脳塞栓症って、どんな病気?何が原因なの?

2017/11/17 記事改定日: 2019/1/16
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

脳塞栓症とは心原性脳塞栓症とも呼ばれる脳梗塞の一種です。一般的な脳梗塞である脳血栓症とどんな違いがあるのでしょうか?
この記事では、脳塞栓症の基礎知識と脳塞栓症の原因について解説しています。

脳塞栓症(心原性脳塞栓症)とは?

血栓(血の塊)が血管の中を流れ、脳にたどり着き脳の細い血管を詰まらせてしまう病気のことを脳梗塞といいます。長時間脳の血管に血液がいかなくなると脳の機能が障害されてしまい、深刻な症状に陥ります。

脳梗塞のなかでも、心臓や太い動脈にできた血栓が原因のものを脳塞栓症(心原性脳塞栓症)といいます。発症すると命を落とすことも少なくなく、一命を取り留めたとしても、言葉が出にくい、手や足が動かしにくいといった後遺症が残ってしまう恐れがあります。

脳塞栓症と脳血栓症の違い

脳梗塞は大きく分けると脳塞栓症(心原性脳塞栓症)と脳血栓症に分けられます。
脳血栓症とは、肥満や高血圧、糖尿病などが原因で動脈硬化が進み、アテローム性の血栓が剥がれたものが脳の血管に詰まった脳梗塞のことです。

上記で紹介した脳塞栓症も脳血栓症も脳の血管が詰まり血流が阻害されるので、酸素や栄養が行き渡らなくなり深刻な症状が起こることには違いがありません。

ただ一般的には、脳血栓症は少しずつ症状が進行していきますが、脳塞栓症は急激に症状が現れるという特徴があります。また、脳塞栓症の原因は心房細動と呼ばれる不整脈が主なものであり、血栓が大きく脳血栓症に比べて太く大きな血管を詰まらせてしまう可能性があります。

脳塞栓症の原因は?どうして発症するの?

上記でも触れたように、脳塞栓症の主な原因「心房細動」は不整脈の病気です。ではなぜ、不整脈が血栓を作ってしまうのでしょうか。

心臓は休むことなく規則的に動き常に血液を全身に送リ続けていますが、心房細動になると心臓の一部が細かく震えた状態になり、動きも不規則になります。それにより血液によどみがでてしまいます。
血液は固まりやすい性質があるため、よどみができて血流が停滞すると、血が固まり血栓が作られてしまうのです。その血栓が心臓の中から血管の中を通り脳で詰まって脳塞栓症を発症します。

脳塞栓症は、どうやって治療するの?

検査

脳塞栓症は、発症後に採血、CT、MRIなどの検査を行い、脳塞栓なのか脳血栓なのかを判別し、脳塞栓が疑われた場合には心電図、心エコーなどを使用し心臓の病気についても調べていきます。

脳の血流を早く改善しないと脳の障害がどんどん進んでいくため、1分1秒でも早い診断と治療開始が重要です。

治療

脳塞栓症の治療は、発症後なるべく早期に開始することが大切です。
発症後、3~4.5時間以内であれば、血栓を溶解させる効果のあるt-PA(遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベーター)の静脈投与を行うことができます。また、大きな塞栓が予想される場合には、カテーテルを挿入して閉塞した血管に直に血栓溶解薬を注入する治療が行われることもあります。
これらは発症後すぐに行う治療ですが、その後には脳のむくみを取るための利尿薬やステロイド薬、脳保護薬などが用いられ、血栓の形成を予防するために血液を薄めるための点滴治療などが行われるケースも少なくありません。
これらの治療を行っても脳のむくみがひどく、脳ヘルニアなどを発症する危険がある場合は頭蓋骨の一部を取り除いて脳圧を下げる「開頭減圧術」という手術が行われることがあります。

脳塞栓症は予防できる?

脳塞栓症の予防で大切なことは、まずは自身に心臓の病気がないか、心房細動になっていないか調べることです。心房細動は珍しい病気ではなく、高齢になるにつれ発症率も増加していきます。

無症状の人も多く、なかなか自分で見つけるのが難しい病気です。そのため、定期的に検診を受けることが脳塞栓症につながるといえるでしょう。心房細動は症状や重症度によって治療方法がことなるので、医師に指示に従い、適切な治療を続けていくように努めてください。

まとめ:脳塞栓症は心房細動が原因で起こる脳梗塞。定期検査が予防につながる

脳塞栓症は通常の脳梗塞(脳血栓症)と違い、心房細動が主な発症要因です。
そのため、予防のためには、生活習慣に気をつけるだけでなく定期健診で心臓の検査を受けることが大切です。心房細動は加齢で発症リスクが高まるので、症状の有無に関わらず定期健診を徹底するようにしましょう。

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