記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/22
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
インフルエンザなどに感染した後、喉が痛くなり、声がかすれてしまった場合、「急性喉頭炎(きゅうせいこうとうえん)」の可能性が考えられます。詳しい症状や治療法について、以降で解説していきます。
喉頭は咽頭と気管の間に位置している器官で、吸い込んだ空気を肺まで送り込む役割、モノを飲みこんで胃まで送り出す役割、声帯を震わせて発声させる役割を司っています。急性喉頭炎は、何らかの原因で喉頭の粘膜に急性炎症が起きる病気全般を指します。
急性喉頭炎は、喉頭鏡やファイバースコープを用いて、喉頭に赤く腫れたり、白いできものができている部分があるかどうかを調べることで発見することができます。病院で医師が喉頭に炎症が起きていると判断したとき、急性喉頭炎とカルテに記載することはあまりなく、炎症がおきた喉頭内の部位を用いて病名が記載されます。例えば、声帯で炎症が起きれば急性声帯炎、喉頭蓋と呼ばれる喉頭の上部にある器官で炎症が起きていると急性喉頭蓋炎と診断されます。
急性喉頭炎にかかったときにあらわれる主な症状には、のどの違和感や痛み、嚥下障害、痰、咳、発熱、声のかすれ、音声障害があり、声帯で強い炎症が起きると声が全くでなくなってしまうことがあります。喉頭炎は十分に治療しないまま何度も急性炎症の発症を繰り返すと、慢性喉頭炎となり、のどの状態が回復するまでに長い時間をかけなければならなくなります。
また、急性喉頭炎は合併症がおきやすい病気でもあり、症状が酷くなると、喉頭の周辺の組織でも炎症が起きるようになります。代表的なのは咽頭炎、扁桃炎、副鼻腔炎で、これらのうちのいずれかが合併すると、急性喉頭炎の症状に加えて頭痛や鼻水、鼻詰まり、口臭の悪化などの症状があらわれるようになります。
急性喉頭炎を発症する原因として特に多いのは、細菌やウイルスの感染です。喉頭で炎症を起こしやすいウイルスとしてはインフルエンザウイルスやRSウイルスなどが、細菌ではブドウ球菌や肺炎球菌などが挙げられます。ウイルスや細菌が原因で起こる急性喉頭炎は他人に感染することがあるので、治療中はマスクの使用が欠かせません。
また、細菌やウイルスに感染していなくても、声を酷使していたり、タバコの煙を必要以上に吸ってしまったり、空気が乾燥した場所で長時間活動をしたりしていると、急性喉頭炎になる可能性があります。このため、歌手や舞台俳優、教師など、普段発声をする機会が多い人は喉頭で炎症が起きないようにこまめにのどをケアする必要があります。
急性喉頭炎の治療は薬物療法が用いられるのが一般的ですが、使用される薬は炎症がおきた原因によって異なります。どのような原因であっても、炎症をおさえる作用がある消炎剤や、咳を止める効果がある鎮咳薬が投与されますが、細菌感染が原因であれば抗菌薬が、ウイルス感染によるものであれば抗ウイルス薬が用いられます。患者さんの状態によっては、霧状にした薬剤を吸入器をつかって体内に取り込むネブライザー治療が選択されることもあります。
また、薬物療法だけでなく、患部に負担をかけないような生活をすることも急性喉頭炎の治療では重要です。治療期間中は、必要なとき以外で声を出さないようにしたり、喫煙を控えたり、部屋をできるだけ乾燥させないようにすると、長引くことなく喉頭の炎症がおさまるでしょう。
急性喉頭炎は、基本的にはウイルスや細菌感染をきっかけに発症することが多いですが、中にはタバコの吸いすぎなど別の原因で発症してしまう方もいます。放置すると慢性化してしまう恐れもあるので、該当する症状があれば早めに病院で治療を受けましょう。