神経線維腫症ってどんな病気?I型とII型の違いとは?

2017/11/27 記事改定日: 2019/3/25
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

国の難病に指定されている「神経線維腫症」は、さらに「I型」と「II型」に分けられます。では、両者はそれぞれどういった特徴を持つのでしょうか。症状や原因、治療法の観点からそれぞれの違いを解説します。

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神経線維腫症のI型とII型って何が違うの?

神経線維腫症とは、末梢神経から発生する良性の腫瘍の一種です。神経線維腫症にはI型とII型の2種類があります。

I型
神経線維腫症I型は、体の皮膚に小さな腫瘍がいくつもできる病気です。カフェオレ斑と呼ばれるミルクコーヒーのような茶色の斑も見られます。カフェオレ斑は、生まれた時からあるのが一般的です。
II型
神経線維腫症II型は、脳神経と脊髄神経に腫瘍ができる病気のことをいいます。聴神経鞘腫による難聴やふらつき、脊髄神経鞘腫による手足のしびれや知覚低下といった症状があります。歩行障害や半身麻痺、視力障害、嚥下障害などの症状が出る場合もあります。

どちらも難病に指定されており、I型の患者の方がII型よりも多いといわれています。なお、I型もII型も失明するリスクがあります。

神経線維腫症の原因

神経線維腫症は遺伝性の疾患といわれており、染色体にある遺伝子の一部が正常に機能しなくなることによって発症すると考えられています。
親からの遺伝によって発症する場合もありますが、I型II型とも半数以上は両親がこの病気を患っておらず、突然変異によって発症しています。

なお、神経線維腫症I型は、第17番目にある染色体17qにあるNF1という遺伝子の変異が原因とされ、ニューロフィブロミンというタンパクが正常に働かなくなることで発症します。
一方の神経線維腫症II型は、22番目にある染色体22qにあるNF2という遺伝子の変異が原因です。II型はmerlinというタンパクが正常に働かなくなることで発症します。

神経線維腫症の症状

神経線維腫症I型の場合には、出生直後からカフェオレ斑と呼ばれる色素異常が見られます。その後児童期から思春期前後になると、皮膚やその下の皮下組織に瘤のような腫瘍が現れます。次第に数が増えていくことが多いですが、急激に増える場合とゆっくり増える場合があります。巨大化したり、悪性化してしまうこともあります。

神経線維腫症II型の場合は、脳と脊髄の神経に腫瘍ができます。有名な症状の1つが両側の聴神経腫瘍で、耳の聞こえが悪かったり、耳鳴り、ふらつき、頭痛などの症状が現れます。また、脳神経や脊髄神経に腫瘍が多発することにより、歩くことが困難になったり、食べ物を飲み込むことができない、痙攣、手足のしびれなどの症状が現れることがあります。

神経線維腫症の治療法

神経線維腫症I型は根本治療の方法がありません。治療は対症療法になり、皮膚の病変であれば皮膚科や整形外科医が対応し、手術で切除する場合もあります。
骨に病変がある場合には整形外科医、成長や発達に問題がある場合には小児科医が処置することとなります。カフェオレ斑にはレーザー治療などが行われることもあります。

一方の神経線維腫症II型の場合、症状が現れた時は手術によって腫瘍を摘出します。聴神経腫瘍の場合は聴力を失う恐れがありますし、腫瘍が大きくなると命に関わることもあるので、手術によって摘出するのが望ましいとされています。
しかし、手術をしても聴力を温存できない場合も多いので、経過をよく見て手術をするかどうかを選択します。

日常生活で気をつけることはある?

神経線維腫症にはⅠ型とⅡ型がありますが、それぞれ日常生活の中で以下のようなことに注意する必要があります。

Ⅰ型

成長と共に、皮膚に神経線維腫のしこりが形成されるようになります。無症状な場合には治療を行う必要はありませんが、背中など摩擦しやすい部位にできたものや美容上の観点から気になるものは切除手術が行われます。

また、成人を迎えたころから脊椎を始めとする骨が変形したり、脳や脊髄に腫瘍を形成して神経障害を引き起こすことがありますので、手足のしびれや脱力など何らかの神経症状が現れた場合には速やかにかかりつけ医に相談することが大切です。

さらに、血圧の上昇を引き起こす副腎腫瘍や消化管腫瘍を発症することもありますので、日頃から血圧や体重の管理などには十分に注意し、症状がない場合でも定期的に検査を受けるようにしましょう。

Ⅱ型

Ⅰ型と異なって生まれつきの皮膚症状がなく、10~20代で両側の聴神経腫瘍や脊髄神経腫瘍などを引き起こすのが特徴です。特に聴神経腫瘍は発症頻度が高く、若年者では急激に腫瘍が大きくなって難聴や耳鳴り、めまいなどの症状が見られるようになります。

その他にも、頭痛や吐き気、けいれんなどの脳腫瘍に特徴的な症状や、腫瘍ができる場所によっては顔面神経麻痺、歩行障害、嚥下障害、視力障害などを引き起こすことも少なくありません。

発症した場合はなるべく早く治療を開始することが望ましいため、耳の聞こえに違和感がある・耳鳴りがする・めまいがするなどの症状が見られた場合には早急に病院を受診して担当医に相談するようにしましょう。

おわりに:神経線維腫症の症状や治療法はタイプによってさまざま

神経線維腫症はタイプによって現れる症状が異なり、とるべき治療法も異なっていきます。まずは専門の医療機関にて診断を受け、ご自身の神経線維腫症がどちらのタイプか把握することが重要です。

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