記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2017/11/20
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
「網膜静脈閉塞症」をご存知でしょうか。網膜の静脈に血栓ができて詰まってしまうことで、出血を引き起こしたり、視力低下につながったりすることがある眼病です。以降で詳しく解説していきます。
網膜静脈閉塞症とは、網膜の静脈に血栓ができて詰まり、血液が流れなくなる目の病気です。糖尿病網膜症とともに、眼底出血をひき起こす原因として知られ、流れをせき止められた血液が血管外にあふれ出すことで、網膜に出血したり、むくみが起きたりします。50歳以上で高血圧の症状がある場合にかかりやすい病気ですが、眼底検査によって発見できます。
網膜静脈閉塞症は、血液が詰まった部位によって中心静脈閉塞症と分枝静脈閉塞症に分かれます。網膜静脈閉塞症の患者さんのうち、8割ほどが分枝静脈閉塞症であり、中心静脈閉塞症を発症する方はわずかです。中心静脈閉塞症の場合は、症状が重篤になりがちです。網膜静脈閉塞症でも症状が軽ければ、自然に治癒することもあります。
網膜静脈閉塞症になって静脈が詰まると、出血やむくみが起こります(分枝静脈閉塞症の場合は、症状がほとんど出ないことも少なくありません)。そして、出血やむくみが網膜の中心部に及ぶと、視力が低下してきます。
ただ、症状の現れ方は一般的にゆっくりです。出血した血液が引いていけば、視力が回復することもあります。しかし、視力に影響する黄斑部分に出血が及んで、黄斑部分が著しく損傷されている場合は、視力が回復しない可能性が高いです。
また、網膜静脈閉塞症になった数年後に突然、硝子体出血が起きることがあります。硝子体出血が起きると、黒い塊が眼の前を浮遊して見えるようになります。出血量によっては、目の前が真っ暗になってしまうこともあります。
網膜静脈閉塞症は50歳以上になると発症しやすくなることから、加齢が大きく影響する病気とされています。また、高血圧や動脈硬化、糖尿病の症状がある人に特に起こりやすいという特徴があります。
なお、分枝静脈閉塞症では、網膜の静脈が動脈に圧迫され、血の流れが滞って血栓ができるのが原因のひとつとされています。ただし若い人が網膜静脈閉塞症になる場合は、分枝静脈閉塞症よりむしろ中心静脈閉塞症が多く、この場合は血栓による閉塞ではなく、血管自体の炎症や全身性エリテマトーデスなどの特定の病気が主な原因となります。
網膜静脈閉塞症は、軽症であれば自然治癒することも少なくないため、経過観察となります。もし薬物治療をおこなう際は、血管を拡張させる薬や、血管を強化する薬、出血やむくみの吸収を促す薬などを内服します。
網膜中心部にむくみがある場合は、レーザーを使った網膜光凝固をおこないます。これにより、急性期の出血や浮腫の吸収を強力に促します。また、静脈閉塞の程度が強く、その範囲も広い場合も、硝子体出血を予防するためにレーザーを使った網膜光凝固をおこないます。
硝子体出血が起きた場合は、硝子体手術をおこないます。ただし最近では硝子体出血がなくても、網膜中心部分のむくみを取る目的で硝子体手術をおこなうようになってきています。
50歳以上で高血圧の方は特に発症しやすいとされる網膜静脈閉塞症。症状によっては視力回復が難しくなる可能性もあるので、目からの出血など異変があった場合は、すぐに眼科を受診してください。