記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2017/11/10
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
お子さんがアレルギー性結膜炎を患っている場合、重症化すると「春季カタル」に発展する可能性があります。今回の記事では春季カタルについて、具体的な症状や原因、治療法を解説していきます。
春季カタルとは、アレルギー性結膜炎が重症化し、目の粘膜が腫れるといった症状が起きた状態のことです。アレルゲンに対する防御反応によって発症するもので、小児や青少年などの子供に多くみられます。
春から夏にかけて発症しやすいことからこの病名がつけられましたが、近年の環境変化によって季節を問わず発生するようになりました。特に季節の変わり目などに症状が悪化しやすいと言われています。
春季カタルになると目の痒みや痛み、充血、異物感などといった症状が出てきます。5歳頃に発症して10歳前後で症状のピークを迎えることが多く、それ以降は症状が軽くなり、自然治癒することがほとんどです。しかし、中には20歳を過ぎても症状が続いてしまうという人もいます。
また、春季カタルを発症すると、上まぶたの裏側に凸凹がたくさんできてしまうことがあります。そしてこの凸凹ができた影響で、瞬きによって角膜に傷をつけてしまうことがあります。この傷は激しい痛みを生じさせるだけでなく、視力低下にも発展する恐れがあるので要注意です。
春季カタルはアレルギー性結膜炎が悪化した病気であり、原因はアレルギー性結膜炎と同じくアレルゲンです。
まず、人間の体にはウイルスや病原体などから体を守るための働きがあり、この体内に入ってきた異物を排除する働きのことを免疫と呼んでいます。ただし体質によっては体に害のないものにまで過敏に反応してしまうことがあり、この過敏な反応こそがアレルギー反応と呼ばれるものです。なお、春季カタルになる人の70%以上がアトピー性皮膚炎を発症しているというデータもあります。アトピー性皮膚炎があると眼瞼皮膚炎や角結膜炎、白内障などのリスクも高くなるため、春季カタルの症状がなくても定期的に目の検査を受けた方が良いでしょう。
春季カタルの治療では、主に抗アレルギー点眼薬が処方されます。ただ、重症の場合はステロイド薬の結膜下注射が行われることもあります。しかし、ステロイド薬は長期間使用すると緑内障などの副作用のリスクがあるため、症状が軽くなったら非ステロイド性の抗アレルギー薬などに切り替えるのが一般的です。
なお、治療中は目を擦ったり刺激を与えたりすると症状が悪化してしまうこともあるため、できるだけ触らないようにしましょう。また、症状が酷くなると光に過敏になることもあるので、その場合は眼帯や遮光メガネをかけるなどの対策を講じましょう。
春季カタルは、学童期の子供が発症することの多い目の症状のひとつです。お子さんがすでにアレルギー性結膜炎を発症している場合は、春季カタルに移行しないよう、適切なケアや治療を事前に始めておくことが大切です。