記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2017/12/15 記事改定日: 2019/3/22
記事改定回数:1回
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
歯牙腫は腫瘍の一種です。腫瘍というとがんをイメージする人も多いでしょうが、歯牙腫は基本的に良性腫瘍とされています。今回はこの歯牙腫について、手術の必要性と併せて解説していきます。
歯牙腫とは、必要のない小さな歯の組織が、顎の骨の中に埋まっている状態担っていて、10~20代の若い人に発症することが多いといわれています。
歯牙腫には、歯を形作る組織がばらばらに埋まっている複雑性歯牙腫と、歯と同じような構造の組織がいくつも埋まっている集合性歯牙腫の2種類があります。
自覚症状もあまりなく、歯科医で定期検診を受けたり歯列矯正する際に発見されることが多く、成長期の子供の場合、歯並びに影響が出ることもあります。
歯が形成される際、歯胚と呼ばれる将来的に歯に変化する組織が発生します。この歯胚が成長していくときに、何らかの形成異常が生じることで歯牙腫が形成されると考えられています。
しかしながら、なぜ歯胚に形成異常が生じてしまうのかはわかっていません。遺伝的な面が関わっているのではないか、成長途中に起こった問題や衝撃、慢性的な外傷などが関わっているのではないか、などさまざまな説が唱えられています。
歯牙腫の治療方法は、骨の中に埋まっている不必要な組織を取り除く外科手術が選択されることが多いです。
歯牙腫は良性の腫瘍なので、痛みなどの不都合がなければ放置して問題ないのでは、と思われがちです。実際、ただちに手術の必要はないといわれることが多いのですが、最終的にほとんどの患者は手術を受けることになります。
その理由として、一つは痛みが伴うことがあるという点です。痛みを伴わないこともありますが、痛みを感じる場合は、症状を改善する元となるものを取り除く必要があります。またじわじわ成長していくので、放置しておくと痛みが出始めることもあります。
そして、これから生えてくる永久歯の邪魔をしたり、歯並びが悪くなるという点も挙げられます。スムーズな歯の生え変わりを助け、健康な歯に影響を与えないようにするためには、歯牙腫を除去するのが良いことが多いです。
歯牙腫の手術方法は、腫瘍の大きさや顎骨へのダメージなどによって大きく異なります。
腫瘍が小さく、顎骨へのダメージが少ない場合には腫瘍やその周辺組織のみを摘出する手術が行われます。
一方、腫瘍が大きく顎骨に大きなダメージを与えているような場合には顎骨の一部を切除する必要があり、広範囲を切除する場合には骨移植やチタンプレートなどを用いて顎骨の再建手術が行われます。
いずれの場合でも、手術は全身麻酔が必要になるため、入院が必要になる場合がほとんどです。
歯牙腫は良性腫瘍ではありますが、放置していると痛みを引き起こしたり、歯並びを悪くすることがあります。歯牙腫が発見されたら、歯科口腔外科などの専門機関を早めに受診するようにしましょう。