急性散在性脳脊髄炎は何が原因で起こる病気?

2017/11/6

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

急性散在性脳脊髄炎は原因不明なものとワクチン接種が起因するものがあります。劇症型になると死に至ることがあるので注意が必要です。この記事では急性散在性脳脊髄炎について解説しています。

急性散在性脳脊髄炎とは

急性散在性脳脊髄炎は、脳・脊髄・視神経を含む中枢神経系に脱髄(神経線維を取り囲む髄鞘が破壊されること)と炎症を来す疾患です。
原因がはっきりしない特発性以外にも、ウイルス感染やワクチン接種がきっかけになって起こることがあります。

重い後遺症を残すことが多く、死亡率も高い疾患です。ワクチン接種後1〜4週間以内に発生することが多く、発熱、頭痛、意識障害、運動麻痺や小脳症状による歩行障害、感覚障害などの症状が出現した場合にはこの病気の可能性があります。特にワクチン接種がきっかけのものは、その後の経過が悪い傾向があるといわれています。

何が原因で発症する?

原因がはっきりしない場合も多いですが、前述のようにウイルス感染、あるいはワクチン接種が契機となっているケースもよく見られます。免疫が自分自身の体を攻撃してしまう「自己免疫異常」が原因ではないかと考えられています。

天然痘や黄熱病、腸チフス、結核、狂犬病、ポリオなどさまざまなワクチンが原因になるといわれていますが、まだ確証がとれたわけではありません。
日本においては、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチン、日本脳炎ワクチンの三種類のみが急性散在性脳脊髄炎の発症と関連があると考えられています。

急性散在性脳脊髄炎の症状

前述のように、ワクチン接種の場合、接種後、発症までの期間はだいたい1ヶ月以内ですが、発症は急性であり、頭痛・発熱・嘔吐からはじまり、意識障害や痙攣を起こすこともあります。また、脳幹・小脳の症状として小脳失調やミオクローヌス、眼振、眼球運動障害、眼球麻痺なども現れ、劇症型になると急速に進行し死に至ることも少なくありません。

ワクチン接種後に

① 1~4週間以内に疑わしい症状が現れた
② 発熱や頭痛があり、意識が混濁している
③ 目が見えにくい
④ 手足が動きにくく、歩きにくい
⑤ 感覚が鈍い

などの症状がある場合には注意が必要です。

病院ではどうやって治療するの?

急性散在性脳脊髄炎は、有効性が確立した治療法が見つかっていません。しかし、少数例ではありますが、ステロイド大量療法(ステロイドパルス療法)が有効であるという報告があるため、実施されることが多いようです。また、免疫グロブリン大量療法や小児の場合のステロイド大量療法を行った場合、1から2割程度ではありますが、30日から60日以内に何らかの症状が再燃することが知られています。

そのため大量療法後に6週間にわたって徐々に減量する方法を採ります。しかし、改善したとはいえ予後は不良な場合が多く、とくにワクチン接種後の場合は、死亡率、あるいは重篤な後遺症の発生率が高いといわれています。

おわりに:治療が遅れると重症化することも。ワクチン接種後に疑わしい症状があるときは病院に相談を

急性散在性脳脊髄炎の多くは原因がわからない特発性のものですが、ワクチン接種後に発症することも少なくありません。ワクチン接種後に疑わしい症状が現れたときは、早めに病院に相談しましょう。

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