記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/20 記事改定日: 2018/8/8
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
甲状腺の病気としては、甲状腺機能亢進症や低下症などさまざまな種類がありますが、甲状腺が腫れたり、微熱がずっと続いたりする「亜急性甲状腺炎」もそのひとつです。以降で詳しい症状や治療法について解説していきます。
亜急性甲状腺炎はデュ・クェルバン甲状腺炎とも言われ、のどぼとけの下のほうにある甲状腺に急性の炎症が起こる病気です。甲状腺で分泌される甲状腺ホルモンが多量に血液の中に漏れ出ることで、血中の甲状腺ホルモン値が高くなってしまい、甲状腺機能亢進症のような動悸、息切れや微熱、手足のふるえといった症状が出てきます。
亜急性甲状腺炎は他の甲状腺疾患と同じように男性より女性が罹りやすく、30代から40代にかけて発症しやすいとされ、特に30代の女性が患者の90%以上を占めると言われています。
発症の原因はまだ明らかになっていませんが、甲状腺へのウイルス感染が原因という説が有力視されています。風邪のような症状に続いて起こることが多く、罹患した人の血液を調べると、インフルエンザウイルスやアデノウイルスなどを抗原とする抗体が増えているとされ、病状が治まるにつれて抗体の量も減少するという報告もされていますが、ウイルス関与についての結論は未だ出ていないと言われています。
亜急性甲状腺炎の症状は、血液中に漏れ出た多量の甲状腺ホルモンの影響によって、甲状腺機能亢進症、いわゆるバセドウ病とよく似た症状が現れます。微熱が続き発汗も多いことから当初は風邪を疑う人もいますが、風邪薬を服用しても治らず、動悸や息切れ、慢性的なだるさにも悩まされるようになります。また、代謝が活発になり過ぎることで、食欲は旺盛でも太ることはなくむしろ痩せていくのも特徴です。手足が小刻みにふるえるなどの症状も出ます。のどぼとけの下が腫れたり痛みが出てくることで気が付くケースもあります。
亜急性甲状腺炎の場合、バセドウ病と違って、血中の甲状腺ホルモン量が下がると症状がおさまってくるといわれますが、症状が激しく出てしまうと38度から39度もの高熱が出て、甲状腺の一部にしこりができ、耳の後ろ側とともに激しい痛みを感じることがあります。ただ、炎症が強い時にバセドウ病と似た症状が出ても、甲状腺ホルモン量が落ち着くと自然に改善していくという特徴があります。
亜急性甲状腺炎では、主に次の3つの検査が行われます。
亜急性甲状腺炎では、これらの検査を行い、身体所見とそれぞれの検査結果から総合的に診断が下されます。
甲状腺の圧痛などの身体所見があること、検査所見としてCRPが高値であり、甲状腺ホルモンのT4が高値かつ甲状腺刺激ホルモンのTSHが低値であること、超音波検査で疼痛部に炎症変化が見られることが診断基準となり、全て当てはまるものが亜急性甲状腺炎と診断されます。
また、すべてが当てはまらないものは亜急性甲状腺炎「疑い」となり、さらにアイソトープ検査が行われ、放射性ヨードの摂取率が低下したものを亜急性甲状腺炎と診断します。
亜急性甲状腺炎は、一般的には血中の甲状腺ホルモン量が正常に戻ると症状も落ち着き、自然に快方に向かう病気です。そのため軽症の場合は特に治療を行わなくても、早ければ1か月半ほどで、長くかかっても半年程度で完全に治るといわれています。
ただし、甲状腺の痛みが強く高熱も出てしまうような場合は、副腎皮質ホルモンや非ステロイド性抗炎症薬を使って治療していきます。薬の量は症状の度合によって加減し、副腎皮質ホルモンは症状に合わせて通常2ヶ月から3ヶ月間ほど使用ののち、少しずつ薬の量を減らして経過を見ていきます。頻脈がある場合は、脈を抑える薬を併用します。
なお、亜急性甲状腺炎は一般的に再発は少ない病気とされていますが、まれに10年以上経ってから再発してすることがあります。治療による薬の服用によって甲状腺機能低下症になってしまい、今度は逆に分泌が減ってしまった甲状腺ホルモンを補うために、甲状腺ホルモン薬を服用しなくてはならなくなるケースもあるので注意が必要です。
亜急性甲状腺炎は基本的には自然治癒する病気ですが、甲状腺の強い痛みなど重い症状が出た場合は治療が必要になります。ただし、治療薬の投与には一定のリスクがありますので、主治医とよく相談した上で治療に臨むことが重要です。