記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2017/12/18 記事改定日: 2020/7/28
記事改定回数:1回
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
根尖性歯周炎とは、歯根の周囲組織が炎症を起こしている状態です。主にむし歯菌などが原因菌になりますが、根尖性歯周炎はどのようなメカニズムで発症するのでしょうか。この記事では根尖性歯周炎の原因や治療法、再発の可能性について解説しています。
根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)とは、むし歯が進行して歯髄(しずい)という歯の神経の部分にまで達し、炎症が歯根の先から歯根周囲の組織まで広がっている状態のことを言います。
根尖性歯周炎になると
といった症状が現れ、膿が出る状態が続くと口臭もひどくなります。
痛みは、歯根の炎症が歯周組織の1つである「歯根膜」という歯根を包んでいる膜に及ぶことで起こります。歯ぐきの症状は、炎症が歯根周囲の骨を超えて歯ぐきにまで達する事が原因で起こり、歯ぐきを超えて顔面の組織にも炎症が波及すれば、顔も腫れてしまいます。
根尖性歯周炎は、レントゲン撮影をすると、歯根の先端付近が黒い影のように見えることが特徴です。これは、周囲の骨が炎症の波及によって溶かされてしまい、代わりに膿で満たされるためで、根尖病巣と呼ばれています。
むし歯の原因菌が歯の神経にまで達して感染すると、感染した神経は死んでしまい、細菌が歯根の中の歯髄腔(神経がおさまっていた空間)に繁殖していきます。
歯が元気なうちは、歯髄腔には神経があり血液が流れ免疫機能が働いていますが、細菌が繁殖すると血液が止まって免疫機能が働かなくなります。すると、細菌は歯髄腔の中でどんどん繁殖していき、やがて歯根の先端から周囲組織に毒素を排出したり、細菌が周囲組織にも感染を拡大していきます。
この毒素や細菌が歯根の周囲組織に炎症を起こしている状態を根尖性歯周炎と言います。
上記でも触れましたが、根尖性歯周炎の原因は、歯の神経が死んでしまい細菌感染をおこしてしまうことです。歯の神経が死んでしまう原因は、次のようなことが考えられます。
ただし、根尖性歯周炎にはさまざまな原因があります。
根尖性歯周炎治療は、細菌感染を起こしている歯を削ってきれいにして細菌数を減少させることが目的になります。
まず、むし歯になっている部分を削り、次に神経がある歯根部分を削って、歯髄腔を開放します。歯髄腔は歯根の先端から周囲組織にまでつながっているので、開放すると膿が出てきます。しっかり膿を出しきり、歯髄腔や歯根内の細菌に感染した部分を除去して、健康な歯質だけを残すために、ファイルという針のような器具で少しずつ削っていきます。
健康な歯質だけになったら、再度細菌が侵入してこないようにしっかり圧をかけて薬をつめて封鎖します。
治療でどれだけ緊密に薬をつめても、根尖性歯周炎は再発しやすい特徴があります。なんども再発する場合には、外科的手術をして歯根の先端を切除し膿を取り除く、歯根端切除術を行うこともあります。
根尖性歯周炎の発症や再発を予防するには、第一に初期段階から悪化させないことが大切です。歯の痛みやしみ、ぐらつき、口臭などの症状が気になるときは、根尖性歯周炎に進行する前に病院を受診して適切な治療を受けるようにしましょう。
また、根尖性歯周炎は虫歯の悪化によって引き起こされるケースが多いため、発症を防ぐには毎食ごとの丁寧なブラッシングを徹底し、歯垢除去や歯の健康チェックのためにも定期的なクリーニングを受けることをおすすめします。
根尖性歯周炎はむし歯菌などの細菌感染が原因です。そのため、虫歯にならないようにきちんと口腔ケアすることが予防のために大事になってきます。また、虫歯になってしまったという人は、進行してしまわないように早期治療を始めることが大切です。定期的に歯科医に通い、お口の健康をチェックしましょう。