記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/11/28 記事改定日: 2018/2/21
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
赤ちゃんへ授乳中の女性にとって、インフルエンザのワクチンを接種してもいいか、母乳をあげてもいいか、インフルエンザの薬を飲んでもいいかということは、とても気になるのではないでしょうか。
この記事では、インフルエンザと授乳の関係性について詳しく解説していきます。不安解消につながる情報ばかりなので、赤ちゃんのためにもきちんと理解しておきましょう。
インフルエンザウイルスの感染経路は飛沫感染であり、咳やくしゃみで飛び散ったものを吸い込むことで感染します。インフルエンザウイルスは気道の粘膜で増殖するという特徴があり、血液中に大量に侵入してくることはないといわれています。母乳は血液からつくられるため、母乳を介して赤ちゃんにインフルエンザが感染することはないと考えられています。
もちろん、赤ちゃんのお世話をするときは近いところにいることになるので、母親の飛沫から感染する可能性はあります。ただし、これはミルクであっても同じです。
授乳するときは、石鹸で念入りに手を洗うようにしましょう。赤ちゃんの顔に向かって咳やくしゃみをしないように心がけて、飛沫を飛ばさないようにマスクをつけることをおすすめします。ただし、マスクの着用でウイルス感染を完全に防げるわけではありません。
また、他の家族がインフルエンザに感染している場合は、その人を赤ちゃんに近づけないようにしましょう。
市販のミルクに比べると、母乳のほうが栄養が豊富ですし、母乳を飲むことで赤ちゃんは受動免疫を獲得できます。インフルエンザの症状が出たときには、すでに赤ちゃんに感染している可能性があります。例えインフルエンザが赤ちゃんに感染したとしても、免疫によって症状が軽くなる可能性が高いといわれています。
日本で使用されている抗インフルエンザ薬には、タミフル®、イナビル®、リレンザ®、ラピアクタ®です。
この中のタミフル®、イナビル®、リレンザ®については授乳中に使用しても問題ないとされています。これはイナビル®、リレンザ®は吸入薬のため体内への吸収量が少なく、タミフル®も内服であれば赤ちゃんの影響しない程度の量しか母乳ヘは移行しないといわれているからです。
このように、授乳中にインフルエンザに感染した場合でも、治療は受けられますし授乳を続けてもかまわないので、そこまで不安に思うことはないでしょう。しかし、やはり赤ちゃんに感染させないためには、お母さんがインフルエンザにならないよう予防することが一番です。
授乳中の女性が、インフルエンザワクチンを接種しても問題ありません。
インフルエンザワクチンは、病原性をなくしたウイルスの成分を用いた「不活化ワクチン」と呼ばれるタイプのワクチンです。病原性を弱めただけの生ワクチンとは異なり、接種してもウイルスが体内で増える心配はありません。
もし授乳中の女性がインフルエンザに感染した場合、身近にいる赤ちゃんへの感染が懸念されます。赤ちゃんがインフルエンザに感染すると、発熱や咳以外にも、母乳の飲みが悪かったり呼吸が苦しそうだったりと、さまざまな症状に見舞われることもあります。
また、生まれてから1歳くらいまでの乳児は、インフルエンザの予防接種をしても、大人のようにしっかりと抗体ができるわけではありません。
そのため、お母さんがインフルエンザワクチンを接種して予防したり、重症化を防いだりすることが重要です。
上記で説明したように、インフルエンザワクチンが母乳を通じて赤ちゃんに影響を与えることはほとんどないといわれています。これは、ワクチンの成分が直接母乳には現れることはないためです。妊娠中に接種した場合も同様です。よって、授乳・妊娠中であっても、ワクチンの接種をして問題ありません。ただ、接種する際には医師に授乳中であることをあらかじめ伝えるようにしましょう。
なお、お母さん自身がワクチンを接種しても、人混みの中でウイルスをもらったり、お母さんの手についたウイルスが原因で赤ちゃんにインフルエンザが感染してしまうことがあります。
そうならないためにも、うがいや手洗いといった衛生管理を徹底するようにしましょう。
インフルエンザワクチンは、授乳中の女性でも接種可能なタイプのワクチンです。ご自身の健康のためにも、そして赤ちゃんのインフルエンザ発症を防ぐためにも、授乳中のお母さんもワクチン接種を検討してください。
また、母乳を介して赤ちゃんにインフルエンザがうつることはありません。赤ちゃんの免疫のためにも、母乳は続けて飲ませてあげましょう。