記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/13 記事改定日: 2020/8/31
記事改定回数:4回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ストレス社会の現代では慢性胃炎に悩む人が多いですが、「表層性胃炎」という慢性胃炎があります。この記事では表層性胃炎の原因や治療の流れ、再発予防のために注意することについてわかりやすく解説していきます。
胃炎には、急性胃炎と慢性胃炎があります。前日に飲みすぎたり食べ過ぎたりしたときに、胃の不調を感じるのは急性胃炎です。
一方、慢性胃炎は、ずっと続く暴飲暴食やストレスなどが原因で、胃粘膜が傷つくことが繰り返されている状態です。
慢性胃炎は、重症度の軽い順に以下の4つに分類されます。
この記事で取り上げる表層性胃炎は、慢性胃炎の初期症状といえます。内視鏡で見ると、胃粘膜表面に赤く充血が認められ、炎症が確認されます。
慢性胃炎では、胸やけや胃もたれ、食欲不振、げっぷ、空腹時の胃痛などの症状があります。その中でも表層性胃炎では比較的症状は軽く、なんとなく胃が重いと感じる人が多いようです。
内視鏡検査をすると胃粘膜に異常が認められますが、自覚症状がない人が半数近くいるといわれています。
多くの胃の不調に関与しているといわれている一番の原因が、ピロリ菌の感染です。
ピロリ菌は、胃酸のような酸性下でも活動できる細菌です。胃に負担をかけている覚えがないのに、胃の不調が続く場合、ピロリ菌に感染していることが考えられるので、検査をおすすめします。
また、表層性胃炎は他の胃炎と同様に、以下のような原因により胃粘膜に負担がかかることで発症します。
ストレスは表層性胃炎の主な原因のひとつです。
ストレスは自律神経のバランスを乱すことが知られていますが、消化管の運動を促す副交感神経が過度に働くと胃酸の分泌が盛んになります。その結果、胃の粘膜にダメージが加わることで表層性胃炎を引き起こされると考えられてます。
また、ストレスは、副交感神経とは反対の働きを持つ交感神経を活発にすることもあります。交感神経の働きが活発になると消化管の運動が低下するため、胃酸の分泌量も減ります。その一方で、交感神経は全身の血管を収縮させる働きがあるため、胃の粘膜に十分な血流がいかなくなることで粘膜の状態を悪化させ、少量の胃酸でもダメージを受けやすくなるとも考えられています。
その他にも、ストレスによる免疫力の低下なども表層性胃炎の要因になることもあります。
表層性胃炎は、慢性胃炎のうち最も症状が軽いものではありますが、それ以上症状が進行しないように早い段階での診断、治療が重要です。
慢性胃炎の診断は、胃粘膜の状態を把握するために、内視鏡検査(胃カメラ)で行われます。炎症の進行度により、内視鏡により肉眼で、はじめに紹介したように4つに分類されます。
表層性胃炎と診断された場合は、他の慢性胃炎と同様に治療が行われます。
症状がある場合は、制酸薬・胃粘膜保護薬・消化管機能改善薬といった薬を、症状に合わせて服用します。
ピロリ菌の除菌は、2種類の抗生物質(アモキシシリン、クラリスロマイシン)と胃酸分泌を抑える薬の服用を一週間続ける薬物療法によって行われます。
多くは飲み忘れや飲み間違いがないよう一週間分の薬が1シートにされたものを使用しますので、指示通りに服用を完了すれば治療は終了します。
ただし、除菌治療を行っても確実にピロリ菌を退治できるとは限りません。
治療後は1~2か月を目途に検査を行い、除菌が成功しなかった場合は抗生物質の種類を変更して再度除菌治療を行います。
薬で治癒した後も、再び表層性胃炎にならないためには、原因の除去が大切です。たばこやアルコール、香辛料などを控えるなどの食事の見直し、7~8時間の十分な睡眠を取るなどといった生活習慣の見直しを行いましょう。
また、ストレスを感じている人は運動などでストレスの解消を心がけ、ピロリ菌に感染している場合は、除菌治療を検討することをおすすめします。
ピロリ菌は不衛生な井戸水や川の水などから感染することが多く、感染者の唾液などを介して感染する場合もあります。
衛生環境の整っていなかったかつての日本では、生水を飲むことで感染するケースも多く、高齢者に感染者が多いのはこのためです。一方、衛生環境の整った現代では生水を飲むことでピロリ菌に感染することはまずありません。
また、健常な成人であれば、ピロリ菌感染者の唾液を介して胃内にピロリ菌が侵入しても胃酸の作用によりほとんどの場合で死滅します。
上記に当てはまる人は、感染者の唾液などを介して感染することがあります。健常な成人でも表層性胃炎など胃の機能が低下している場合にはピロリ菌に感染してしまうことがあります。
身近にピロリ菌の感染者がいる場合は、表層性胃炎が治った後でもピロリ菌感染対策を十分に行って再感染を予防しましょう。また、胃腸の機能低下を防ぐためにも、食生活や睡眠などの生活習慣を整えて胃にやさしい生活を送るようにしてください。
表層性胃炎は慢性胃炎の初期段階で、胃粘膜の表面に軽い炎症が生じている状態です。
初期段階とはいえ、治療のタイミングが遅れれば慢性化するリスクが高まるので、早めの受診が重要です。予防や回復のために生活習慣の改善が大切になってきます。医師と相談しながら治療を進めていき、再発を予防しましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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