周期性四肢麻痺の発作時の治療と日常生活での注意点は?

2017/11/7 記事改定日: 2020/1/15
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

周期性四肢麻痺は全身の筋肉が脱力してしまう病気です。完全に治すことは難しいですが、症状を抑え日常生活が送れるように対処することはかのうです。
この記事では、周期性四肢麻痺の治療や支援制度、日常生活を過ごすうえでの付き合い方について解説しています。

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周期性四肢麻痺の発症のメカニズムは?

周期性四肢麻痺とは、全身の筋力が失われ、しばらくして正常に戻るという可逆性疾患(元の健康な状態に戻らない病気)のことをいいます。

発作は急に起こることが多く、突然脱力したのちにしばらくして回復するという繰り返しなので日常生活に支障をきたす病気です。そのためこの病気とうまく付き合っていくことができるような生活スタイルを考えていく必要があります。

周期性四肢麻痺は、体内の「イオンチャネル」が大きく関係しています。体細胞では電解質の濃度に差があり、この濃度差を調節するために細胞膜にはチャネルと呼ばれる通路が様々存在しています。これらのチャンネルが異常な状態になることが周期性四肢麻痺の原因です。

一般には常染色体優性遺伝疾患として考えられており、発作時の血清カリウム値によってタイプが分類されます。
東アジア地方では甲状腺機能亢進症に伴う低カリウム性周期性四肢麻痺が多く、この場合には内分泌疾患として治療が進められます。甲状腺機能亢進症を伴わない場合には遺伝性疾患となり難病に指定されています。

周期性四肢麻痺と、どのように付き合っていけばいいの?

周期性四肢麻痺には根本的な治療がないため、発作時の対処や予防などが必要不可欠となります。

発作で体が脱力したとしてもそれ自体が直接命を脅かすことはありませんが、脱力はケガや事故などを招くおそれがあります。
脱力によるケガや事故のリスクを、日常生活の中でどう気をつけていくのかが、周期性四肢麻痺と付き合っていくためのポイントになります。

日常生活で気をつけること

周期性四肢麻痺の発作では下肢を中心に脱力が生じるため、思わぬケガや事故などを引き起こすことがあります。これらのリスクを避けるためには、なるべく発作を起こさないようにするために、暴飲暴食や激しい運動は避け、規則正しくストレスのない生活を心がけるようにしましょう

また、発作が起こったときには無理をせずに、転倒せずにつかまり歩きできるようになるまで横になったり座ったりして休むようにしてください。

階段で転倒すると大けがにつながりますので、なるべく階段は使用せずエレベーターを使用するようにしましょう。
歩くときも手すりにしっかりつかまって歩くなどの対策を徹底し、転んだときにケガをしにくくなるように、ヒールの高い靴や露出の多い服は避けるなど服装を工夫しましょう。

助成金や支援は受けられる?

周期性四肢麻痺の中でも遺伝性のものは厚生労働省が指定する難病に該当します。このため、医療費の助成を受けることが可能です。
医師から遺伝性の周期性四肢麻痺と診断された場合は支給認定申請書と診断書、課税証明書など必要な書類をそろえてお住いの自治体が指定する窓口に申請しましょう。

申請には1年ごとの亢進が必要ですが、一か月の医療費自己負担額の上限が最高で三万円となります。(収入や年齢、医療内容により異なります)
また、そのほかにも障害年金などを申請できるケースもありますので、支援や助成金などについてはかかりつけの病院の医師や社会福祉士などに相談し、積極的に活用するようにしましょう。

発作が起こったときの治療法は?

周期性四肢麻痺の発作があらわれたときは、血清K(カリウム)の是正を行います。
低カリウム血症の場合は輸液を行い、高カリウム性の場合には経静脈的にカルシウムを投与します。

発作には誘因があり、糖質の摂取後に発作が起こりやすい傾向にあります。それは血糖値の上昇に伴いインスリンが分泌されることでブドウ糖とカリウムイオンが血中から細胞内へ取り込まれ低カリウム血症が増悪するためだといわれています。

また、発作の予防のために日頃から炭水化物のとりすぎに注意し、摂取した後はあまり外出をしないようにする必要があります。

おわりに:病気自体の症状で死ぬような危機はないが、脱力に纏わる事故には備える必要がある

周期性四肢麻痺は急に脱力が起こる病気です。その症状自体で生命の危機に及ぶことはありませんが、脱力したときに物を落としたり転倒したりすることによるトラブルには備える必要があります。医師に相談しながら発作を抑える治療を続け、ライフスタイルを見直してトラブルに対処しましょう。

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