記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/1
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
腹水とは血管内にある水分が抜け出し、お腹の中に溜まったものです。正常な状態でも、お腹の中にはある程度の水が入っていますが、あまりに量が増えてしまうと臓器が圧迫され不快な症状が現れるようになります。この記事では腹水の基礎知識について解説します。
腸がスムーズに動くために、正常なお腹でも20〜50mlほどの腹水が溜まっています。腹水は、腹膜などで産生され、血管などに吸収されることによって量のバランスを保っています。腹水が溜まってしまう直接の原因は腹水が過剰に産生されたり、排出されずに溜まってしまうことです。また、肝硬変などの肝疾患を患っていたり、稀なことですが、がんや心不全、腎不全などの病気が原因となっている可能性もあります。
少し量が増えたくらいでは、自覚できるほどの症状は現れませんが、増えすぎるとお腹が膨らんでしまったり、おへそが飛び出ることがあります。さらに腹水が溜まったまま放っておくと、目で見てもお腹がパンパンに膨れ上がっているのがわかるほどになります。
自覚症状としてお腹の不快感があったり、胃や肺が圧迫されてしまうので食欲不振や息切れを引き起こします。お腹に溜めきれなくなった水分は体に分散されるため、全身がむくんでしまうこともあります。
さらに、腹部を軽く叩いて打診したときに正常時とは違う鈍い音がするなどの変化も現れます。
腹水が溜まっているかどうかは超音波検査かCT検査を行うことが一般的です。明らかにお腹が膨れているときには視触診で診断できることもあります。
治療は腹水を抜くことから始まります。腹水が溜まりすぎていなければ、尿として排出させるために利尿剤を使用し、腹水の量が多いときは腹壁に針を刺し腹水を抜きます。ただし、腹水には体に必要な栄養分も含まれているため、完全に抜くわけではありません。
また、血中のアルブミン低下が腹水の原因になっている場合は、アルブミンの点滴を行います。
たまった腹水や胸水から不要な物質を除去し、再び体に戻す治療法を腹水濾過濃縮再静注法、CART(カート)と言います。上記でも触れたように、腹水には有用なタンパク成分が含まれているので、溜まり過ぎているからといって、腹水をただ減らせばいいというわけではありません。タンパク成分が減ってしまうと、患者の衰弱が進んでしまいます。
CARTで治療することで必要な物質を濃縮して体に戻すことができるのです。
腹水が溜まりすぎてしまったときは、腹水を抜くことが第一ですが、腹水の原因になる病気の治療も必要です。また、一度腹水を抜いても原因を改善しなければ、再発してしまいます。原因の病気の治療に専念しながら、腹水が溜まらないように予防するようにしましょう。予防方法については体の状態によって変わってくるので、自己判断せず必ず医師に相談してください。