記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/31
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ごはんが目の前にあっても、香水をつけたりしても、以前のようににおいをあまり感じられない場合は「嗅覚障害」を疑ったほうがいいかもしれません。原因や治療法について、以降で解説していきます。
人はにおいによってリラックスしたり、不快感を感じたりしますが、そのにおいがわからなかったり、感じにくくなったりするのが嗅覚障害です。嗅覚障害になってしまうと、食事をしている時に食べ物のにおいもわからなくなってしまうために、味覚障害につながることもあります。
大人になってから嗅覚障害を発症した場合は、これまで様々なにおいをかいできたため、異常が出た時に早めに気づくことが出来ますが、子どもの場合にはにおいをかいだ経験が少ないため、先天的な嗅覚障害の場合は発見が遅くなるケースが少なくありません。そのため、周囲の大人や保護者がいち早く異変に気づけるかどうかが重要になっていきます。
嗅覚障害ということになったとき、原因は主に3つに分けられます。ひとつめは呼吸器性のものです。具体的には慢性副鼻腔炎のような呼吸器の病気によって、鼻に炎症が起きて腫れてしまったり、ポリープが出来たりしたことが原因で、空気中のにおいの分子を感知できないというものです。
ふたつめは末梢神経性で、においを感じる部分である嗅上皮(きゅうじょうひ:鼻腔上部の皮膚)に障害が起きたり、嗅糸(きゅうし:嗅覚を受容する嗅細胞の集合体)が断裂してしまうことで嗅覚障害が起きてしまうものです。嗅上皮の障害は、ウイルス感染などが原因の場合が多いのですが、嗅糸断裂については頭を打ったりした時に断裂が起きてしまうことが多いです。
そして最後は中枢神経性です。これは、アルツハイマーやパーキンソン病などの病気で脳が萎縮したり、事故で脳に損傷をうけたりしたときに、脳が嗅覚を処理できなくなって起こる嗅覚障害です。
人は腐敗臭や刺激臭で腐ったものや毒物の判断をしていますが、嗅覚障害によってそれが出来なくなると、生命活動をする上でさまざまな問題が出てしまうことがあります。例えば、人は家族や友人・知人と食事をすることで関係を深めることがありますが、嗅覚障害で味覚にまで影響が出てしまうと、同じものを食べて美味しいと思えなくなり、前ほど食事を楽しめなくなります。
嗅覚障害の治療では、呼吸器性であれば、鼻の腫れを小さくするステロイドの点鼻薬や血管収縮薬を用います。ポリープや慢性副鼻腔炎など簡単に治らない状態であるときには、手術で腫れている部分を除去することもあります。
末梢神経性の場合、感覚器官が壊れてしまうと元の状態に戻ることは難しいですが、こちらもステロイドの点鼻薬で症状の緩和をはかります。
そして中枢神経性の場合は、そもそもの問題であるアルツハイマーやパーキンソンの治療をしていくことが、嗅覚障害の治療につながります。これら原因疾患の治療と併せ、神経伝達をしやすくする薬の投与や栄養の補給などを行います。なお、他にも嗅覚リハビリとして、いろいろな種類のアロマオイルを嗅ぐといった治療を行う場合もあります。
嗅覚障害は、呼吸器系の病気によるものや末梢神経性のものなど、さまざまな原因によって引き起こされるものです。まずは検査にて原因を見極めたうえで、原因に沿った治療を行っていくことが大切です。