記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/6 記事改定日: 2020/3/19
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
赤ちゃんが母乳やミルクを飲むとすぐに水っぽい便を頻繁に出す、大人がたまに牛乳を飲んだあとにお腹がゴロゴロするといった症状は「乳糖不耐症」かもしれません。この記事では、乳糖不耐症の症状や原因、対処法についてお届けします。
乳糖不耐症とは、母乳やミルクを飲んだ赤ちゃんがすっぱい臭いのする下痢を繰り返す病態のある疾患のことです。赤ちゃんや子供に多い病気ですが、大人でも牛乳や乳製品を摂ると必ずお腹を下したり腹部膨満が起こったりと不快な症状がある場合、乳糖不耐症が疑われます。
乳糖不耐症には、「先天性」のものと「後天性」のものがあります。
先天性の乳糖不耐症は、酵素のひとつである「ラクターゼ」の働きが悪いために起こる疾患です。母乳、ミルク、牛乳などの乳製品に含まれる「乳糖」という糖質を吸収するためには、ラクターゼの働きが欠かせません。
本来、ラクターゼが小腸でブドウ糖とガラクトースに分解し、腸壁から吸収されて血液中に移行していきますが、ラクターゼが欠乏していると乳糖を消化できないため、腸壁から吸収できない状態になります。
その結果乳糖は消化されないまま大腸へ流れ込み、浸透圧性の下痢を引き起こし、腸内細菌によって乳糖が発酵して腹部の膨満状態(腸にガスが貯まる)になります。
後天性のものは「2次性乳糖不耐症」と呼びます。ウイルスや細菌が原因の急性胃腸炎に罹患した際に、腸の粘膜の機能が低下することで、一時的にラクターゼの働きが不良になり下痢が起こります。
赤ちゃんが乳糖不耐症になった場合、ミルクの種類に注意しなければなりません。市販の通常のミルクには乳糖が含まれていますので、乳糖を含まないタイプのミルクを選ぶ必要があります。いわゆる、ノンラクトミルクなどという名称で販売されていますので、どのようなミルクがよいのか医師とよく相談しましょう。
また、母乳にも乳糖が含まれているため、乳糖不耐症の赤ちゃんが母乳を飲むと下痢などの症状を引き起こす可能性があります。最も良い対処法は、母乳を中止して乳糖を含まないミルクを利用することです。しかし、母乳には多くの免疫が含まれており、赤ちゃんとお母さんとのスキンシップとしても授乳は非常に重要な役目を果たします。
乳糖不耐症の赤ちゃんへ母乳育児を続ける場合には、人工的に生成されたβ-ガラクトシダーゼを一緒に服用させることで乳糖の消化不良を解決することができます。ただし、β-ガラクトシダーゼの効果には個人差があります。赤ちゃんの症状や発育の程度を考えて、医師と哺乳方法についてよく相談しましょう。
生後五か月頃を迎えると、徐々に離乳へ向けて、少量ずつからの離乳食がスタートします。
離乳食はタンパク質や炭水化物、野菜、乳製品などをバランスよく取り入れることが大切ですが、乳糖不耐症の赤ちゃんの場合には、牛乳やミルクだけでなく、ヨーグルトやチーズなどの乳製品は避けなければなりません。
市販のベビーフードやおやつにも思わぬものに乳製品が使用されている場合がありますので、必ず成分表示のチェックをするようにしましょう。
乳糖不耐症かどうか判断するポイントはなんでしょうか。どんな症状があれば乳糖不耐症を疑ったほうが良いのか、以下で解説していきます。
赤ちゃんの乳糖不耐症は、生まれつき体内でラクターゼが作られない体質であること、風邪などで腸に炎症が生じてラクターゼの産生が減少してしまうことが挙げられます。
生まれつきラクターゼの産生量が少ないケースでは、成長しても乳糖不耐症が治ることはありません。しかし、乳糖を除いた食事を心がけて適切な治療を続けていくことで症状を抑えることができますので、通常と変わらない生活を送ることができます。
一方、風邪などが原因で生じる乳糖不耐症は、腸の炎症が治まればラクターゼの産生量は徐々にアップしていきますので自然に治ることがほとんどです。
また、乳糖不耐症の治療は、乳糖を含まない食事を徹底し、乳糖を分解する作用のあるβガラクトシダーゼと呼ばれる薬の内服を続けるのが一般的です。
成人の場合にも、基本的には乳製品を避ける必要があります。しかし、乳幼児とは異なり、少量であれば乳製品を摂取しても症状が出ない人もいますので、自身の限度量を知ってその分だけの摂取を楽しむ分には健康被害は生じません。
また、腸内細菌を正常化して大腸に乳糖分解酵素を定着させるため、乳酸菌の多く含まれたものを少量ずつ摂取するのもおすすめです。
乳糖不耐症は、ラクターゼという酵素が欠けている、または活性化できない状況で引き起こされます。乳製品を摂取したあとから下痢等の症状がある場合には、乳糖不耐症を疑うことも必要かもしれません。まずは病院で相談し、ノンラクトミルクなどの代用品を使いながら上手く対処していきましょう。