記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/1
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
鼻をかんでも大して鼻水は出ないのに、喉のほうへと鼻水が流れてしまう――そんな不快感にお悩みであれば、それは「後鼻漏(こうびろう)」の症状かもしれません。特徴や原因、治療法などを詳しく解説していきます。
後鼻漏は、鼻をかんでもティッシュペーパーに鼻水が付く量はそれほど多くないにもかかわらず、喉のほうに大半の鼻水が降りてきてしまい、それを痰のように吐き出すか、それができない場所では飲み込むことになってしまう症状です。
後鼻漏になると、鼻水が喉に流れ込む不快感だけでなく、喉のいがらっぽさなどの違和感や、突然咳き込む原因にもなってしまいます。口の中に鼻汁が出て来ることで、口臭の原因になったり、食事の味が変に感じられるなど味覚障害に及んでしまうこともあります。
後鼻漏は鼻かぜなど一時的な症状の時にもあらわれますが、軽い鼻炎から副鼻腔炎に症状が進んでしまうと、粘り気のある黄色や緑色の鼻汁に悩まされるようになり、それが後鼻漏によってノドに落ちて来ることで、気道にも影響を及ぼし、痰が絡んだ咳が頻発するなど、呼吸器全般につらい症状が出る副鼻腔気管支症候群に進んでしまう恐れがあります。
鼻水や鼻汁が喉に落ちてしまう後鼻漏は、そもそもの原因である鼻水や鼻汁を発生させる病気によって引き起こされます。きっかけとしては鼻かぜや花粉症などのアレルギー性鼻炎が多いですが、鼻の炎症が治まらず副鼻腔炎を慢性化させてしまうと後鼻漏も慢性化し、常に喉に鼻水が流れている感触に悩まされるようになります。
また、鼻茸と呼ばれる鼻ポリープも後鼻漏を起こしやすい原因の一つと言われています。鼻茸はアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎によって発症しやすい病気と言われ、鼻茸が大きくなることで鼻腔内がふさがれてしまい、鼻づまりを悪化させてしまう原因になります。この大きくなった鼻茸によって鼻方向への出口をふさがれた鼻水や鼻汁が、出口を求めて反対側へ向かうことで、それらが喉の奥へと落ちていく後鼻漏を誘発しやすくなるとも言われています。
なお、蓄のう症とも言われる慢性副鼻腔炎の粘り気のある鼻汁の場合、喉にも多大な悪影響を及ぼして気管支炎などの病気も誘発させやすくするので注意が必要です。
後鼻漏を治すには、鼻水や鼻汁が出る原因となっている病気の治療が欠かせません。ただ、後鼻漏を起こすようになったきっかけがアレルギー性鼻炎だったとしても、後鼻漏が頻発するようになっている場合、抗アレルギー薬だけでは対策として十分でないこともあります。
慢性副鼻腔炎による後鼻漏では、マクロライド療法と呼ばれるエリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬の少量長期投与が試みられます。鼻茸の影響が大きい場合は、抗アレルギー薬の内服やステロイドの点鼻薬が使われます。それらの治療で効果が得られない場合、手術による治療が選択されることもあります。なお、鼻茸の切除だけでは再発を起こしやすいことから、内視鏡を使った鼻内副鼻腔手術によって、鼻茸を発症しやすい病巣ごと切除するのが一般的です。
喉に鼻水や鼻汁が落ちる後鼻漏は、その症状だけでも不快でつらいものがありますが、副鼻腔気管支症候群などの呼吸器の病気も併発してしまわないよう、早めに治しておくことが肝心です。該当する症状がみられたら、まずは病院を受診しましょう。