記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2017/12/15
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
歯根破折とは、歯にヒビが入ってしまった状態を表す歯科用語です。軽いヒビの場合は見た目にわからないことも多く、知らないうちに悪化してしまうケースがあります。この記事では歯根破折について詳しく解説していきます。虫歯がないのに歯が痛むという人は参考にしてください。
歯根破折とは、何らかの理由によって歯の根元部分にヒビが入ってしまった状態を指します。この状態を放置しておくと、ヒビは次第に大きくなります。すると次第に歯は不安定になり、やがて完全に割れてしまいます。
さらに、ヒビがある状態を放置しておくと、細菌が入りやすくなります。細菌が侵入してくると歯の根元部分が溶かされ、その後の治療にも大きな影響が出まることがあります。これはひび割れた歯や、侵入してきた細菌によって起きるものとなります。
歯根破折は歯茎の腫れなど様々なトラブルの原因になりますが、歯根破折は起きてもすぐに症状が現れるわけではありません。見た目もあまり変わらないため、自分では気づきにくいです。
歯根破折を発症すると、ヒビの入った歯や歯茎の部分に痛みが生じるようになります。また、噛んだときに歯と歯が当たった衝撃で痛みが出ることも少なくありません。さらに、歯根破折は歯はバランスが悪くなる原因になるため、かぶせものが外れやすくなったり、他の歯がぐらつくなどのトラブルが起こることもあるのです。
そしてさらに、ヒビから細菌が入り込んでしまうと膿を生じるようになり、歯茎が大きく腫れ、歯を支える骨が溶かされてしまい顎の骨にまで影響が出るケースもあります。
そのため、歯根破折は早期発見が重要となります。ヒビができてしばらくの間は自覚症状がないため、X線(レントゲン)などで確認する必要があります。
歯根破断が起きる原因としては、歯に過度の力が加わることが挙げられます。
例えば、歯ぎしり、スポーツなどで強く噛みしめることが多い、日ごろから硬いものをよく食べているなどは、それだけ歯に過度の力がかかっていることになります。また、歯並びが悪いと、歯の一部分にだけ力がかかりやすくなるため、歯根破断を引き起こすことがあります。
また、虫歯などが原因で歯そのものが弱っていると、少し力が加わっただけでヒビが入りやすくなってしまいます。その他、固い金属の土台が入っていることも歯を損傷させてしまう原因となります。
ヒビの程度が軽いものに関しては、口腔内で接着する「口腔内接着法」が行われます。これは損傷した箇所を十分洗浄した後に専用の接着剤でヒビをふさいでいく治療法です。
ヒビがひどい場合は、口腔外接着再植法を行います。これは一度抜いた歯を接着してから再移植する方法です。
以上の治療法では回復が難しいと判断された場合は、抜歯を行い、歯がなくなった部分を義歯で補うことになります。
歯根破折は、初期の頃は見た目でわからないことも多いため、放置されがちです。悪化すると細菌の感染が顎の骨にまで広がってしまうおそれがあり、治療も長期化してしまいます。痛みや違和感を感じた段階で、必ず歯科医に相談するようにしましょう。また、歯に負担をかけないように日ごろから工夫するようにしてください。