記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/17 記事改定日: 2019/5/27
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ミトコンドリア脳筋症とは、いったいどんな病気なのでしょうか?
この記事では、ミトコンドリア脳筋症の検査と治療法についてまとめました。
ミトコンドリア脳筋症とは、細胞小器官の一つであるミトコンドリアに異常が生じる、ミトコンドリア病の一種です。
ミトコンドリア病は主に3つに分類されていますが、ミトコンドリア脳筋症はそのうちの一つの「ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中発作症候群(MELAS)」の病型に分類され、脳卒中のような症状が現れたり、嘔吐や頭痛などが繰り返し起こるのが特徴です。
ミトコンドリアは細胞の内部で呼吸をしてエネルギーを生産したり、糖や脂肪を燃やす燃料としても使用されますが、ミトコンドリアが変異するミトコンドリア脳筋症にかかると、十分なエネルギー生産が行えなくなり、エネルギー需要の多い脳・骨格筋・心筋が異常を起こすことが多くなります。
ミトコンドリア脳筋症は若年で発症することが多く、15歳未満で発症する割合は全体の70%を占めています。
ミトコンドリア脳筋症については様々な検査方法がありますが、主に筋生検、CT・MRI検査、遺伝子検査などが行われます。
筋生検は、歩行時の疲れや手すりなどがないと階段をのぼれないなど筋力が低下している人に適用する検査方法です。筋繊維周辺にはミトコンドリアが多く集まっているので、そのミトコンドリアに異常がないかを調べることによって判断します。
CT・MRI検査は、脳卒中のような症状や痙攣発作、言語障害など脳の異常をきたしているときに行われる検査方法で、頭部のCTやMRIの画像診断によって、ミトコンドリアの異常による脳梗塞類似病変を確認していきます。
遺伝子検査は、頭痛や嘔吐などが続いている人に適用されることが多いです。針筋電図で筋原性変化を行なったり、血液・脳脊髄液検査で乳酸や乳酸ビリルビン酸の値を確認したりします。
ミトコンドリア脳筋症については、根本的な治療法が確立されていないのが現状です。
そのため、現在ではミトコンドリア脳筋症を緩和するための治療が中心で、各臓器の症状に対して対症療法を行い、患者さんの全身状態を改善させていきます。
また、ミトコンドリア脳筋症以外の合併症を引き起こしている患者さんも多いため、その病気についても対処する必要があります。
ミトコンドリア内の代謝経路では各種のビタミンが補酵素として働いているため、その充填を行うことによって症状を緩和することができるとも考えられています。
具体的には、水溶性ビタミン類(ナイアシン、ビタミンB1、ビタミンB2、リポ酸など)の充填をします。また、脳卒中のような症状のある患者さんの場合は、症状を軽減させるためにL-アルギニンが有効とされています。
ミトコンドリア脳筋症の治療中には、日常生活の中で病気を悪化させないよう次のようなことに注意する必要があります。
ミトコンドリア脳筋症は、若い世代での発症率が高い病気です。慢性的な頭痛や嘔吐、筋力低下、あるいは脳卒中のような症状がみられたら、専門の医療機関で検査を受けるところから始めましょう。