記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2017/12/12 記事改定日: 2019/9/20
記事改定回数:1回
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
未熟児網膜症は、予定日よりも早く生まれた未熟児の赤ちゃんに多い眼の病気です。ひどいときには失明のおそれもあるため、適切な治療が必要になります。この記事では未熟児網膜症の症状や早期発見のために大切なことを解説していきます。
未熟児網膜症とは未熟児によく見られる視力の低下や失明などの症状があらわれる病気です。
赤ちゃんの目は妊娠3週目という早い段階から形成されはじめますが、網膜に栄養を送る働きを行う血管は妊娠16週目あたりから発達しはじめ、最終的には妊娠36週目頃に完成します。
このように長い時間をかけて目ができあがっていくのですが、未熟児だと網膜の血管が完成する前に生まれてしまうため発達が中途半端になってしまい、血管が枝分かれしたり、新たな血管ができたりし、通常とは違う発達をしてしまうことから網膜剥離を起こしてしまうことがあります。
未熟児網膜症は大きく分けて2つのタイプにわかれます。徐々に進行するⅠ型と急激に進行するⅡ型です。どちらに分類されるのかは出生後に検査をするまでは分かりません。
未熟児網膜症は見た目で判断することはできません。発見するには眼科で検査を受ける必要があります。通常は未熟児網膜症のリスクがある赤ちゃんは新生児期に目の検査が行われ、その後も定期的な経過観察がなされます。医師から指示があった場合は必ず検査を継続して目の状態を確認するようにしましょう。
また、医師から検査の指示が出ていない場合でも
など、視力の異常が疑われる症状がある場合はできるだけ早く病院に相談するようにしてください。
未熟児網膜症は、治療したとしても高頻度で近視や斜視、弱視などの症状が見られ、程度は違えど何かしらの視力障害が残る可能性があります。
Ⅰ型の症状は5段階に分けられます。1~2段階目までは自然治癒の可能性があるので経過観察になりますが、3段階目からは網膜剥離になる危険性が上がるので治療が検討され、治療となった場合は基本的にレーザー治療が施されます。
そして4~5段階目になってしまうと網膜剥離を起こしている状態になってしまうため強膜輪状締結術や硝子体手術などの手術を行わなければなりません。
Ⅱ型の場合は急速に症状が進行しているため放置するのは危険です。そのためⅡ型と診断されたらすぐに治療に入ります。治療方法はⅠ型と同じくレーザー治療や手術になります。
生まれたらすぐに検査を行い、例えⅠ型の1~2段階目だったとしても、検査後に悪化する可能性もあるので、定期的に検査しながら様子を見てあげましょう。
自然に治った未熟児網膜症については、網膜症自体が視力に悪影響を及ぼすことはないとされています。
しかし、予定日より早く出生した赤ちゃんには、近視や乱視、斜視などが起こることがあるようです。また、脳内出血や脳室周囲白室軟化症などの脳の病気を持っている場合は、視力の成長が阻害される可能性があります。
治療が必要な未熟児網膜症は、障害の度合によって予後が変わってきます。黄斑部(網膜の中心部。視細胞が集中している部位)に障害がなければ、視力低下がみられても日常生活を妨げるほどにはならないとされていますが、近視になることが多いので、メガネなどで視力矯正する必要は出てくるでしょう。
黄斑部に障害が起こったり、網膜剥離を起こしているものについては、視力に重度の障害が残る可能性が高いです。治療後も定期的な検査が必要になります。
未熟児網膜症は、予定日よりも早く生まれた未熟児の赤ちゃんがかかる可能性が高い病気です。
未熟児の場合、通常は生後3週間までに検査するとされているので必ず検査を受けるようにしてください。また、検査後や治療後も定期的な検査が必要です。赤ちゃんの様子をチェックしながら、医師と相談のもと長期的にケアしていきましょう。