記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/6 記事改定日: 2019/4/3
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
腰椎分離症(脊椎分離症)とは、脊椎の椎体と椎弓が離れてしまっていることです。疲労骨折や生まれつきなどが原因になりますが、どんな症状が起こるのでしょうか?
この記事では腰椎分離症(脊椎分離症)の基礎知識について解説しています。
腰椎分離症とは、腰椎が疲労骨折して、椎間関節を構成している椎体と椎弓(腰椎の後ろ側のリング状の形をした部分)が離れている状態です。
腰は5つの腰椎からなりたっていますが、腰椎分離症は第5腰椎に多く見られます。
主な症状として、腰を反らせたり捻ったり、走ったりしたときの腰痛が挙げられます。腰が抜けたような頼りない不安感も特徴の1つです。
腰椎分離の発生確率は、男性で3~7%、女性で1~4%と報告されています。またスポーツを行っている成長期に発生することが多いので、活動性の高い子供が腰痛を訴えたときは注意しましょう。
腰椎分離症となる原因としては、先天性のものと後天性のものとに大別されます。
先天性のものは椎体や椎弓の生まれつきの異常が原因です。
しかし分離症のほとんどは、スポーツなどで腰椎に加わった過剰なストレスの繰り返しといった後天的な疲労骨折が原因と考えられています。
腰椎では5個の椎骨が連なっていますが、分離が発生するのは腰椎後方の上関節突起と下関節突起の間の関節突起間部です。
この部分に腰椎の屈伸、回旋が繰り返し加わることにより疲労骨折が生じることで発症します。ほとんどが第5腰椎(90%)に発生しますが、これは第5腰椎が上体と骨盤の境目にあたり上体の負荷が集中するためと考えられています。
腰椎分離症の痛みは、腰痛症と類似しており、まれに下肢の痛みや痺れが出ることもあります。長時間同じ姿勢でいると腰が痛くなったり、背中を後に反らせたり、腰掛ける、立つ、歩くなどの連続して同じ動作を続けるのが辛くなります。
また、腰椎分離症で腰椎が不安定になることで、腰椎が前方へすべってしまうと腰部のバランスがさらに悪くなり、分離すべり症に発展したり、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症といった脊椎疾患などにつながる可能性があるので注意が必要です。
腰椎分離症の治療法は、急性期であれば、約2~3ヶ月間、すべての運動を禁止し、硬性コルセットを装着することで分離部の骨癒合を図ります。初期の腰椎分離症の場合、固定とストレッチなどの適切な治療を行った場合は、90%近くのケースで腰椎の癒合が期待できるといわれています。運動を禁止している間は、腰椎を安定させるための体操が大切です。腰部・骨盤の筋を伸ばすストレッチと強化の2点を主眼に行います。
薬物療法では、痛みに対し筋弛緩薬や消炎鎮痛薬を用います。その他、保存療法に関しては他の脊椎疾患と同じように、腰痛に対しての理学療法や、下肢痛に対しての神経ブロック療法などがあります。
コルセットによる固定と安静や、薬物でも痛みが治まらない状態が続く場合は、分離を癒合させる手術を行います。分離すべり症にまで進行している場合は脊椎固定術が用いられます。
腰椎分離症では、薬物療法やブロック注射、リハビリなどを行っても症状が改善しない場合、手術が行われることがあります。
腰椎分離症に対して広く行われている手術は、「脊椎固定術」です。
「脊椎固定術」とは、不安定な脊椎の椎骨同士をスクリューやネジなどの強固な器具で固定して脊椎の安定性を回復するための手術です。多くは突出した椎間板や骨棘など、脊髄を圧迫する病変部も同時に切除されます。
また、手術はうつぶせになった状態で行われ、背中の皮膚を切開して脊椎にアプローチする「後方椎体固定」の術式で行わるのが一般的です。
腰椎分離症は、無症状なことも多く気づかないうちに進行している可能性があるだけに、痛みやしびれの症状が現れ始めたら注意が必要です。分離すべり症や脊柱管狭窄症など、他の疾病に発展する前に対処するよう心がけましょう。