ミトコンドリア脳筋症の症状の特徴とは?

2017/11/20 記事改定日: 2019/5/27
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

多くの人には聞き慣れない病名ですが、「ミトコンドリア脳筋症」という病気があります。これは、国の難病に指定されているミトコンドリア病の一種です。今回の記事ではこのミトコンドリア脳筋症の代表的な症状について、タイプ別に解説していきます。

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ミトコンドリア脳筋症の症状とは?

ミトコンドリア脳筋症とは、細胞の中で重要な働きをしている「ミトコンドリア」の遺伝情報に異常があることでさまざまな不調を来たす病気です。症状としては、脳卒中に似た症状や、片頭痛、痙攣、精神症状などが現れます。

発症年齢の約70%が15歳未満と、若い人の発症が多いのが特徴です。発症患者には比較的低身長、低筋力といった特徴が見られるため、症状や特徴から早期に発見し治療することが望まれます。

4つの症状

ミトコンドリア脳筋症には細かく分けて、「TK2遺伝子型」「SUCLA2型」DGUOK型」「ECGF1型」の4つの類型が存在します。それぞれ、異常のある遺伝子の名称によって呼ばれるもので、症状の現れる部位が異なってきます。

TK2遺伝子型
TK2遺伝子型は、主に筋肉に異常が現れるため筋力低下や発育の鈍化、日常の動作がしづらいなどの症状が出てきます。
SUCLA2型
SUCLA2型の場合は主に脳で発症があり、めまい・嘔吐や頭痛に悩まされるほかに、脳からの指令がうまく伝わらないため運動に障害が出る可能性もあります。
DGUOK型
DGUOK型は脳と肝臓に発症するタイプで、めまい・嘔吐と頭痛のほかに肝機能が低下し、肝臓の肥大・代謝異常などが多く現れます。
ECGF1型
ECGF1型は脳のほかに消化管に異常が認められるタイプで、50歳までの発症が確認されている比較的発症の遅い類型です。とはいえやはり大部分は20歳までに症状が現れ、頭痛などのほかに嘔吐や胃痛、神経障害をともなう可能性が高いものです。

どんなときに、どんな病院を受診すればいい?

ミトコンドリア脳筋症では様々な症状が引き起こされますが、特に注意すべき症状は神経系や心臓の症状です。具体的には、以下のような症状や身体の変化が見られた場合はなるべく早めに病院を受診しましょう。

  • けいれんや筋肉の強直
  • 失神や手足の麻痺
  • 筋力の低下
  • 動悸や息切れ
  • 視力障害や視野の異常
  • 黄疸、むくみ
  • 下痢や便秘、嘔気などの消化器症状

また、受診する際にはまずはそれぞれの症状に合わせた診療科を受診して相談するのがよく、いくつかの症状がある場合にはかかりつけの内科などで相談するのも一つの方法です。

ミトコンドリア脳筋症は、何が原因で起こるの?

ミトコンドリア脳筋症は、ミトコンドリアの機能低下が原因で発症すると考えられています。

細胞内にあるミトコンドリアは、正常な状態であれば人体の健康を維持するためのさまざまな働きを担っています。例えば、糖から細胞のエネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)を取り出し、筋肉や細胞に活力を与える、といった役割があります。

しかし、ミトコンドリアに異常があると、筋肉や脳細胞に十分な栄養が行き渡らず全身の代謝や活動に異常を来たします。とくにミトコンドリア脳筋症に関しては脳細胞の働きを阻害していることが多く、吐き気やめまい、頭痛だけでなく意識障害や知能低下、痙攣やてんかんの原因になることもあります。

遺伝

ミトコンドリアの異常は遺伝性のものと考えられています。遺伝は母系であり、母方にミトコンドリア脳筋症の発症者がいた場合はとくに警戒が必要です。

一方、生殖細胞の精子の情報はミトコンドリアには伝わらないため、父系の遺伝は起こらないと考えられています。また必ず遺伝するわけではなく、発症していても症状がごく軽度のため気づかないケースもあります。

おわりに:ミトコンドリア脳筋症の症状はタイプによってさまざま

ご紹介したように、ミトコンドリア脳筋症はそのタイプによって現れる症状が異なるという特徴を持ちます。特に若い方で、いずれかに該当する症状がみられたら、早めに医療機関を受診しましょう。

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