字の組み立てを練習することで改善をはかります。

おわりに:治療にあたっては、まず失語症のタイプを把握することが大切

ひとくくりに失語症といっても、言葉を発することに障害を抱えるタイプや、言葉を理解することが困難なタイプなどさまざまで、そのタイプや重症度に応じて適切な治療法は異なっていきます。まずは専門の医療機関で、どのタイプの失語症なのか的確に把握することが肝心です。

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