「近視の人は老眼になりにくい」って、本当?

2017/11/21

渡辺 先生

記事監修医師

東京都内大学病院眼科勤務医

渡辺 先生

一般的に「近視の人は老眼になりにくい」とよく言われますが、果たして本当なのでしょうか。この記事では、近視と老眼の仕組み、本当に近視の人は老眼になりにくいのか、及び、近視の人の老眼対策を解説、紹介します。

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近視になると、どんな見え方になる?

眼の構造は、カメラによく似ています。眼の前方にある角膜及び水晶体は、カメラのレンズ部分に該当し、眼の後方にある網膜に焦点を合わせることにより、ものが見える仕組みになっています。また、水晶体のまわりには小さな筋肉がついていますが、普段この筋肉の働きにより水晶体の厚みを変え、焦点を調節しています。これを調節力と呼んでいます。

調節力を働かせなくても焦点が網膜に合っている眼のことを正視と呼びますが、調節力が働いていない状態で、焦点が網膜よりも前方に合っている眼の状態を近視と呼びます。そのため近視の人は、遠くのものを見るとき、像がぼやけてはっきりとは見えません。しかし、近くのもの見るときには焦点が網膜に近付くのではっきりと見ることができるのです。

老眼になると、どんな見え方になる?

眼の組織の多くは、光を屈折させるレンズの働きを担っています。そのなかでも特に角膜と水晶体は、屈折力が大きい組織です。水晶体の周りにある筋肉は、状況に応じて水晶体の屈折力を変化させ、調節する役割を果たしています。近くのものを見る際には、屈折力が大きくなるよう筋肉が働いて水晶体の厚みが増します。この調節は自動で行われ、年齢が若い人ほど調節力が大きいのが特徴です。

しかしこの調節力は加齢と共に弱くなっていき、それに伴い近くにピントが合いにくくなってしまいます。40代くらいから調節力は衰え、近くにピントが合いにくい、近くのものを見る作業をしていると眼が疲れる、などの症状が現れはじめます。これが「老眼」です。

近視の人は老眼になりにくいって本当?

よく「近視の人は老眼になりにくい」と言われますが、これは事実ではありません。近視の人は、もともと網膜よりも前方に焦点があっているために、近くのものが見えやすい状態です。そのため、老眼の症状が出始めても自覚しにくいのです。しかし、普段遠くを見る際に使用するメガネをかけて近くを見るとぼやける、といった症状が出現しはじめます。

ちなみに遠視の人は遠方に焦点が合っているため、近視の人よりも早く老眼を自覚することが多いようです。

近視の人が老眼対策をするときのポイントは?

近くが見えにくいのを我慢して生活してしまうと、疲れ目や吐き気、頭痛など不快な症状が現れることがあります。また、細かい文字を読み違えたり、近くにピントが合うまで時間がかかったりすると、日常生活に支障をきたす場合もあります。手元が見えづらく感じたり、近くのものを見ていると疲れたりする症状が現れたら、早めに対策をしましょう。

メガネやコンタクトを使用している人は、少し度数をゆるめることによって近くが見えやすくなることがあります。また、遠いところを見る用のメガネと近いところを見る用のメガネを使い分けるのもひとつの方法です。また最近では、メガネ、コンタクト共に遠近両用のものがあります。ライフスタイルと合わせて一番良い対策を選ぶとよいでしょう。

おわりに:見えづらさを感じたら早めの対策を

見えづらさを我慢してしまうと、眼痛や頭痛、肩コリ、吐き気といった症状を引き起こしてしまうことがあります。見えづらさを感じたら、早めに対策を行うことが大切です。

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